本州南方や親潮域・混合水域及び日本海北部を中心に昇温が進み、道東海域の高水温状態は8月も続いた。
・大蛇行は潮岬沖に停滞して(図1-A)、30°N付近まで南下した。
・黒潮流軸は四国沖では7月に引き続き離岸し(図1-B)、大王埼沖で屈曲するとともに遠州灘(図1-①)に接岸した。
・伊豆諸島北部では流路がやや南下し(図1-C)、三宅島から八丈島付近を通過した。
・黒潮流軸の海面水温は、九州~四国沖で30℃に昇温し、潮岬沖~遠州灘沖~伊豆諸島北部は29℃、房総半島沖は28℃に昇温した。
・四国沖~潮岬沖の海面水温は、黒潮の離岸や冷水渦Aの影響で近年(2011~2020年)並~弱い高めにとどまった。
・熊野灘~遠州灘沖(図1-①)の海面水温は、黒潮流軸の屈曲や接岸により近年より1℃前後高めであった。
・沖縄東沖や小笠原~南鳥島付近(図1-②)の海面水温は、日射量が多く、風も弱く、気温も平年より高かった影響で、近年より1℃前後高めの状態が続いた。
・関東南沖~伊豆諸島南沖(図1-③)の海面水温は、8月中旬の台風8号や黒潮流軸の南下(図1-C)の影響で、近年より高めの海域は縮小し、やや低めの海域もみられた。
・黒潮域や沖縄東沖や小笠原~南鳥島付近(図1-②)の海面水温は広範囲で前年より1~2℃高めであった。
・伊豆諸島付近や同諸島南沖(図1-③)の海面水温は、大蛇行の西偏や台風8号通過の影響で1℃未満の高めにとどまった。
・犬吠埼以北の黒潮続流の流軸は7月に引き続き離岸して、北上する峰の部分が消滅し、東進する流路を取った。
・この北上する峰の消滅と共に、蛇行部(図1-D)は拡大したが、沖合の北上する峰(図1-E)は7月とほぼ同じ位置に停滞した。
・黒潮続流の流軸の海面水温は広範囲で28℃に昇温し、近年よりやや高めであったが、常磐~三陸南部沖(図1-④)は台風8号の影響で一時的に降温し、近年より1℃前後低めの海域が広がった。
・道東沖(図1-⑥)の海面水温は、黒潮続流の沖合の峰(図1-E)からの暖水波及が継続し、近年より2~4℃高めの状態が続いた。
・三陸北部では、まだ明確ではないが、津軽暖流系水の暖水渦が発達し始めた。
・親潮の面積は平年(1993~2017年)よりかなり小さめの状態が続いているが、三陸~襟裳岬沖(図1-⑤)では下層の親潮系冷水や台風8号の影響で海面水温が近年よりやや低めの海域がみられた。
・親潮第1分枝は根室半島付近に停滞した。第2分枝は41°30′N・149°30′E付近に後退した。
・常磐沖の海面水温は。黒潮続流の離岸や台風8号の影響で、前年より1~2℃低めであった。
・三陸~道東沖(図1-⑥)の海面水温は、台風通過により著しく降温した前年と比べて大幅に高く、4~6℃高めであった。
・襟裳岬沖~三陸沿岸の海面水温は、下層の親潮系冷水等の影響で前年より1℃前後低かった。
・海面水温は、日射量が多く、風が弱かった影響もあり、黒潮流軸周辺を中心に30℃以上に昇温し、ほぼ全域で近年より1~2℃高めであった(図1-⑧)。
・対馬暖流の勢力は上~中旬は平年より強くなったが、下旬にはおおむね平年並に戻った。
・北陸沖(図1-⑪)や朝鮮半島付近(図1-⑩)の海面水温は、上旬は気温が平年より高めで日射量も多かったが、中~下旬は中部や南部を中心に前線の停滞や低気圧等の影響で日射量が少なく、近年よりやや低めであった。
・対馬暖流は7月に引き続き山陰では著しく離岸し、北陸でも離岸した。
・海面水温は、7月までは前年に比べてほぼ全域で低めであったが、本年は前年に比べて台風の影響が小さく、台風の影響が大きかった前年に比べて沿岸域(図1-⑪)を中心1~2℃に高めに転じた。
・JAFIC EYE第269・270号で示したように、 道東海域(図2-①)の海面水温は7月中旬に近年最高を記録した後も近年より高く(図2)、いわゆる海洋熱波が続いた。
・しかし、道東海域の近年偏差は徐々に縮小しており、その原因として、図2に示すように8~9月にかけて、道東海域の暖水が道東東沖合海域(図2-②)に東進した一方、道東沿岸に親潮系水が差し込み海面水温が近年より低めの海域が現れたたことが考えられる。一方、道東東沖合海域の近年偏差は8月以降拡大した(図3)。
・9月上旬の下層水温観測では、道東海域の表層は親潮由来と考えられる低塩分水の割合が増えており、50m以深には8℃以下、塩分33.6以下の低温・低塩分水もみられた。
・下北半島東沖の観測でも襟裳岬沖を南下する親潮系水と考えられる低温・低塩分水が観測された。
・今後、台風の通過等による大規模な擾乱が起これば道東沿岸~襟裳岬沖~三陸北部沿岸では海面水温の低下が進み、漁況にも大きく影響すると思われる。
(海洋事業部)