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2022年08月30日
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vol.1116 記事一覧

令和4年7月の海況について

三陸沖~道東沿岸の高水温は7月も続いた。特に道東では7月中旬としては近年最高の水温を記録した。

黒潮域

・大蛇行部は潮岬沖に停滞して(図1-A)、最南端は29°N付近に達した。

・黒潮流軸は、四国沖(図1-B)では6月に引き続き離岸し、大王埼沖で屈曲が発達するとともに熊野灘~遠州灘(図1-①)に接岸し、三宅島付近を通過した。

・黒潮流軸の海面水温は、奄美大島付近で30℃に達し、九州南東沖は29℃、九州東沖~四国沖~潮岬沖は28℃、伊豆諸島~房総半島南沖は27℃に昇温した。

・室戸岬~潮岬沖の海面水温は、冷水渦Aの影響で近年よりやや低めであったが、九州東沖~土佐湾沖は暖水波及の影響でやや高めであった。

・熊野灘~遠州灘(図1-①)の海面水温は、黒潮流軸の接岸により近年より1~2℃高めであった。

・沖縄東沖や小笠原~南鳥島付近(図1-②)の中~下旬の海面水温は、日射量が多く、風も弱く気温が高かった影響で近年より高い海域が拡大した。

・伊豆諸島南沖(図1-③)の海面水温は、中旬を中心に前線の停滞や低気圧の影響で昇温が停滞し、近年よりやや低めであった。

親潮域・混合水域

・犬吠埼以北の黒潮続流の流路は、6月下旬に西進してきた冷水渦と黒潮続流の流軸が結合し、離岸(図1-④)が進んだ。

・黒潮続流の沿岸側の峰(図1-C)が東進すると共に蛇行(図1-D)は縮小したが、沖合の峰(図1-E)は引き続き40°N付近まで北上した。

・房総半島沿岸の海面水温は、黒潮続流が離岸した影響もあり近年より1℃前後低めであった。一方、鹿島灘沿岸の海面水温は。黒潮続流から暖水が波及し、近年より1℃前後高めであった。

・三陸沖から道東沿岸~沖合(図1-⑥)の海面水温は、黒潮続流の沿岸側の峰と沖合の峰それぞれから暖水が波及したため、広範囲で2~4℃高めの状態が続いた。

・親潮の面積は4月以降縮小が続き、平年(1993~2017年)よりかなり小さくなった。第一分枝は根室半島付近に後退して不明瞭になり、第二分枝(図1-⑦)は41°N・149°E付近に後退した。しかし、三陸~常磐沿岸(図1-⑤)には海面水温が近年よりやや低めの海域が残った。

親潮域・混合水域の前年差

・三陸沖~道東(図1-⑥)海域の海面水温は、前年に比して広範囲で高めで、特に道東付近では3~4℃高めであった(図1-3)。

・三陸北部に暖水渦が停滞していた前年と比べ、三陸沿岸(図1-⑤)は海面水温が前年より1~2℃低かったが、6月に比べ低めの状態は緩和された。

・常磐沿岸~沖合(図1-④)の海面水温は、黒潮続流の離岸の影響で前年より1~2℃低かった。

東シナ海

・沖縄本島~奄美大島付近の海面水温は、台風通過や前線の停滞の影響で近年よりやや低めであった。一方、東シナ海南部や黄海の海面水温は平年より日射が多く、近年および前年より1~2℃高めであった(図1-⑧)。

日本海

・対馬暖流の勢力は、上~中旬は平年(1993~2017年)より強かったが、下旬は平年並みになった。

・対馬暖流は、前月に引き続き山陰では著しく離岸し、北陸でも離岸した。

・日本海の海面水温は、上旬を中心に気温が高めで日射量が多かった影響で、広範囲で近年より高めになった。中~下旬は前線や低気圧等の影響もあったが、北部(図1-⑨)には近年より1~2℃高めの海域が広がった。

・しかし、近年最高の海面水温を記録した前年に比べ、日本海の海面水温は山陰~北陸の沿岸を除きほぼ全域で低めで(図1-3)、特に朝鮮半島北部~ロシア南部(図1-⑨)にかけては2℃以上低めであった。

道東の高水温について

・JAFIC-EYE第269号で示したように、7月中旬の道東海域(図2-①)の海面水温は7月中旬としては近年最高を記録し(図3)、いわゆる海洋熱波といえる状態であった。

・前年も同海域は7月下旬に高水温を記録したが、8月上旬~中旬の低気圧通過により降温して8月中旬としては近年最低を記録した(図3)。

・常磐~三陸沖及び道東沿岸の海面水温は、前線の停滞や中旬の台風8号の通過により前旬より降温したが、沖合では昇温もみられた(図2a)。道東の海面水温は、8月上~中旬にも近年より約1.5℃高めで推移し(図3)、広範囲で4~6℃高め(図2b)であった。

・今年の道東海域の海洋熱波については、JAFIC-EYE第269号で示したように、気象の影響による海面の加熱だけでなく、黒潮続流域から波及した下層に達する黒潮系暖水の影響もあるため、台風が通過しても前年の様な急激な降温はないと思われる。

(海洋事業部)

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