・北日本では6月中旬以降気温が平年(1991~2020年)より高い状態が続いた。7月の三陸~道東の海面水温も、三陸沿岸に親潮系冷水の影響が残ったが、広範囲で近年(2011~2020年)より2~5℃高かった。
・道東海域(図1-①)の海面水温の近年偏差(図2)は6月中~下旬に急上昇し、7月中旬に+2.9℃となり近年最高を記録した。
・道東海域では、前年の7月下旬も海面水温の近年偏差が+2.5℃とかなり高かった。水温の鉛直分布(データは気象庁の「NEAR-GOOS地域リアルタイムデータベースのTESAC報」を利用)によると、表面のみが高温であった(図3)。そのため、8月上旬に低気圧による擾乱等により降温が進み、8月中旬の近年海面水温偏差は-2.8℃と近年最低を記録した(図2)。
・一方、本年の7月中旬の水温の鉛直分布(図4)によると、42°N以北に黒潮由来と考えられる暖水塊が分布しており、その中心部では100m深でも水温が10℃以上、海面付近は20℃以上で、塩分も34.4以上であった。また、41°N以南にも同様な暖水塊が分布していた。
・42°N以北の暖水塊は規模がそれほど大きくないため、黒潮続流からの継続的な暖水波及がない限り寿命が数カ月以上続くことはないと思われる。しかし、前年に比べて下層まで高水温であることから、今後低気圧等による擾乱があったとしても、前年のような急激な降温はないと考えられる。
・道東海域の高水温状態は、現在行われている道東のマイワシ漁業に影響を与えていると思われるが、毎年水温が最高となる8月下旬~9月上旬に向けて今後も昇温は続くうえ、今年は容易に降温しにくい海洋構造である。そのため、マイワシ漁業だけでなく、これから始まるサンマ等の漁業にも影響する可能性が大きい。
(海洋事業部)