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vol.910

1〜3月のマイワシとさば類の漁況について

1.太平洋側のマイワシについて

〇石巻港: マイワシの水揚げ量は1〜3月はどの月も前年を上回った(前年比1月152%、2月121%、3月258%)(表1)。 〇銚子港: マイワシの水揚げは1、2月は前年を上回り(前年比1月172%、2月136%)、3月は下回った(前年比58%)(表2)(図1)。 1月の漁場は金華山沖〜塩屋崎沖〜犬吠埼沖だったが、2、3月は鹿島沖が中心であった。
 1〜3月に水揚げされたマイワシの体長は15〜18cm(2歳)と20cm前後(3歳)で体重は30〜50gと80〜100gであった(図2、3)。 〇三重県奈屋浦港および静岡県沼津港: 奈屋浦ではさば類が水揚げ主体になることが多いが、2020年2月はマイワシの水揚げ量が多かった。 1月は前年比1%程度だったが、2月は291%と大きく増加した(表3)。 沼津での1月から3月のマイワシ水揚げ量も前年を上回っており(1〜3月合計年比164%)、 前年に比べ静岡県および三重県沿岸にマイワシが接岸していると考えられる(表4)。

2.日本海側のマイワシについて

〇境港: 著しい不漁だった前年を大きく上回った(前年比1月181%、2月1,463%)(表5)。 特に3月は15,000トンを超え、過去3年間で最も多かった(図4)。
 1〜3月に水揚げされたマイワシは体長18〜20cm、体重70〜100g前後の3歳が主体で、4歳以上も見られた(図5、6)。 これらは産卵群であり、前年は漁場にほとんど出現しなかったものの、資源評価では豊度が高いと評価されていた年級が、 本年は資源評価どおりに出現していると考えられる。

3.太平洋側のさば類について

〇銚子港: 1月は前年を下回り(前年比43%)、2、3月は前年を上回った(前年比2月231%、3月163%)。 1月は水揚げがマイワシに偏ったため、さば類の水揚げは少なかったが、2、3月はさば類、マイワシともに水揚げがあった(表6)。 3月の鹿島沖操業のさば類の尾叉長モードは24cm前後(2歳)であった(図7)。 〇本州中部海区: 3月から本州中部海区でのまき網操業が始まり、さば類を4,000トン程度、マイワシを2,000トン程度水揚げした。
 中部海区で漁獲され銚子港に水揚げされたさば類の尾叉長モードは32cm前後(3歳)、 体重400g前後で、鹿島沖で漁獲されたものよりも大きかった(図8)。 1月には鹿島沖〜銚子沖で30cm前後のさば類が漁獲されており、3月には中部海区にこのサイズの群れが南下したと考えられる。 〇宮崎県北浦港: さば類の水揚げは、1月、2月は前年を大きく下回ったが(前年比1月17%、2月6%)、 3月4日ごろから活発となり、3月は前年比124%となり、過去3年で最高の水揚げ量となった(表7)(図9)。 水揚げ物のほとんどがマサバであり、尾叉長は32cmにモードがある3歳以上が主体で、体重のモードは450gだった(図10、11)。 今期はマイワシの来遊はほとんどなかった。

4.日本海側のさば類について

松浦港におけるさば類の水揚げは前年に比べて少なかった(1〜3月合計前年比23%)(表8)。 従来は秋から冬にかけて漁獲のピークが見られるが、前年〜本年にかけては極めて不漁であった(図12)。 例年の水揚げの主体となる尾叉長30cm前後(2歳)の水揚げが少なく、27cm前後(1歳魚)が水揚げの主体であった。

5.まとめ

 石巻港における1〜3月のマイワシ水揚げ量は前年を上回った。 この理由として、三陸沖の3月末の表面水温が7〜8℃で前年(5〜6℃)よりも高く、 このため、常磐海域まで南下せずに三陸海域で越冬した群が多かったことが考えられる。
 銚子港では前年に比べ、3月のマイワシ水揚げ量が少なかった。 これは、3月のさば類の水揚げ量が前年に比べて多かったことが影響したと考えられる。 4月はさば類の水揚げ量が減少し、マイワシは3月並みの水揚げ量で推移すると考えられる。
 漁況経過から判断すると、前年と同様、マイワシ太平洋系群では熊野灘以東、 マサバ太平洋系群では伊豆諸島海域から日向灘まで産卵場が広がっていると推察される。 特に宮崎県北浦港では年々3月のさば類の水揚げ量が増えており、こうした状況を裏付けている。 2019年の漁況の推移からも北浦港では4月中頃までさば類の水揚げが継続すると予想される。
 マイワシ対馬暖流系群では、境港の水揚げ状況からも明らかなように、今期は隠岐海峡を中心に好漁であった。 対馬暖流側では産卵場が年によって変化しており、冬〜春季の漁況予測が難しい。 一方で、資源水準は高く、どのような環境要因によって好漁がもたらされるか、今後検討する必要がある。
 今漁期に境港に水揚げされたマイワシは量が多いことに加えて、価格も高かった。 この背景として、同時期の銚子港水揚げのマイワシと比較して境港水揚げのものは魚体が大きく、 同じ体長でも体重が重く、首都圏を含めて生鮮流通が多かったことが考えられる(図13)。

   (水産情報部)
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