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vol.999

7月のマイワシ・さば類・マアジの漁況について

1. 太平洋側のマイワシについて

〇道東まき網: 7月上中旬は1日3000〜4000トンの水揚げがあり、1網あたり漁獲量は164.4トンであった。7月下旬は水温上昇の影響を受けて、操業隻数と水揚量が減少し、1日1000トン未満の水揚げが続いた。漁場は釧路〜花咲沖に形成され、下旬には十勝沖にも形成された。漁獲物は体長16〜17cm主体で、18〜20cm以上の混じりは少なかった。釧路港への水揚量は6月を上回り、前年を下回った(表1)。価格は6月を下回り、前年並であった。魚粉向けの出荷が多かった。

〇道東沖棒受網: 道東沖棒受網による花咲港への水揚量は6月及び前年を上回った。7月上中旬は1日200トン前後の水揚げがあったが、下旬は水温上昇の影響から1日100トン未満の水揚げであった。サイズは体長16.5〜17.5cm、体重60g主体(2〜3歳魚)であった(図1、2)。体重90〜100g以上の混じりは5〜10%であった。

〇銚子港: 7月の北部まき網の漁場は八戸沖〜金華山沖と犬吠埼沖に形成された。八戸沖〜金華山沖ではマイワシが漁獲され、犬吠埼沖ではマイワシの他にさば類、ウルメイワシ、マアジ、ぶり類が漁獲された。1網当たり漁獲量は45.3トンであった。銚子港の7月の水揚量は6月を下回ったが、前年を上回った(表3)。7月下旬にかけて銚子港ではマアジの水揚量が増加した。サイズは体長16.5〜17.5cmモード(2歳)で体重は60〜70g主体であった(図3、4)。日によって体重80g以上が20〜40%混じった。

〇石巻港: 7月の水揚量は6月及び前年を下回った(表4)。6月同様にまき網による水揚げが主体であったが、定置網による水揚げもあった。北部まき網による石巻港への水揚物の体長は14cm(1歳)主体で16〜17cm(2歳)混じり(図5)、体重は35g主体で50〜65gも混じった(図6)。定置網による水揚物は体長13cm主体であった。

2. 日本海側のマイワシについて

〇境港: 7月の水揚量は6月を下回り、前年を上回った(表5)。体長17.5〜18.5cm(1歳)、体重70〜80g、体長10cm(0歳魚)、体重15g前後にそれぞれモードがあった(図7、8)。7月下旬から体長10cm前後の0歳魚が水揚げされ始めた。体長17.5〜18.5cmのサイズは鮮魚向けにも出荷され、体長10cmのサイズは加工原料や養殖餌向けに出荷されている。

3. 日本海および東シナ海側のマサバについて

〇松浦港: 7月の水揚量は6月及び前年を上回った(表6)。対馬海域主体の操業であった。遠洋旋網による長崎港水揚分の体長(尾叉長)は23cm前後(0〜1歳)、体重は180g前後が主体であった(図9、10)。

4. 日本海および東シナ海側のマアジについて

〇浜田港: 7月の水揚量は6月及び前年を下回った(表7)。漁場は浜田〜山口県沖で、中小型まき網による水揚げが主体であった。6月から引き続き、浜田〜山口県沖に漁場ができたことで浜田港の水揚量が多かった。体長は18cm前後(1歳魚)、体重は60g前後であった。鮮魚向けの出荷が多くなり、価格は6月を上回った。

〇松浦港: 遠洋まき網を主体として、7月の水揚量は5月及び前年を下回った(表8)。漁場は主に対馬海域主体となった。遠洋まき網による長崎港水揚分の体長は25〜27cm(2歳)主体、体重は220g主体であったが(図11、12)。長崎港水揚物は浜田港水揚物よりも大型であり、漁場が異なったと考えられる。

5. まとめ

 7月の太平洋側のマイワシは、道東まき網による水揚量が主体であった。漁場は釧路〜花咲沖まで東西に広がっており、7月上中旬は1日当たり3000〜4000トンの水揚量があった。7月下旬から水揚量が減少し1日当たり1000トン未満の水揚量となった。同様に花咲沖の道東棒受網漁では7月上中旬は花咲港へ1日当たり200トン前後の水揚量があり、比較的好調な漁が続いたが、7月下旬から1日当たり100トン未満となり、水揚量が減少した。7月下旬にマイワシの水揚量が減少した理由として、道東沖の高い海面水温が考えられる。平年(2011〜2020年)と比較すると4℃以上高く、この水温の影響により、マイワシの魚群が道東沖よりもさらに東に移動したことが考えられる。8月中旬に台風や低気圧が通過したことにより、海面水温が低下し再び花咲港へ1日当たり100トン前後水揚げされるようになった。道東まき網と棒受網による水揚物は体長17〜18cm前後(2歳)、体重60g前後の2歳魚が主体であった。北部まき網では八戸〜金華山沖と犬吠埼沖に漁場が形成された。北部まき網による1日1隻当たり漁獲量は6月を下回り、犬吠埼沖ではさば類やマアジが水揚げされるようになった。北部まき網によるマイワシの水揚物は体長17〜18cm前後(2歳)、体重60g前後の2歳魚が主体であった。日によって体重80〜90g以上が20〜40%混じっていた。
 日本海側のマイワシについては、隠岐海峡周辺で操業が続いた。マイワシの魚体組成は、体長17.5〜18.5cm(1歳)、体重70〜80g、体長10cm(0歳魚)、体重15g前後にそれぞれモードがあった。7月下旬から体長10cm(0歳)が水揚げされるようになった。前年に引き続き、隠岐海峡周辺が良好なふ化場になっていることが考えられる。大型魚は鮮魚向けに、小型魚は煮干しなどの加工原料や養殖餌向けに出荷された。
 東シナ海では対馬海域を中心にマサバが漁獲された。水揚量は6月及び前年を上回った。遠洋旋網による長崎港水揚分の体長(尾叉長)は23cm前後(0〜1歳)、体重は180g前後が主体であった。8月以降も0〜1歳魚主体の漁獲が続くと考えられる。2020年級群の資源量は2019年級群を上回ると予測されており、冬の1歳魚の水揚げに期待したい。
 日本海側のマアジは浜田〜山口県沖を中心に大型と中型まき網による漁獲があった。水揚量は6月及び前年を下回った。魚体は「カボ」銘柄(尾叉長15〜20cm前後)主体で鮮魚向けの出荷が主体であり、価格は6月を上回った。東シナ海では対馬海域主体に操業が行われ、マアジの水揚量は6月及び前年を下回った。遠洋まき網による長崎港水揚物の体長は25〜27cm(2歳)主体、体重は220g主体であった。
 山陰まき網では隠岐海海況周辺で操業する中型まき網によるマイワシの水揚げが続いている。今後も好漁であった前年並みの水揚量が期待される。東シナ海ではマアジ・マサバともに漁場は対馬海域主体となった。マアジ・マサバともに、7月の1隻当たり漁獲量は過去5年平均を上回ったが、操業隻数は少ない。マアジ対馬暖流系群の長期漁海況予報では前年並みと評価されているものの、これまでのところ漁獲の主体となる体長15〜25cm(1歳魚)の漁獲が少なく、8月以降も体長25〜27cm(2歳魚)主体の水揚げになると考えられる。

   (水産情報部)
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