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vol.989

6月の近海カツオ竿釣り漁場と生鮮カツオ・生鮮ビンナガの水揚状況について

1.近海竿釣り船の漁場

 6月の近海竿釣り船の主漁場は房総南東沖から常磐沖で、前年同月とほぼ同じ海域となった(図1の赤色楕円)。カツオ主体の操業は延266隻(前年184隻)で前年より東西に広い範囲で漁場形成がみられ、宮城県気仙沼沖まで北上した船もあった(図1,2b)。これは、黒潮続流の峰が前年より北寄りにあったためと思われる(図2)。ビンナガ主体の操業は延397隻(前年403隻)で、ほとんどが黒潮続流の南側での操業であった(図3b)。前年同期はビンナガが豊漁だったが、今期は前年同期ほどにはビンナガの漁獲が伸びなかった。このため、ビンナガ主体の漁とはなったものの、カツオ主体に操業する船もが前年よりやや多かった。まき網の漁場も竿釣りの漁場と近くに形成され、カツオ漁場全体が順調に北上しているとみられる。

2.水揚量と価格

 全国の6月の釣りによる生鮮カツオ水揚量は4,180トンで前月より増加し、2016年以降で最も多かった(図4a)。水揚港別では、前月は房州勝浦が最も多かったが、6月は気仙沼への水揚量が急増して最も多く2,089トン(前月36トン)、次いで房州勝浦(1,367トン、前月1,064トン)となった。前月より漁場が北上したため、気仙沼港への水揚量が増加したが、竿釣り用の餌を房総周辺で確保していたため、勝浦への水揚げも続いたとみられる。
 まき網による生鮮カツオ水揚量は6,321トンで、過去5年平均を大幅に上回った(図5)。主要水揚港は、前月は銚子(1,417トン)だったが、6月は気仙沼(3,788トン)となり、気仙沼でのまき網・竿釣りの生鮮カツオの水揚量が急増した。
 全国の6月の生鮮ビンナガ水揚量は4,322トンで前月とほぼ変わらず、前年同月(11,214トン)の50%以下で、直近5年と比較すると2019年に次ぐ低水準となった(図4b、ビンナガ水揚量は釣・延縄など複数の漁法による水揚量の集計値)。水揚量が多かったのは前月に引き続き気仙沼(6月2,824トン、前月2,130トン)で、房州勝浦では761トンで前月(1,001トン)より減少した。
 生鮮カツオの全国平均価格は168円/kgで前月より安く、直近6年で最安値となった。6月は前月に引き続き竿釣り・まき網ともに生鮮カツオの水揚量が増加したこと、それに伴い冷凍在庫も増加したこと、供給が需要を上回ったことで価格が前月を下回ったとみられる。

3.生鮮カツオ(釣り)の魚体組成

 6月に気仙沼に水揚げされたカツオの体長(尾叉長)のモードはおよそ45〜48cmで、79cm前後の「特大」も若干出現した(図6)。図6の赤枠は秋の気仙沼の「中」銘柄となる群れの6月におけるサイズを示している。前年は6月時点でこの群れがほとんど見えなかったが、今年は一昨年と同様に「中」になる群れが主体を占める一方、それよりも大型のものも出現している。

4.今後の見通し

 7月上旬時点でビンナガ漁はほぼ終り、カツオ狙いが主体となっている。今年は沿岸から沖合にかけてカツオが広く分布しているとの情報もあり、今後の東北沖の海況も、黒潮続流の峰が北寄りに位置するなど、カツオ来遊に好条件が続くとみられ、このまま好漁が続く見込みだ。一方、飲食店需要の回復にはまだ時間を要するとみられ、価格の回復には時間がかかりそうだ。

   (水産情報部)
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