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vol.987

令和3年6月の海況について

1. 6月の海況概要

〇黒潮域
・黒潮は、熊野灘南沖で蛇行して伊豆諸島西沖を北上する典型的大蛇行流路が6月も継続した。
・九州〜四国(図1-@)では5月に引き続き黒潮が接岸した。一方、大蛇行の最南下部の南下が進み、蛇行内側の冷水渦(図1-A)が5月より拡大した。
・潮岬以東では、蛇行の最南下緯度は30°N付近に達し、伊豆諸島西沖を北上後は御前崎〜石廊崎沖で屈曲し、石廊崎に接岸した。伊豆諸島北部海域では流軸が北偏して大島〜三宅島付近を通過し房総半島に接岸した。
・5月上旬に房総半島沖の黒潮続流の蛇行部から切離された冷水渦(図1-E)は、今期も西進して房総半島沖の黒潮流軸に近づいた。
・黒潮流軸の水温は5月より1〜2℃昇温し、南西諸島周辺は27〜28℃、九州〜四国沖は25〜26℃、関東・東海沖は24〜25℃、続流域は21〜22℃であった。
・四国〜熊野灘沖は蛇行内側の冷水渦(図1-A)の影響で近年(2011〜2020年の平均)より低めであるものの、その程度は前月より縮小した。遠州灘沖では引き続き暖水波及がみられ、近年よりやや高めであった。
・南西諸島東沖及び小笠原付近(図1-B)は台風5号通過の影響で近年より高めの海域が縮小した。

〇親潮域・混合水域
・黒潮続流の北上部(図1-C)は5月より沖合に移動し、39〜40°Nまで北上した後屈曲して南下した。この部分(図1-C)からは暖水が北東方向に波及した。この影響で、常磐北部〜三陸沖(図1-D)は続流に沿って近年より2 〜4℃高めであった。
・常磐沿岸には黒潮続流から暖水(図1-B)が張り出し接岸していた。
・三陸北部沖の暖水渦C(図1-C)は5月より北西に移動し、三陸北部に接岸した。この暖水渦の水温は16〜17℃でほぼ均一であり、この影響で三陸北部沿岸〜沖合(図1-E)は近年より2〜4℃高めであった。
・釧路南東沖の暖水渦D(図1-D)もやや北東に移動し、その水温は前年同時期より低い11℃前後であったが、今期も暖水渦の構造は維持され、上旬には三陸沖暖水渦C(図1-C)から、下旬には続流の屈曲部(図1-C)から、それぞれ暖水補給がみられた。
・親潮(図1-E)の沿岸分枝は、暖水塊C及びDの接岸の影響で不明瞭であった。沖合分枝南端は39〜40°N・146°〜146°30′E付近で5月より若干後退した。
・親潮面積は上旬には平年(1993〜2017年の平均)並みであったが、下旬は後退して平年より小さめになった。

〇東シナ海・日本海
・東シナ海は下旬には梅雨前線の影響により、近年より高めの海域は縮小した。
・日本海は海面水温の変化が大きい極前線が弱まり40°N以北へ後退した。おおむね18℃以上の極前線以南では、水温変化が小さくなった。
・対馬暖流(図1-G)は期間を通して大和堆沖まで北上する沖合よりの流路が続いたが、6月は佐渡沖(図1-H)で蛇行し、本州北部では接岸傾向になった。勢力は徐々に強まり下旬はかなり強めであった。
・日本海の海面水温は大陸側を中心に東朝鮮暖流域と北日本海で高めの海域が多かったが、山陰東部〜北陸の沿岸〜沖合ではやや低めであり、対馬暖流が離岸した影響がうかがわれた(図1-H)。

2. 黒潮流軸と房総半島沖の冷水渦

・2021年5月上〜中旬に黒潮続流域の145°30′E付近で発達した蛇行から切離された冷水渦A(図2-1A)は徐々に西進して、6月中旬(図2-2A)には144°30′E付近に達した。
・6月のカツオ竿釣り船の漁場は、冷水渦A周辺から150°E付近の黒潮続流南側に形成されており、この冷水渦Aが漁場の形成に影響している可能性が高い。
・7月上旬現在、冷水渦Aは142°30′E付近まで西進し、房総半島沖を北東進する黒潮流軸に接近している。
・2019年にもこのような冷水渦の切離が起こっており、この時は、潮続流域で切離された冷水渦が約3カ月後に房総半島沖で黒潮流軸へ取り込まれており、今回切離された冷水渦Aも7月下旬〜8月には房総半島沖で黒潮流軸に取り込まれ、続流北上部に変動を及ぼす可能性がある。
・例年7月下旬〜8月にはカツオ竿釣り漁場は続流の北側に移る。今年は、冷水渦Aが黒潮流軸に取り込まれると予想される時期と竿釣り漁場が移る時期が近いため、続流北上部の変動による漁場への影響がいっそう大きいものと考えられる。

   (海洋事業部)
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