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vol.981

令和3年5月のスルメイカ漁況について

1.生鮮スルメイカ(全国)の月別水揚量

 JAFIC主要港における生鮮スルメイカの年間水揚量は2000〜2014年には年間10万トン前後であったが、2015年は7万トン、2016年は3.7万トンと半減した。2017年は3万トン、2018年は2.4万トン、2019年2.6万トンであったが、2020年は2.9万トンとやや増加した。2010〜2014年の資源が多かった時代には10、11月が盛漁期で、1カ月当たりでも現在の年間水揚量に相当する2.5万〜3万トンが水揚げされた。しかし、2017〜2020年の資源が少ない時代では盛漁期は8〜11月で、水揚量が多い月でも、4〜5千トンしかなかった。
 今年も5月に入ると秋季発生系群の北上が本格化し、能登半島以北にも漁場が形成され始めた。
 2021年の1〜5月の累計水揚量は2.1千トンで、前年同期の3.9千トンから半減した。5月は480トンで、前年同期の2千トンから1/4に減少した。1〜5月累計水揚量・5月単月とも、今年が2010年以降で最低となった。

2.浜田の生鮮スルメイカの水揚げ状況

 浜田(山陰)のスルメイカの水揚量は、2013〜2015年には年間1千トン前後であった。うち、2月の盛漁期には年間水揚量の3〜5割が水揚げされた。2016年以降、盛漁期が3月にずれ込み、水揚量の減少とともに、盛漁期が年々不明瞭となった。今年3月は79トンと前年並みであったものの、好調だった2015年2月の481トンの1/6にまで減少した。なお、スルメイカの1〜5月の累計水揚量は175トンであったのに対し、ケンサキイカが313トンと2倍近くあり、底曳網漁業主体に好調であった。

3.金沢の生鮮スルメイカの水揚げ状況

 金沢のスルメイカの水揚量は、2010年以降、年間1.3〜6.0千トンで推移した。2020年は近年で最多の6千トンが水揚げされ、それまで最多であった2010年と2019年の4.4千トンを上回った。2020年はJAFIC調査市場の中で、八戸の5.6千トンを抜き、金沢が生鮮スルメイカ水揚量の首位となった。
 九州西方〜山陰沖でふ化したスルメイカの秋季発生系群は、対馬暖流に乗って成長しながら北上する。5〜6月頃になると、能登半島西岸に漁場が形成され、漁獲がまとまる。昨年は6月に、年間水揚量6.3千トンの半分を占める2.9千トンもの水揚量があった。昨年の5月は842トンであったが、今年の5月は404トンと半減した。5月の水揚量で最も少なかったのは2011年の282トン(年計1.7千トン)、2番目が2018年の369トン(年計1.6千トン)で、今年は2011年以降で3番目に少ない水揚量であった。例年6月に盛漁期を迎えるが(2010年・2020年)、盛漁期が5月の年(2013年・2014年)や6〜7月に遅れる年(2019年)もあった。

4.新潟の生鮮スルメイカの水揚げ状況

 新潟では、2010〜2014年には年間1.0〜2.7千トンの水揚量があったが、2015年は700トンと前年の1.5千トンから半減した。2016〜2020年には年間300〜400トンと、さらに水揚量は低調となった。
 新潟では概ね6月が盛漁期で、2010年は年間2.8千トンの水揚量のうち、6月に半分近い1.2千トンが水揚げされた。しかし2018年以降、水揚量のピークが6〜7月にずれ込む傾向がみられ、かつ年間水揚量も200〜400トンに低迷している。
 各地の水揚量の減少傾向の要因は、産卵時期の遅れ、北上(夏季)の遅れ、南下(秋季〜冬季)の遅れ、稚イカの生き残り、外国船による漁獲の影響等、複合的な要因によると思われる。

5.金沢の生鮮スルメイカの日別水揚箱数・隻数等の推移

 2019年は5月下旬〜6月中旬に1日当たり入港隻数が120〜150、1日当たり水揚発泡箱数が1万〜1.6万箱(50〜80トン)であった。6月下旬〜7月上旬には、50〜80隻、6千〜8千箱と半減したが、7月中旬に盛り返し、1日当たり入港隻数は80から100隻に増加し、1日当たり水揚発泡箱数も1.6万から1.8万箱に増加した。  2020年は5月上〜中旬は数十隻・数千箱に留まっていたが、5月末〜6月中旬に1日当たり入港隻数が130〜150隻に急増し、1日当たり水揚箱数も2万〜3.8万箱を記録した。6月上旬に水揚量のピークがみられ、旬を追う毎に隻数・箱数が減少した。  2021年は5月中旬の70隻前後から増減を繰り返し、6月初頭にようやく100隻を超えたが、6月半ばには50隻台まで減少した。1日当たり水揚箱数も6月上旬の6千〜7千箱が最高で、6月中旬には4千箱まで減少した。今年は水揚量の伸びに、昨年のような勢いがない。

6.好調だった富山湾のスルメイカ定置網漁

 富山湾(石川・富山両県)のスルメイカ定置漁業は、例年同様に1〜3月に好漁が続いた。今年の1〜5月の累計水揚量は2038トンで、前年並み(2004トン)・過去10年平均並み(2138トン)であった。他地区と異なり、特に水揚量の大きな減少もなかった。水揚量が多かったのは湾西部の氷見〜石川七尾であった。なお、JAFIC主要港(全国)の生鮮スルメイカの1〜5月の水揚量は2124トン(5月は507トン)と、同期間の富山湾全体の水揚量をやや上回る程度であった。
 年明けは釣り物の水揚量が少ないこともあり、豊洲市場等の消費地市場に入荷した北陸の定置物の入荷割合が昨年同様に高かった。

7.まとめ

 水産研究・教育機構が4月末に公表した日本海スルメイカの長期予報(5〜7月)では、「来遊量は前年並みで近年平均を上回る」とされた。4月の漁期前調査や新規加入量調査において、山陰〜能登半島沖の分布が多かったためである。しかし、来遊自体が遅れているためか、対馬暖流がはるか沖合を流れているためスルメイカが沿岸ではなく沖合を一気に北上したためかは不明であるが、沿岸の小型いか釣り漁船の漁模様は今のところ低調である。函館水産試験場が5月末に公表した、日本海スルメイカ北上期調査によると、津軽海峡〜秋田沖の日本海ではスルメイカの分布は低密度で、全調査点のCPUEは、昨年および5年平均を下回った。サイズも昨年および5年平均を下回ったとされる。先日、中型いか釣り漁船(船凍)が日本海のスルメイカ漁に出漁したため、今後の沖合の様子にも注視したい。

   (水産情報部)
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