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vol.979

5月の近海カツオ竿釣り漁場と生鮮カツオ・生鮮ビンナガの水揚状況について

1.近海竿釣り船の漁場

 5月の近海竿釣り船の主漁場は銚子から常磐沖で、竿釣り船の多くはビンナガ主体の漁となった(図1b)。上旬は紀伊半島沖でカツオ小~中を主体に漁獲したが、中旬以降に銚子沖の比較的沿岸寄り(142°E周辺)でビンナガ漁場が形成され始めた。下旬には沖合(145°E以東)の20℃等温線が常磐沖まで北上し、それに伴って沖寄り(147°E付近)までビンナガ漁場が形成された。前年(図1a)と比較するとビンナガ漁に集中せず、広い範囲でカツオ漁場も探索された。ビンナガ漁が昨年ほど好漁ではなかったためとみられる(図2b)。

2.水揚量と価格

 全国の5月の釣りによる生鮮カツオ水揚量は2,097トンで前月よりやや減少し、低水準が続いている(図2a)。最も水揚量が多かったのは房州勝浦(1,064トン)で、次いで鹿児島(766トン)となった(表1)。今年は初春から九州周辺海域でカツオの好漁が継続し、5月も四国沖や紀伊半島沖でカツオ漁場が形成された。これにより、5月の鹿児島県での生鮮カツオの水揚量が伸びた。気仙沼での水揚量はまだ少ないが、気仙沼における生鮮カツオの魚体組成によると、尾叉長49~50cmにモードがあり、「中」銘柄主体となった(図3)。水揚量の多かった勝浦における銘柄別水揚量は小・中主体で、秋の戻りガツオになるサイズが順調に来遊しつつある状況とみられる。
 全国の5月の生鮮ビンナガ水揚量は3,943トンで前年同月(13,680トン)の3分の1程度で、直近5年と比較すると2019年に次ぐ低水準となった(図2b、ビンナガ水揚量は釣・延縄など複数の漁法による水揚量の集計値)。気仙沼では5月にビンナガの水揚量が急増し2,130トン、房州勝浦では1,001トンとなった(表1)。
 生鮮カツオの全国平均価格は237円/kgで前月より安く、前年・直近5年平均価格を大幅に下回る状況が続いた。5月は銚子・勝浦主体にまき網による生鮮カツオの水揚量が急増し、供給が需要を上回ったことで竿釣り・まき網ともに価格が前月を下回ったとみられる(図4)。

3.今後の見通し

 竿釣り船は、生餌を入手する事情などから、勝浦へのビンナガの水揚げがしばらく続くとみられるものの、東北沖では黒潮系の暖水が例年より北に張り出していること、ビンナガ漁が昨年ほど好漁ではないことから、カツオ狙いの漁場が一気に北上し、気仙沼へのカツオの水揚量が増加する可能性もある。ビンナガ漁からカツオ漁に切り替わるタイミングは①どちらがより操業効率がよいか、②生餌がどこでどれだけ入手できるかに左右される。今後の漁場の北上状況や常磐~三陸海域におけるカタクチイワシやマイワシの漁況を注視していきたい。
 JAFICは5月11日(火)に気仙沼で「今年度のカツオ・ビンナガの漁海況の見通し」を題材とした意見交換会を開催し、今年の竿釣りビンナガ水揚量は、前年を大幅に下回り、近年5年間平均を下回る低水準になると予測した(詳細は次週に紹介予定)。現時点でビンナガ水揚量は伸び悩んでおり、夏漁でビンナガ水揚量が上向きとなるような材料も乏しい。一方で明るい材料として、伊豆諸島海域でカツオ「中」銘柄主体の漁が継続しており、今後および秋の東北沖の戻りガツオに期待したい。

   (水産情報部)
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