3月の近海カツオ竿釣り船の漁場は九州沖縄海域が主漁場となった(図1a赤丸)。前年同月は九州沖縄海域に主漁場が形成され(図1b)、例年の伊豆小笠原海域の漁場と異なったことが特徴的であったが、今年も前年と同様の海域が主漁場となった。伊豆小笠原海域でも操業はあったが、魚影は薄く、餌の喰いも悪かったとの情報も入っている。一方で九州沖縄海域では小型のカツオが主体となり、餌場が近かったことも重なって、好漁が続いた。平均漁獲量は3.8トン/隻・日で前月(4.9トン/隻・日)よりやや減少したが、漁場が港から比較的近かったこともあり延操業隻数は580で前月(81)より急増し、水揚量の増加につながった。
全国の水揚量は1990トンで前年(682トン)の約3倍となり、一昨年以前と同程度だった(図2)。数量としては前年の不漁をひきずらずに例年並みとなり、市場では昨年よりも今年のカツオの水揚げに期待が持たれている。ただし、水揚港別の水揚量は、鹿児島1525トン、勝浦434トンとなり(図3c)、全国のカツオ水揚量の77%が鹿児島港に集中した点が例年と異なる。2019年以前はこの時期は「伊豆小笠原ルート」で北上する群れを伊豆小笠原海域で漁獲したため、主要水揚港は勝浦だったが(例えば、2019年:鹿児島526トン、勝浦965トン:図3a)、前年同月は主漁場が今年と同じ九州沖縄海域であったため(図1b)、鹿児島が勝浦よりやや多くなっていた(鹿児島381トン、勝浦281トン:図3b)。今年も九州沖縄海域で好漁が続き、@新口(前日の漁獲物)で水揚げできる(価格が良い)、A餌場が近い(竿釣りの必須条件)、Bすぐに漁場に出られる(燃料費がかからない)といったメリットが重なり、漁場から遠い勝浦での水揚量が減少して鹿児島に集中したとみられる。
価格は鹿児島218円/kg(前年同月比43%)、勝浦で312円/kg(同44%)となり、全国平均は240円/kgで安い状況が続いた(図4)。飲食店需要の低迷が続いたことが要因とみられる。
各漁場で主体となった銘柄は、九州沖縄海域では小型、伊豆諸島海域では大型だった(図1a)。3月の勝浦の水揚げ銘柄別組成は特特大(6.4kg以上)が主体で、2018年と比較すると直近3年はより大型が水揚げされている(図5)。資源状況や海況の変化に伴い、カツオの回遊経路も従来とは異なってきているようにも見える。また、今年3月は低いながら「小」にもモードが見られ、前年よりは小型(秋の中型になると期待される)のカツオが水揚げされており、2018年と組成が似ている。秋の東北沖のカツオ予測に向けて今後注目して行きたい。
3月に好漁が続いた九州沖縄海域のカツオは「黒潮ルート」と呼ばれる比較的沿岸寄りの回遊経路を北上する群れとみられ、秋に東北沖に北上する群れとは異なると考えられている。このため、春先の初鰹の好漁ののち、秋の東北沖の戻り鰹が好漁になるとは限らない。今後の水揚げ動向を注視していく必要があるが、ひとまずは今が旬の「のぼり鰹」を楽しんではいかがだろうか。