〇黒潮域
・大蛇行は今期も継続した。九州〜四国沖(図1A)では著しく離岸し、伊豆諸島をまたぐ(図1B)非典型的大蛇行流路となった。
・黒潮流軸の水温は、南西諸島周辺は22〜23℃前後で前月より1℃弱昇温し、九州〜四国沖は20〜21℃、関東・関東東海沖は19〜20℃前後で停滞気味であった。
・黒潮流路は、屋久島南東沖の冷水渦が東進・変形し、九州〜四国沖では離岸(図1A)が顕著になった。潮岬以東では、最南下緯度は30〜31°Nに達し、蛇行北上部が東進して流軸が伊豆諸島をまたぐ大規模な非典型的大蛇行流路となった。
・四国〜紀伊半島南沖は流軸の離岸や内側域の冷水の影響により近年より低めであったが、遠州灘〜熊野灘には伊豆諸島北部から反流等で暖水が波及し近年より1〜2℃高めであった。
・沖縄東沖と南方沖(図1C)は風が弱く寒気も弱かったため近年より1〜2℃高めであった。
〇親潮域・混合水域
・黒潮続流は三陸南部沖の38〜39°Nまで著しく北上していた。2011〜2020年の黒潮流軸位置(図2)でも、最北上緯度は37〜38°N付近にとどまっており、3月は近年になく北偏しており、この状態は4月中旬(図3)現在も継続し、さらに三陸北部沖への暖水波及もみられる。
・三陸北部〜襟裳岬や三陸北部沖(図1G)は親潮系冷水が南下した影響で近年より2℃前後低めであった。一方、三陸南部以南はおおむね近年より高めであった。
・黒潮続流の海面水温は16〜18℃で、最北上緯度は三陸南部沖の38〜39°N付近で著しく北偏していた。このため、三陸南部沖では広範囲で近年より6〜7℃高め(図1D)であった。黒潮続流からは常磐鹿島沿岸にも暖水が波及し2℃前後高めであった。
・黒潮続流の沖側では、2月に蛇行南下部(図1E)から冷水渦が切り離されたが、3月上旬に再結合して蛇行が発達した。この影響で冷水の南下が進み、海面水温は近年より2℃前後低めとなった。
・釧路南東沖の暖水塊(図1F)は降温して約4℃(前年は8℃前後)で近年よりも低めだが、暖水塊の構造は保たれて、黒潮続流域からの暖水供給もみられた。
・親潮(図1G)は3月も発達を続け、面積は平年より大きくなり、沿岸分枝は39〜40°N・144°E、沖合分枝は暖水塊(図1F)に巻き込まれるように南下し、39〜40°N・146°E付近まで南下が進んだ。
〇東シナ海〜日本海・オホーツク海
・寒気や季節風が弱かった影響で、海面水温は日本海では南部を中心におおむね近年より1〜2℃前後高めで、特に大和堆北沖では4℃前後高めの海域もみられた。
・東シナ海では、寒気や季節風が弱かった影響で、おおむね近年より高めで、特に奄美群島〜沖縄諸島の西沖では2〜3℃高めであった。
・対馬暖流の勢力は上旬〜中旬は平年より強かったが、下旬にかけて平年並みになった。
・40°Nの極前線付近やその南側には、近年になく多数の暖水渦(図1I)や冷水渦(図1J)が並んだ。これらの渦は安定しており、月平均水温を見てもしっかりした渦構造を保っていた。
・東朝鮮暖流域では南部沿岸(図1H)は暖水北上、北部沿岸(図1I)では暖水渦により近年より1〜2℃高めだが、本州沿岸はおおむね1℃未満の弱い高めであった。このため、3月は対馬暖流のうち半島沿いを北上する勢力のほうが強めであったと考えられる。