トピックス

トピックス一覧
最近の水産の話題はこれ! 随時更新
vol.963

令和3年2月の海況について

1.  2月の海況概要

〇東シナ海〜黒潮域
・黒潮大蛇行は今期も継続し、南西諸島の黒潮流軸周辺や大蛇行の内側域を除いて、季節風が弱かった影響もあり、おおむね近年(2011〜2020年)の平均より海面水温は高めであった。
・南西諸島周辺は21〜22℃前後で前月より1℃弱昇温し、九州〜四国沖は20〜21℃、関東・東海沖は19〜20℃前後で1℃弱降温した。
・10月上旬に大蛇行最南下部より切離された冷水渦が上旬に屋久島南東沖(図1B)で黒潮流軸と再結合した。冷水渦の大蛇行との再結合は前年にも3回発生し、1975年から始まった過去最大規模の大蛇行でも起こったが、今回のように西進して屋久島南東で再結合したことは、今までになく極めて珍しい現象であった。
・黒潮流路は、冷水渦の再結合により生じた蛇行(図1B)、大蛇行部(図1A)共にほぼ同じ位置に停滞し、四国〜潮岬から離岸した。伊豆諸島付近では流軸の一部が伊豆海嶺の東に張り出し、遠州灘沖(図1E)で屈曲して房総半島に接岸した。
・四国〜紀伊半島南沖は流軸の離岸や内側域の冷水の影響で、近年より低めであったが、遠州灘〜熊野灘には流軸の屈曲部(図1E)から反流等で暖水が波及し近年より1〜2℃高めであった。
・南方や東シナ海海域(図1D)は季節風が弱かった等の影響があり近年より1〜2℃高めであった。

〇親潮域・混合水域
・黒潮続流以北は寒気や季節風等の気象や下層の冷水の影響で、海面水温は近年より低めの海域が多かった。
・黒潮続流は17〜18℃で、前月に引き続き北偏し(図1F)、常磐沿岸にも暖水が波及したため、常磐〜仙台湾の沿岸から沖合の海面水温は近年平均より大幅に高く、5〜6℃高い海域もみられた。一方、黒潮続流の南側(図1C)では蛇行部から冷水渦が切離され、1〜2℃低めの海域もみられた。
・三陸南部沖には黒潮続流から暖水が北上し(図1F)、上旬は釧路南東沖の暖水塊(図1G)に暖水を供給した。
・三陸沿岸は北から津軽暖流系水、南からは黒潮続流からの暖水の波及により、近年より1℃前後高めであった。
・釧路南東沖は暖水塊(図1G)のために近年より1〜2℃高めであった。しかし前年の釧路南東沖の暖水塊と比べると約5℃低めであった。
・親潮沿岸分枝は40〜41°N・143〜144°E付近、沖合分枝は41〜42°N・147〜148°E付近が南限。沿岸分枝は中〜下旬に発達し親潮の面積も拡大し、親潮の面積は気象庁の資料によると下旬には25年平均(1993年〜2017年)並みまで回復した。
・三陸沖(図1H)では親潮沖合分枝からの冷水が広がり、近年より2℃前後低い海域が広がった。

〇日本海・オホーツク海
・寒気や季節風の影響で上旬は中北部、中旬は中南部、下旬は北部を中心に降温が進み、中部や北部では前月より2℃前後降温したが、南部はおおむね1℃未満の降温であった。
・極前線は7〜8℃の等温線を中心として40°N前後に分布し、前月より発達して等温線は密になった。
・朝鮮半島沿岸、大和堆付近、能登半島北沖(図1J)では対馬暖流系暖水が波及し、近年平均より高めで、特に大和堆付近は4℃以上高めの海域もあった。
・島根沖、若狭湾北沖、津軽海峡西沖及び朝鮮半島北部沖(図1I )は冷水の南下や季節風の影響で近年平均より1〜2℃低めであった。
・オホーツク海の流氷は気象庁の資料によると中〜下旬は平年(1981年〜2010年)より年より少なかったが、下旬に入ると増加して3月上旬には離岸しているものの、面積は平年並みに戻った。

2. 黒潮流軸と冷水渦

・2020年10月上旬に黒潮大蛇行の南端より切り離された冷水渦は西進して2021年2月上旬には屋久島の南東沖で黒潮流軸に取り込まれ著しい蛇行(図2B)となった。
・屋久島南東沖の冷水渦は2月16日(図2-1B)には大蛇行部の冷水渦(図2-1A)に匹敵する規模となり、このように大規模な蛇行が2か所で生じている状態は、今までの黒潮大蛇行では例がない珍しい状態であった。
・屋久島南東沖の冷水渦(図2-1B〜図2-4B)は徐々に縮小したが、流軸は九州〜四国沖では依然として離岸している。遠州灘沖の大蛇行の冷水渦(図2-1A〜図2-4A)は徐々に拡大し、3月17日には八丈島の南を通り伊豆諸島の東を北上する、非常に規模の大きい非典型的大蛇行流路となっており、2017年秋から始まった大蛇行では最大の規模まで発達している。
・黒潮続流域は、期間を通して近年平均や平年より大幅に北偏し、仙台湾沖付近まで北上している。145°E付近では、2月上旬に蛇行部から冷水渦が切離されてほぼ同じ位置に一時停滞していた(図2-1C〜図2-3C)。過去の例から冷水渦は、今後は西進すると思われたが、3月17日には続流の蛇行が再発達して、冷水渦(図2-4C)は続流の流軸に引き込まれて南北に扁平な渦となった。
・2017年に始まった黒潮大蛇行は過去最大規模に成長するとともに、続流域では近年や平年より大幅に北偏し、続流域蛇行部から切離された冷水渦が続流の流軸に引き込まれる状態になっているなど、今月も過去に例のない状態になっている。

   (海洋事業部)
  • ◇トピックス 全文◇
  • このページのトップへ