〇東シナ海〜黒潮域
・平均海面水温は、上中旬は寒気や季節風の影響が大きく黒潮域〜南方では前月から2〜3℃降温し、東シナ海〜沖縄周辺や黒潮内側域では平年より1℃前後低めであったが、下旬には寒気が緩み、ほぼ全域で平年より高めに転じた。
・30°N以南の南方沖は、おおむね平年より高めであるが、前年に比べると2℃前後低い海域もみられた。
・沖縄周辺では22℃前後、九州〜四国沖は20〜21℃、関東・関東東海沖は20℃前後であった。黄海〜東シナ海北部(図1I)は5℃以上降温し、沿岸を中心に10℃以下が広がっていた。
・黒潮流路は九州〜四国沖では上旬は離岸していたが、中旬〜下旬は徐々に接岸した。一方、潮岬では引き続き離岸し、熊野灘南方沖の冷水渦(図1A)もおおむね遠州灘沖に停滞した。黒潮蛇行の最南下緯度は期間を通して30〜31°Nで、A型流路の大蛇行は継続したが、伊豆諸島付近の小蛇行(図1D)が下旬にかけて発達して、W字型の流路になった。
・令和2年10月上旬に大蛇行最南下部より切離された冷水渦は、西進を続けて屋久島南東沖(図1B)に達し、黒潮流軸に接する状態になった。
・屋久島南東沖冷水渦(図1B)の東側は南方沖(図1C)から暖水が北上し、前年より1℃弱高めであった。
〇親潮域・混合水域
・黒潮続流以北は寒気や季節風が強かった影響で降温が大きく、中旬は三陸〜道東沿岸に平年より1〜2℃低めの海域が広がったが、下旬は寒気が緩み平年より低めの海域は縮小した。
・図1F周辺の海域は降温が大きく、前月より5〜6℃降温しており、期間を通して平年より低めであった。前年と比べても4℃前後低めであった。
・黒潮続流は、房総半島にやや接岸しながら北東に流れ、38°N近くまで北上して前月より北偏した。この影響で常磐北部沖は期間を通して平年や前年と比べて高めの海域が広がっていた。
・三陸沖には黒潮続流から暖水が波及し(図1D)、釧路南東沖の暖水塊(図1E)に暖水を供給した。
・釧路南東沖の暖水塊(図1E)は前年より約2℃低めの8℃前後で、前月とほぼ同じ位置に停滞した。
・中下旬は親潮(図1F)が発達して、沿岸分枝は40〜41°N・143〜144°E付近まで南下した。沖合分枝は前月よりやや西編して、41〜42°N・147〜148°Eまで南下した。
・親潮沿岸分枝が発達して親潮面積は拡大したが、親潮面積は依然として平年より小さい状態が続いた。
・常磐北部〜三陸は親潮系冷水や下層の冷水の影響で前年より1〜2℃低めであった。
〇日本海・オホーツク海
・寒気や季節風が強かった影響で上中旬は降温が進み、中旬にはほぼ全域が平年より低めになったが、下旬には寒気が弱まり、一部海域を除き平年より高めに転じた。
・朝鮮半島北部周辺や、津軽海峡西沖〜中央部では降温が大きく、前月より4〜6℃降温して前年と比べても2℃以上低めであった。特に朝鮮半島北部沿岸(図1I)はほかの海域が平年より高めに転じた下旬でも平年より低めであり、前年と比べると8℃以上低めであった。一方、北海道以北は前年より1〜2℃高めであった。
・40°N前後には、約10℃の等温線を中心とする極前線が発達した。
・朝鮮半島沿岸・大和堆付近・能登半島北沖・積丹半島西沖(図1G)では対馬暖流系暖水が波及し、前年並〜高めであった。
・島根沖・若狭湾北沖(図1G)は冷水が南下し前年より1〜2℃低めであった。
・オホーツク海では前年より約10日早い1月31日に網走に流氷が接岸した。2月12日現在は、おおむね平年並みの流氷域面積になっている。
・2017年秋に始まり現在も続いている大蛇行では、2020年6月下旬に大蛇行南端から冷水渦の切り離しが起こり、7月下旬と8月下旬には冷水渦の切り離しと再結合が起こり、2020年6月以降冷水渦の切り離しを繰り返している。
・2020年10月上旬に黒潮大蛇行の南端より切り離された冷水渦B(図2-1B)は西進を続け、2021年1月上旬には屋久島の南東沖(図2-2B)の黒潮流軸のすぐ南に達した。
・冷水渦Bは1月中は屋久島南東沖のほぼ同じ位置に停滞し続けた(図2-2B〜2-4B)。
・2月9日には冷水渦Bは黒潮流軸に取り込まれ(図2-5B)、著しい蛇行となり、この蛇行は2月18日現在(図2-6)も続いており、大蛇行部に匹敵する規模の蛇行になっている。
・2020年以外でも1975年から約5年続いた大蛇行で「はるかぜ」と名付けられた冷水渦の切り離しと再結合が1977年5〜8月にも発生しているが、この時は再結合は大蛇行南端で起こっており、今回の様に、大蛇行南端で切りはなされた冷水渦が屋久島南東まで西進して、黒潮流軸と再結合して蛇行になる現象はこれまで観測されておらず、極めて稀な現象と考えられる。
・伊豆諸島付近では、1月上旬〜下旬にかけて蛇行が発達し、(図2-2A〜2-4A)にかけて蛇行Aが発達して、1月20日に蛇行は深いW字型になった。
・蛇行Aは2月9日には切り離されて冷水渦Aになり、伊豆諸島東沖に停滞している(図2-6A)。
・黒潮続流域でも、147°E付近に蛇行Cがみられ、1月下旬〜2月上旬(図2-4C〜2-5C)にかけて発達した。
・蛇行Cは2月12日には黒潮続流より切りはなされ、冷水渦C(図2-6C)となった。
・黒潮続流から切り離された冷水渦は、近年では2020年1月に147°E付近で切り離された後、西進して2020年4月中旬に伊豆諸島付近で黒潮流軸と結合した。冷水渦Cも同じ挙動をする場合、3〜4月に伊豆諸島〜房総半島沖の黒潮流軸と結合する事が考えられる。
・2021年1月の様に、ほぼ同時期に黒潮流軸の3か所で冷水渦の再結合と切り離しが起こる事は極めて稀な現象であり、最近始まったかつお竿釣り等にも影響すると考えられるため、今後の動向を注視していきたい。