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vol.956

令和2年12月の海況について

1.  12月の海況概要

〇東シナ海〜黒潮域
・黒潮は九州〜四国沖で引き続き離岸した。大蛇行内側の冷水渦(図1A)は11月に潮岬を超えたのち、12月も東進を続けた。黒潮の蛇行も大王埼南沖に東進し、最南下緯度は30〜31°N付近、遠州灘〜熊野灘沖でS字型に屈曲して接岸し、御蔵島〜八丈島付近の伊豆諸島南部を通るA型流路になった。
・10月上旬に大蛇行最南下部より切離された冷水渦は、徐々に南西に移動し四国のはるか南沖(図1B)まで移動した。
・平均海面水温は、黒潮域では11月に比べて、おおむね1〜2℃降温し、沖縄周辺では24℃前後、九州〜四国沖は23〜24℃、関東・関東東海沖は22〜23℃であった。黄海〜東シナ海北部(図1J)は降温が進み広範囲で15℃になった。
・九州〜四国沖は黒潮離岸の影響で前年より1℃弱低め、熊野灘沖は接岸の影響で1〜2℃高めであった。

〇親潮域・混合水域
・黒潮続流は、11月同様に房総半島にやや接岸しながら約37°N付近まで北上して蛇行する流路をとった。
・常磐〜三陸沿岸や三陸沖(図1D)は冷水南下や下層の冷水の影響で前年より2〜4℃低めであった。
・常磐北部沖は暖水(図1C)が黒潮続流から切り離され暖水渦を形成した。この暖水渦の北側は前年より2〜6℃高めであった。
・釧路南東沖の暖水塊(図1F)は前年より約2℃低い10℃前後で11月より離岸した。しかし道東沿岸側にも9℃前後の相対的に暖かい水が広がり、前年より1〜2℃高めで、親潮沿岸分枝は不明瞭であった。
・親潮沖合分枝は41〜42°N・149°E付近(図1G)が南限で、親潮の面積は12月も平年より狭い状態が続いた。
・常磐北部沖の暖水渦(図1C)から暖水(図1E)が張出し、釧路南東沖の暖水塊(図1F)に暖水を供給するような形になった。

〇日本海
・北部を中心に降温が進み、海面水温が10℃以下の海域が40°N付近まで南下し、極前線が形成された。
・隠岐諸島北沖や能登半島北沖(図1H)では15℃以下の相対的に低温な水が南下し、平均海面水温は前年より低めであった。
・中〜下旬は対馬暖流の勢力が平年より強く、朝鮮半島中部沖、大和堆付近、佐渡北西沖および積丹半島西沖(図1I)では対馬暖流系水が波及し、前年よりおおむね1〜2℃前後高めで、特に積丹半島沖は4℃前後高めであった。

2. 黒潮大蛇行の今後の推移

・冷水渦(図1A)は2021年1月以降も東進を続け、黒潮流路の一部も伊豆諸島南部以東まで東進して1月上旬にはW字型の蛇行(図2-1)になった。
・2017年秋に始まった黒潮大蛇行では、最近では2018年2月と5月にこのようなW字型の蛇行がみられた。
・2021年1月上旬(図2-1)、2018年2月中旬(図3-1)及び2018年5月中旬(図4-1)には、いずれも関東東海沖でW字型に蛇行し、流路の一部が伊豆諸島東を通り、遠州灘沖で屈曲部(図2A、図3B、図4C)が遠州灘〜熊野灘に接岸して暖水が波及している。
・しかし、W字型の蛇行がみられた1〜2旬後の2018年3月上旬(図3-2)と2018年6月上旬(図4-2)は異なった流路となった。
・2018年3月上旬(図3-2)は屈曲部が保存されたまま東進し(図3-2B)、伊豆諸島南部を通り、房総半島を離岸して蛇行する特徴的な流路をとった。
・2018年6月上旬(図4.-2)は屈曲部が解消し(図4-2C)、伊豆諸島南部を通り、房総半島を離岸して東に流去する流路をとった。
・2018年1月14日現在(図2-2)は、屈曲部(図2-2A)が保存されたまま東進して房総半島に接岸し、北東に流去する流路となっている。
・今後も屈曲部(図2-2A)が保存されたまま東進を続ければ、2018年6月上旬に近い流路になると予想される。しかし、2021年1月は2018年2月や5月より黒潮続流が北に位置しており房総半島以東の海況が異なるため、今後の流路の変動も異なる可能性がある。
・伊豆諸島付近から東の黒潮流路は、関東・東海海域のさば類のたもすくいや網漁業や棒受網漁業に影響するため、今後も動向を注意する必要がある。

   (海洋事業部)
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