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vol.937

サンマに関する水産関係者との意見交換会の概要

1. はじめに

 水産関係者とのサンマに関する意見交換会「最新の資源状態と漁況予報」(表1)を気仙沼市(8月6日)、大船渡市(8月7日)、女川町(8月24日)で開催しましたので、その概要をまとめて紹介します。

2. 本年のサンマ調査結果ならびに長期漁海況予報

 本年の表層トロールによるサンマ資源量調査は、コロナ禍の影響により東経175度までの海域に縮小せざるを得なかった。また、魚群分布密度も昨年に比べ著しく低かった。このことから、漁期を通じた来遊量は昨年を下回り、極めて低調に推移すると見られる。また、昨年より1歳魚の割合が低く、平均体重も昨年を下回る。魚群は親潮第2分枝に沿って南下し、道東沿岸の親潮第1分枝沿いでは漁場がほとんど形成されない。三陸海域への魚群の南下時期は例年より遅く、漁場形成は10月下旬となる。

3. 海況の特徴と今後のサンマの漁海況見通し

・海況の特徴:今年の道東海域は、暖水塊が分布して沿岸の親潮第1分枝が弱いため、昨年よりも水温が高い。道東沖暖水塊の東側を親潮第2分枝が南下し、東北海域〜道東海域の沖合は、昨年よりも水温が3〜4℃低い場所もある。色丹島から択捉島南沖への暖水波及は、昨年の方が強い。
・漁海況の見通し:大型船出漁直後(8月下旬)の漁場は、択捉島以北の海域に分散して形成される可能性もあるが漁獲は極めて少ない。このため北海道東方沖の公海へ操業海域を拡げる可能性がある。択捉島以北の海域に漁場ができても、その魚群は道東沖暖水塊の東側の親潮第2分枝に沿って南下する。魚体が痩せていることから、南下群の出現は昨年よりも遅くなる可能性がある。公海の魚群は、徐々に西に移動するが、道東沿岸まで来遊する魚群は少なく、親潮第2分枝に沿って南下する。親潮第2分枝の東側において冷水が南へ張り出した場合、魚群は親潮第2分枝まで来遊せずに南下する。このため、漁期を通じ漁場は沖合に広く分散して形成され、道東沿岸の親潮第1分枝沿いでは漁場がほとんど形成されない。

4. 参加者からの意見と回答など(主たる質疑応答)

Q:トロール調査結果はどれくらいの確率で当たるのか?
A:確率で答えるのは難しいが、調査が実施できた東経175度までの海域については、大きく外れていないと考える。ただし、調査ができなかった東の海域の資源状況はわからない。

Q:最近の外国船(台湾、韓国、中国)の状況は?
A:台湾船は新型コロナの影響で7月まで操業していなかった。現在は70隻程度操業しており、採算割れしているとの情報もある。韓国船は、例年通りロシア主張200海里内で操業している。中国船は6月初めからの出漁を確認した。それぞれの漁獲量に関しては十分な情報を得ていないが、昨年をかなり下回るようだ。

Q:北太平洋漁業委員会(NPFC)での今年のサンマTACは?
A:本年のTACは昨年7月に既に決まっていて、全体で55万トン、公海域で33万トンである。来年のTACについては、それを決める本年のNPFC本会合が、おそらく今年度中には開催されるのではないか。

Q:昨年出現した0歳魚はどこに行ってしまったのか? また、その原因は?
A:近年の傾向として西経海域の0歳の出現個体数は安定しているが、東側海域の0歳魚は減少している。0歳魚が出現しなかった理由として次の3つが考えられる。@本年の調査が実施できなかった西経海域にいる、A0〜1歳の間に漁獲されてしまった、B0〜1歳の間に自然死亡した。しかし、Aに関して、NPFCに提出された各国の漁獲サイズ資料によると、0歳魚に相当する小型個体を集中して獲ってしまったというデータはない。また、Bに関して、自然死亡率が高い稚魚漁期を過ぎている0歳から1歳になる間に急に自然死亡率が高まるとは考えにくい。

Q:西経海域のサンマも西にやってくるのか?
A:西経175度までの魚であればやってくるが、来遊確率は低くなる。

Q:8月中旬を過ぎて本意見交換会での予測状況やコメントに変更はあるか?
A:まず、当初は16〜17℃でサンマの群れがいるかもしれないと見ていたが、予想よりも暖かい18〜19℃台に形成されている。また、ロシア海域にいる可能性を指摘したが、実際には大型船がかなり北まで上がって探索したにもかかわらず発見に至らなかったようだ。

Q:本年はかなり厳しい予報だが、今後も続くのか?
A:近年、黒潮域と黒潮続流域でサンマの卵稚仔量が減っている。このため、来年すぐの回復は厳しいと考える。ただ、サンマは寿命が2年と短いことから、回復するきっかけがあれば短期間で増加に向かうと考える。

Q:来遊が遅れていると言うが1、2月に獲れる可能性は?
A:時期が来たからと言って必ず日本の近海に来遊するわけではない。沖合では冷たい水が南下し、それに沿ってサンマも日本から離れた海域で南下してしまうと考えられることから、難しいだろう。

   (酒井光夫)
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