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vol.936

サンマ、マイワシ、サバ類に関する水産関係者との意見交換会

  概要(釧路市) 

1. はじめに

 水産関係者とのサンマに関する意見交換会「最新の資源状態と漁況予報」(表1)を8月4日に釧路市で開催しましたので、その概要を紹介します。

2. マイワシ・マサバの資源動向全般

・マイワシ(太平洋系群):漁獲量・資源量・親魚量は増加傾向で、2018年生まれが極めて多い。8月以降も漁獲サイズは100g未満の2歳以下が主体で、道東〜三陸への来遊量は昨年並みかそれを上回る。
・マサバ(太平洋系群):資源量・親魚量は増加傾向にあるが、日本の漁獲量は頭打ち状態である。2018年生まれが極めて多く、今後の主体となる。今年も道東海域への来遊は少なく、三陸への来遊時期の遅れ、魚体の小型化・痩せがさらに進むと見られる(2018年生まれは2歳で160g前後)。

3. 北辰丸によるマイワシ・サバ類漁期前調査結果

 2020年6月に試験調査船北辰丸で実施したマイワシ・サバ類漁期前調査によれば、道東海域の表面水温は10〜16.6℃と昨年より高く、マイワシの来遊水準は2012年以降では低めであり、サイズは昨年と同様17cm台が主体であることがわかった。

4. 本年のサンマ調査結果ならびに長期漁海況予報

 本年の表層トロールによるサンマ資源量調査は、コロナ禍の影響により東経175度までの海域に縮小せざるを得なかった。また、魚群分布密度も昨年に比べ著しく低かった。このことから、漁期を通じた来遊量は昨年を下回り、極めて低調に推移すると見られる。また、昨年より1歳魚の割合が低く、平均体重も昨年を下回る。魚群は親潮第2分枝に沿って南下し、道東沿岸の親潮第1分枝沿いでは漁場がほとんど形成されない。三陸海域への魚群の南下時期は例年より遅く、漁場形成は10月下旬となる。

5. 海況の特徴と今後のサンマとマイワシの漁海況見通し

・海況の特徴:本年は道東沖に暖水塊が分布し、沿岸の親潮第1分枝は狭く弱い。道東沖暖水塊の東側を親潮第2分枝が南下し、色丹島から択捉島南沖への暖水波及は、昨年の方が強い。
・常磐〜道東海域のマイワシ:釧路沖暖水の影響で棒受網操業の開始が早く、6月下旬から道東沖で20cm以上のサイズが水揚げされたが、大羽の北上は遅れた。銚子沖、東北沖では4、5月頃に20cm 以上の魚群が来遊したが、今後は15〜18cmが漁獲の主体となる。
・サンマ:魚体は痩せており、魚群は道東沖に形成されている暖水塊の東側の親潮第2分枝に沿って遅れて南下する。公海で広く分散した魚群は、徐々に西に移動するが、道東沿岸の親潮第1分枝沿いに来遊する魚群は少ない。より東側で南への冷水が張り出すと、魚群はより沖合で南下し、道東沿岸の親潮第1分枝沿いでは漁場がほとんど形成されない。

6. 参加者からの意見と回答など(主たる質疑応答)

Q:2019年にマイワシ0歳魚が少なかった理由は?
A: はっきりとした原因は不明であるが、2019年には0歳魚はあまり漁獲対象とならなかった。しかしながら、本年の道東海域では2019年生まれの1歳魚が漁獲されており、2019年生まれ群が少ないということではない。

Q:オホーツクでもマイワシが揚がるが太平洋と同じ資源なのか?
A:太平洋の群と繋がっている同じ資源と考える。

Q:資源動向の報告では今期はマイワシが昨年かそれ以上とのことだが、釧路水試の資源調査船の結果ではマイワシが捕れていない。この違いはどうなのか?
A:調査結果は 6月時点のもので、その時点では漁業自体もマイワシが薄くて苦戦していた。全体の資源があることと実際の来遊の仕方とは違う。

Q: 昨年の調査ではサンマ0歳魚がいたにもかかわらず、今年の1歳が少ない。理由の1つとして、外国船が獲ってしまったという可能性はないのか?
A:北太平洋漁業委員会(NPFC)で外国船を含めて漁獲サイズ情報で集めている。その結果では、0歳魚を中心に外国船が獲っているという情報は今のところ無い。

Q:今後も親潮の張り出しがかなり遅くなるのであれば今までの漁期を見直す必要もあろう。イワシ漁期を遅らせたりするなどの研究も必要なのではないか。
A:道東漁場のマイワシ漁期が10月で終わりになっているのはもったいないと思う。個人的には11月も道東で操業できればマイワシももう少し獲れるのではと考えている。ここ数年、親潮の張り出しが弱いこともあり、魚群の南下が遅れている。ただ、漁期をどうしたらよいかについては、研究サイドのみでは申し上げられない。

Q:マイワシとかレジームシフトで魚種交替をすると言われるが、サンマが減ってマイワシが増えるなか、今後はどんな環境によって魚種のレジームシフトが起こりうるか?
A:以前に「40年前の環境が繰り返され、2020年頃にレジームシフトが起きてマイワシが増えるのでは」と述べた。しかし、海洋環境の面では、今のところレジームシフトが起こる明瞭な兆しは見えない。一方、マイワシ資源については40年前と同様に増え始めの入り口に近づいたとみている。今後の予測が難しいが、生物の面では魚の方が増えようとしているようだ。

Q:アリューシャン低気圧と魚種交替の関係はマイワシだけに限ったことなのか?
A:この影響が最も明瞭に出てくるのがマイワシである。1980年代にはレジームシフトと魚種交替が同時に起こった。継続してマイワシの産卵量調査をしているが、本年の産卵量は2019年よりも少なかった。まだ、1980年代の豊漁期の資源水準には達していないと考えている。

   (酒井光夫)
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