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vol.929

2020年上半期の産地市場における主要魚種の動向

 JAFICが調査している全国主要68港における1〜6月の調査対象全魚種の累計水揚量は92万6千トンで、前年同期(96万8千トン)の96%とやや減少した(表1)。
 1〜6月の平均価格は166円/kgで、前年同期(174円/kg)の96%とやや弱含みであった。平均価格は1月には前年を上回ったものの、2月以降は5月を除き前年を下回った。  主要47魚種の1〜6月の魚種別の累計水揚量と平均価格は表2のとおりである。水揚量は、ビンナガ、ホッケ、生鮮スルメイカなど16魚種が前年同期を上回り、そのうちビンナガ、ホッケ、マイワシなどは過去5年で最高水準であった。たこ類など6魚種は前年同期並みであった。ウルメイワシ、カタクチイワシなど25魚種は前年同期を下回り、そのうちウルメイワシ、カタクチイワシ、生鮮カツオなどは過去5年で最低水準であった。平均価格は、生鮮カツオ、カタクチイワシ、ウルメイワシなど9魚種が前年同期を上回り、マアジ、マイワシなど6魚種が前年同期並み、トラフグ、うに類(剥き身)、養殖ハマチ、養殖マダイなど32魚種が前年同期を下回った。  4月は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が発令された月であり、5〜6月も新型コロナウイルスの流行に伴う外出の自粛要請や飲食店の営業時間の制限など新型コロナウイルスの影響が続いた。このため、4〜6月に着目し、主要47魚種の魚種別の累計水揚量と平均価格をとりまとめたものが、表3である。また、4〜6月の水揚量と平均価格を前年同期と比較したものが図1である。全47魚種のうち、前年から価格を上げたのは7魚種、前年並みが4魚種、価格を下げたのは36魚種で、多くの魚種で価格を下げた。このうち、水揚量が前年同期を下回ったにもかかわらず、価格を下げた魚種は、トラフグ、あわび類、クルマエビ、マダイ(天然)、ヒラメ(天然)など16魚種であった。特に1,000円/kg以上の高価格魚の多くが前年同期を下回った。  代表的な魚種の1〜6月の動向は、次のとおりである。

@ アカムツ(ノドグロ)は、本年1月時点で前年の平均価格を上回る1,208円/kgであったが、新型コロナウルスの流行が拡大した3、4月には800円/kg台まで値を下げた。その後は若干回復したものの、前年を下回る価格で推移している(図2)。 A アワビでは、平均価格は本年1月時点で前年をやや上回り、2月はほぼ前年並みであった。3月も2月並みの価格を維持したが、4月には、3月から1,400円マイナスの4,621円/kgまで下落し、5月も同様であった。6月には5,628円/kgまで価格を戻したものの、前年のほぼ半値であった(図3)。 B 養殖マダイは、ここ数年、需要が弱く価格が低迷しており、本年1月時点の平均価格は前年を下回る781円/kgであった。その後、更に価格を下げ、5月には541円/kgまで下落した。6月には595円/kgとやや回復したものの、前年を大きく下回る価格であった(図4)。 C さば類は、1月は水揚量が少なかったこともあり、平均価格が前年同月(115円/kg)を22%上回る140円/kgであった。その後は前年並みで推移し、4〜6月の平均価格は86円/kgで、前年同期(80円/kg)と大きく変わらなかった(図5)。 D マイワシは、1〜4月の水揚げが好調で、水揚量は前年を上回ったものの、平均価格が下がるということはなく、1〜6月を通して前年並みであった(図6)。  以上をまとめると、2020年上半期は、平均価格が前年を下回る魚種が多かった。また、4月には新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が発令され、それ以降は、水揚量が前年同期を下回った魚種も含め、価格を下げた魚種が多かった。特に、高価格魚の多くで価格を下げたが、新型コロナウイルスの流行に伴う外出の自粛要請や飲食店の休業等により、需要が減ったことが影響したものとみられる。
 一方で、マイワシやさば類の平均価格は、前年から大きく落ち込むことはなかった。これは、コロナ禍で外出が抑制される中、一定の家庭内需要に支えられたことや、輸出が好調であったことも影響したのではないかと考えられる。
 水産物輸出から状況をみると、本年1〜6月の水産物輸出は、数量で32万9千トン、金額で1,032億円、平均価格は314円/kgであった。前年同期比では、数量で6%減少、金額で28%減少、平均価格は23%減少した。そのうち、冷凍さば類の輸出量は10万9千トンで、輸出全体の33%とウエイトが高く、前年同期を11%下回ったものの、輸出価格は122円/kgと前年同期並みであった。冷凍マイワシの輸出量は6万1千トンで、輸出全体の19%を占め、前年同期比では、数量が2%減少し、平均価格が82円/kgで前年同期の1円高であった。これらのことから、マイワシやさば類は家庭内需要が高かったことに加え、こうした好調な輸出が、産地価格を底支えした要因の一つではないかと考えられる。

   (水産情報部)
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