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vol.928

7月のスルメイカ漁況経過について

 JAFICおさかなひろば(以下、おさかなひろばという)による7月のスルメイカの水揚量(8月19日現在の集計、以下同様)は2,384トンで前月(4,388トン)より大きく減少し、前年(3,357トン)、近年5年平均(3,593トン)を下回った (表1、図1)。7月の平均価格は548円/kgで、水揚量が大きく減少したこともあり、前月(438円/kg)より上がり、前年(522円/kg)、5年平均(419円/kg)を上回った(表1・図1)。
 産地別(JAFIC調査地)の7月の水揚量は、最も多い金沢で947トンとなり前月(2,902トン)より大きく減少、前年(1,572トン)を下回り、金沢だけで全国の7月の水揚量減少の約80%を占めた(表1・2・図2・3)。また、金沢での日別の水揚量は5月下旬から急増したが、6月上旬をピークに徐々に減少し、7月の最多は10日の83.6トンで、月末は1日あたり20〜30トンに減少した(図3)。
 他の主要産地の7月の水揚量は、八戸304トン、新潟224トン、酒田211トン、三沢72トン、桧山54トン、小木54トンであった。水揚上位10産地のなかでは新潟、酒田でやや増加し、前年を上回ったが、その他では前年を下回った産地が多かった(図4)。また、道西各地では目立った増加はみられず、道西沿岸各地の合計水揚量は前月並みだった(表3)。
 1〜7月の累計水揚量は、金沢が4,796トンで前年(4,174トン)を上回り、近年6年間で最多となった。また水揚上位10産地では、前年を上回った産地が多かったが、その他の産地の合計は1,202トンで前年(1,831トン)を下回った(表2・図5)。また、道西各地では、前年を下回った産地が多かった(表3)。
 金沢の6月、7月で最も水揚量が多かった6月4日、7月10日および前年同期(7月9日)のJAFIC日報水温図をみると、@6月に前年より沖合を北上していた対馬暖流が、一部で6月より沿岸に接岸傾向となった。A対馬暖流内の水温は、前月より顕著に昇温し、前年と比較しても1℃前後高めとなっていた。A隠岐北方では、6月は暖水の北上が弱かったが、7月は暖水の北上が顕著となり、大和堆西沖に暖水が波及するようになった。B6月は、能登半島北西沖から若狭湾沖にかけての対馬暖流の南側に冷水域が広い範囲に分布していたが、7月は対馬暖流が接岸傾向となった。また、NPPDNB(人工衛星夜間可視画像)をみると、7月になって新潟県、山形県、秋田県、函館、武蔵堆付近にスルメイカ漁場と思われる光がみられるようになり、新潟県〜秋田県では前年より光が多かったが、道西沿岸ではほとんど光がみられず、武蔵堆でも光が少なかった(図6・7・8)。また、図にはないが7月下旬に大和堆の西沖で、スルメイカ漁場と思われる多数の光がみられたが、長続きしなかった。
 JAFIC日報水温、NPPDNB、おさかなひろばのデータから、6月まで石川県付近に滞留していたスルメイカが、7月には北上を開始したことにより、金沢での水揚量が大きく減少したと考えられる。しかし、新潟県以北では一部で増加したものの少量であり、金沢での減少をカバーするには至らず、道西沿岸では前月並みで前年を下回った。
 2020年度 第1回 太平洋および第2回日本海スルメイカ長期漁況予報(国立研究開発法人 水産研究・教育機構、7月29日発表)によると、8〜9月の来遊量は、太平洋側では、常磐〜三陸海域で前年並みだが、道東太平洋海域および津軽海峡〜道南太平洋海域で前年を上回ると予報されている。日本海側では、西部日本海で前年を下回り、本州北部日本海で前年並みだが、道南・津軽海域では8月までに来遊のピークがあり前年を上回ると予報されているほか、道北・道央海域では8月までと10〜11月に来遊のピークがあり前年を上回ると予報されており、今後の漁況が期待される。

   (水産情報部)
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