〇東シナ海〜黒潮域
・2017年秋に大蛇行に移行した黒潮は、7月に続き、8 月上旬現在も大蛇行が続いており、継続期間は3年になろうとしている。
・7月の黒潮は流路の変動が大きかったが、おおむね九州〜四国では流軸は離岸し遠州灘をS字状に御前埼沖まで北上して、三宅島〜八丈島を通過する流路をとった。最南下緯度は、30°N付近であった。
・7月の平均海面水温は沖縄周辺では28〜29℃、九州〜四国沖は28℃、伊豆諸島付近は27℃に昇温した。九州〜四国〜潮岬沖は流軸の離岸により下層に冷水がある影響で、前年より1℃前後低め、伊豆諸島付近も流軸が前年より西側を北上しているため1℃弱低めであった。
〇親潮域・混合水域
・黒潮続流は、6月とほぼ同じ37°N付近まで北上し、安定した流路であった。
・常磐北部〜三陸〜北海道沖では、6月よりやや沿岸寄りの142〜145°Eを18℃以上の暖水が北上していた。
・釧路南沖には平均海面水温17〜18℃の暖水塊があった。この暖水塊は前年より沿岸寄りに分布しており、道東沿岸の平均海面水温は前年より1〜2℃高めであった。
・常磐北部〜金華山の沿岸寄りと北海道東方沖〜千島列島沿周辺は日射不足や下層の冷水の影響で前年より1〜3℃低めであった。
・親潮は明確な沿岸分枝は見られない。沖合分枝は40〜41°N・147°E付近が南限であった。7月も親潮の面積は平年よりかなり小さい状態が続いた。
〇日本海
・7月は日本海南部は気温が低めで推移したことや日射不足の影響により昇温が弱く、特に朝鮮半島付近は、前年より最大で約2℃低めであった。東朝鮮暖流域では明確な暖水の北上はみられなかった。
・隠岐諸島〜大和堆付近では、平均海面水温が22℃以上の暖水が北に張り出していた。
・6月下旬〜7月上旬に黒潮蛇行の南端部から冷水渦が切り離されたが大蛇行は7月も継続した。しかし流路の変動が大きく7月下旬に再び冷水渦の切り離しが生じた。
・7月中旬〜下旬に徐々に蛇行の南下部と北上部が近づき始め蛇行が逆Ω型(図2-1A)になった。7月29日には南下部と北上部が接近して冷水渦の切り離し寸前(図2-2A)になった。7月31日には、冷水渦(図2-3B) が切り離され、蛇行は縮小して(図2-3A)南下緯度は31〜32°N付近になった。
・8月上旬になると蛇行は再び発達して、8月7日には蛇行の最南下緯度は31°N付近(図2-4A)となった一方、冷水渦の位置(図2-4B)はほぼ同じであった。
・蛇行はその後も発達し、8月12日には冷水渦と再結合して複雑な流路(図2-5)となり、最南下緯度は29°Nに達し、熊野灘に接岸(図2-5A)する大規模な大蛇行になった。
・このように、大蛇行から一旦切り離された冷水渦が蛇行と再結合して蛇行が再発達した例は、JAFICやその他の機関が発行した既往資料には例がなく、珍しい現象であるといえる。
・今回の冷水渦の再結合により再発達した大蛇行は、下層の冷水の面積の広がりや2020年度第1回太平洋いわし類・マアジ・さば類漁海況予報の中央ブロック海況予報の資料からも、2020年中は続く見込みである。