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vol.924

6月のスルメイカ漁況経過について

 JAFICおさかなひろば(以下、おさかなひろばという)による6月のスルメイカの水揚量(7月13日現在の集計、以下同様)は3,978トンで前月(1,967トン)より大きく増加、前年(2,402トン)を上回り、近年6年間で最多となった(表1、図1、2)。6月の平均価格は453円/kgで前月(462円/kg)よりやや下がり、前年(507円/kg)を下回ったが、6年平均(436円/kg)を上回った(表1、図3)。
 産地別(JAFIC調査地)の6月の水揚量は、金沢が2,902トンで前月(842トン)より大きく増加、前年(1,513トン)を大きく上回り、近年6年間で最多となった。他の産地は、石巻186トン、新潟182トン、酒田154トン、桧山126トン他。水揚げ上位10港では松前さくら、函館を除き各港で前年を上回ったが、その他の産地の合計は228トンで前年(551トン)を下回った(図4、6)。
 1〜6月の累計でも、金沢が3,849トンで前年(2,602トン)を大きく上回り、近年6年間で最多となった。また水揚げ上位10港では、各港で前年を上回ったが、その他の産地の合計は1,202トンで前年(1,831トン)を下回った(図5)。
 金沢での日別の水揚量をみると、5月下旬から急増、6月4日に最多の228トンとなった。その後、減少傾向となり、7月1日は35トンとなったが、3日以降は再び増加傾向となった(図7)。
 金沢で最も水揚量が多かった6月4日と前年のJAFIC日報水温図をみると、@今年は対馬暖流が前年より沖合を北上しており、対馬暖流内の水温は1℃前後低めとなっている。A隠岐北方では、前年は暖水の北上が顕著で大和堆付近に暖水が波及していたが、今年は不明瞭となっている。B前年は、能登半島北西沖から若狭湾沖にかけて冷水が舌状に大きく入り込んでいたが、今年は対馬暖流の南側に冷水域が広い範囲に分布していた(図8、9)。
 これらにより、スルメイカの大和堆への回遊が阻害され、石川県付近にスルメイカが滞留して、金沢での漁獲が増加傾向となった可能性が考えられる。
 近年のスルメイカ水揚量は長期にわたって減少傾向が続いていたが、5月以降は近年6年間で最多となった。7月初めには武蔵堆付近にも漁場が形成されつつあり、今後の動向が注目される。なお、2020年度 第1回 日本海スルメイカ長期漁況予報(国立研究開発法人 水産研究・教育機構、4月28日発表)によると、5〜7月の来遊量は前年および近年平均を下回るとされていることから、6月の金沢における好漁は前記のように海洋環境の影響と考えられる。

   (水産情報部)
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