4月の近海カツオ竿釣り漁場は、熊野灘沿岸および伊豆諸島周辺でビンナガ中主体に
小、大、カツオ小、中他を平均6.6トン/隻・日の漁獲に増加し、前年(3.0トン/隻・日)を上回った(図1)。
紀伊半島沖では、2017年8月から黒潮大蛇行が続いているが、前年は黒潮大蛇行からの19℃以上の黒潮反流が熊野灘沿岸に接岸し、
29年ぶりに同海域に漁場が形成され、4月から6月まで長期間続いた。今年も大蛇行は続いており、
熊野灘沿岸に2年連続で漁場が形成されたものの、黒潮反流が前年より弱く、同海域での漁場形成は4月だけで終わった。
5月は、月初めは伊豆諸島南沖〜房総半島南東沖がビンナガ主漁場となり、カツオは伊豆諸島北部で僅かの操業。
月中は房総半島〜常磐東沖に北上、漁場の先端は37°Nに達した。今年の北上は前年より早いが、一昨年とほぼ同じであった。
月末は、房総半島東沖の東西に幅広く漁場が形成された(図2、図3、図4、図5、図6、図7)。
6月4日のJAFICエビスくん日報水温図と竿釣り漁場のプロット図では、房総半島東沖の黒潮続流の南側で148°〜149°E付近にかけての
20°〜22℃(漁獲水温は20°〜23℃)で操業し、全船がビンナガを漁獲、平均33.5トン/隻・日の好漁となったが、カツオの漁獲はなかった(図8)。
週毎の平均漁獲量(図9)は、ビンナガ中主体に大、小、カツオ中、大他を4月30日〜5月6日の週は平均8.4トン/隻・日(前年4.6トン/隻・日)で
4月より増加した。その後、週を追うごとに更に増加、5月21日〜27日の週は平均17.8トン/隻・日(前年5.4トン/隻・日)の好漁となったが、
カツオは伊豆諸島周辺で僅かとなり、房総半島東沖のビンナガが好漁になるにつれて、カツオ狙いの操業船は減少した。
6月4日〜9日は、平均23.2トン/隻・日(前年5.0トン/隻・日)と更に増加したが、ほぼ全量がビンナガで、カツオ混じりの船は僅か4隻のみであった。
1〜5月のカツオ(釣り)の全国主要港の水揚量は、3,294トンで、依然として前年を大きく下回り、過去6年で最低(表1、図10)。
価格は、水揚量が少なく、在庫量(図13)が少ないこともあって前年を大きく上回り、過去6年で最高(図11)。
産地別水揚量は、鹿児島で1,494トンとなり前年比68%、御前崎では305トンで前年比64%、房州勝浦では1,483トンで前年比26%にとどまり、
勝浦での低調ぶりが目立った(表2、図12)。
ビンナガの水揚量(全漁業種類)(全国)は、近海竿釣りでの漁獲が始まった4月から急増、5月は10,855トンに達し、近年6年間で最多となった(図14)。
価格は、在庫量が低水準なこともあり(図16)、3月までは堅調に推移したものの、水揚げが急増した4月以降は低下する傾向がうかがわれる(図15)。
産地別水揚量(図17)は、4月は房州勝浦が主体。5月は気仙沼で水揚げが急増し、20年ぶりに20億円を超える水揚金額となった他、房州勝浦、銚子でも水揚げが増加した。
今年の近海カツオ竿釣りは、ビンナガの好漁によって好調だがカツオは依然として低調で、カツオ狙いの操業船は減少してきている。
現在、好漁のビンナガも漁が続くのは近年では7月半ば〜7月いっぱいくらいまでである。今年の東北海域へのカツオの来遊水準は、
大型漁は前年を上回るが中型漁は前年を下回り、全体でも下回ると予測されているものの(JAFIC「令和2年度気仙沼カツオ意見交換会」気仙沼港における
竿釣漁業による生鮮カツオ未成熟魚の今期水揚量の予測)、早いカツオ漁の本格化が期待される。