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vol.916

令和2年5月の海況について

1. 5月の海況概要

〇東シナ海〜黒潮域
・5月も黒潮の大蛇行は続き、大蛇行の継続期間は2年8か月となり、現在も継続している。
・大蛇行の最南下緯度は、30°N以南に達する深いU字型流路をとった(図1A)。
・遠州灘〜熊野灘沖に黒潮流軸が張り出し(図1B)、期間を通して沿岸へ暖水が波及した(図1B)。
・九州西沖(図1E)では、22〜24℃の暖水が北に張り出し、前年より1〜2℃高めであった。
・海面水温は、5月下旬には遠州灘沖まで24℃以上の水域が北上し、 黒潮の内側の遠州灘〜熊野灘には20〜21℃の水域が接岸して前年より1℃弱高めであった。 4月に沖縄周辺〜沖縄東沖で発生していた平年より低めの状態は解消されたが、前年と比べると依然として低めであった。
〇親潮域・混合水域
・黒潮続流は約37°Nまで北上し、鹿島灘沿岸には18℃以上の暖水が張り出していた。
・福島〜三陸南部の143〜145°E以西では10℃以上の暖水が北上し、釧路南沖では暖水塊(図1C)があり、この海域では前年より2〜4℃高めであった。
・親潮は、沖合分枝が148°E付近を40〜41℃まで南下(図1E)しているものの、明瞭な沿岸分枝は無かった。
気象庁の資料によれば3〜4月の親潮面積は1982年以来最小を記録し、現在も平年より親潮面積が小さい状態が続いている。
〇日本海
・15℃以上の海域は佐渡付近、10℃以上の海域は北海道の積丹半島付近まで北上した。
・前年と比べると、ほぼ全域で低めであるが、平年と比べると朝鮮半島北部を中心に、依然として高めの状態であった。

2. 5月の海況の推移

〇東シナ海〜黒潮域
・5月前半から後半にかけて九州東岸〜四国沖側(図2H)では黒潮流軸の離岸が進み、 5月後半は種子島付近からほぼ直線的に潮岬沖まで北東進する経路をとった。
・黒潮流軸の最南下緯度(図2A)は、前半には30°N付近であったが、後半には29〜30°Nとなり、南下が進んだ。 一方、遠州灘〜熊野灘では徐々に黒潮流軸の張り出し(図2B)が強まり、流軸の接岸が進んだ。
・黒潮は伊豆諸島付近では、おおむね三宅島〜八丈島を通過し、大島西水道付近に暖水が北上することが多かった。
・海面水温は、前半には四国沖は23℃、伊豆諸島西沖は22℃前後、相模湾〜房総沖は20〜21℃であったが、後半には相模湾〜房総沖まで23℃の水域が東進した。
・沖縄周辺〜沖縄東沖は気象の影響等で22〜23℃と平年より低めであったが、後半には約24℃台になり平年より低めの状態は徐々に解消した。
・東シナ海(図2G)は昇温し、前半は北部において15℃以下の海域もあったが、後半には全域で18℃以上となった。
〇親潮域・混合水域
・黒潮続流域では、4月後半〜5月前半にかけて房総半島沖の冷水塊が黒潮に取り込まれた影響で常磐沖に蛇行が発生して常磐沿岸に暖水が接岸した(図2C)。 この蛇行は後半には解消したが、暖水の張り出しは残った。
・福島〜三陸沖(図2D)における10℃以上の暖水は、5月前半は145°Eを中心とする沖合を北上し、北端(図2E)は釧路南沖の41〜42°Nまで達した。 一方、後半は144°E以西の沿岸寄りを北上し、釧路南沖では41°N付近を中心とする暖水塊まで達した。
・5月前半、後半共に道東沿岸には4〜6℃の冷水が分布するが、この冷水の南下は襟裳岬付近までであり、三陸海域への明確な親潮沿岸分枝の南下は無かった。 沖合分枝(図2F)は4〜6℃が5月前半は147°E付近を40〜41°Nまで南下していたが、後半はやや沖側の148°E付近を南下し、先端は42°N付近まで達した。
〇日本海
・日本海は5月前半から後半にかけては全般的に2℃前後昇温した。
・朝鮮半島北部(図2I)では4月に引き続き暖水が北上し、前半は12〜13℃、後半は16℃以上が40°N付近まで北上した。

3. 6月上旬現在の黒潮流軸の九州〜四国〜潮岬での極端な離岸

・5月後半旬(図2-2)に九州〜四国沖で流軸の離岸が進んだが、6月上旬(図3-1)はさらに離岸が進んだ。 九州から四国沖では流軸は31°N付近まで離岸して都井岬沖をほぼ東進し、熊野灘のはるか南の29°N付近で蛇行して、 大王埼〜遠州灘に接岸するJ字型の蛇行となっている。
・2017年秋に始まった黒潮大蛇行の中では2019年5月上旬(図3-2)の流路と類似しているが、 2020年6月上旬の方が九州〜四国沖ではより離岸し、大王埼〜遠州灘沖ではより接岸するという極端な流路をとっている。

   (海洋事業部)
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