〇石巻港:4月の水揚量は、3月に比べやや増加したものの、前年並であった(前年比97%)(表1)。
体長組成は15cm前後主体で、20cm以上は少なかった(図1)。石巻港では20cm以上のマイワシは見られず、
この時点で三陸海域まで北上している魚群は少なかった。
〇銚子港:4月の水揚量は前年をやや下回った(前年比87%)(表2)(図2)。漁場は3月から引き続き、
鹿島沖から銚子沖に形成された。体長は15cm前後主体で、20cm以上にもモードが見られ(図3)、
体重は35g前後と90g前後にモードが見られた(図4)。これらのことから、産卵を終えた群が銚子周辺まで北上したことが考えられる。
〇境港:4月の水揚量は前年を大きく上回った(前年比10.2倍)ものの、好調であった3月から大きく減少した(表3)。
4月はマアジやブリの漁獲が増加し、マイワシの水揚量は減少したことから、マイワシ狙いの操業が減ったことが考えられる。
〇大船渡港:1、2月は前年並かそれを下回る水揚量であったが、4月は大きく上回った(表4)。
いわて大漁ナビによると4月21日に2トン、27日は10トン以上の水揚で、4月下旬から水揚量が増え始めた。
〇石巻港:2、3月は前年を上回る水揚量であったが、4月は前年を下回った(前年比69%)(表5)。
3月と4月では尾叉長組成のモードが変化しており、30cm以上の産卵を終えた群の一部が北上していると考えられる(図5)。
〇銚子港:4月には銚子沖でのさば類の操業はほとんどなく、銚子水揚のさば類のほとんどが中部海域で漁獲されたものであり、
水揚量は前年を下回った(前年比80%)(表6)。4月上旬の中部海区操業分のさば類の尾叉長は32cm前後が主体であった(図6)。
〇三重県奈屋浦港:4月の水揚量は前年を下回った(前年比52%)(表7)。
本年は過去3年とは漁獲のピークがずれており本年4月から水揚量の減少が見られた(図7)。
また、4月下旬にかけてサイズも小型化した。水揚量が減少し、サイズが小型化していることから、
大型魚は産卵を終え北上したと考えられる。
〇宮崎県北浦港:4月の水揚量は前年を下回った(前年比62%)(表8)。
奈屋浦同様、漁獲のピークがずれており、今年は4月に顕著な水揚量の減少が見られた(図8)。
産卵を終えた魚群が4月には北上を開始したと考えられる。
○松浦港:4月の水揚量は3月に引き続き低調で、前年をやや下回った(前年比92%)(表9)(図9)。
4月上旬は西沖主体の操業であったが、中旬から下旬は東シナ海中南部での操業が主体であった。
尾叉長は西沖では30cm前後、35cm前後主体であったが、東シナ海中南部では大型魚は見られなかった(図10)。
太平洋側のマイワシは、石巻港および銚子港の水揚状況や銚子沖のまき網漁場の位置から判断すると、
4月に入り産卵を終えた群が銚子沖まで北上したものの、三陸海域まで北上した魚群は少なかったと考えられる。
一方で、銚子沿岸の水温が9〜10℃であるため、沖合の10〜12℃の北上暖水を通って北上する群もいたと考えられる。
また、5月から道東沖でさけます代替棒受網によるマイワシ漁が始まっており、徐々に北上する傾向が見られている。
太平洋側のマサバは4月中旬から下旬にかけて東北海域の定置網や底引き網で漁獲が好調になり、北上の傾向が見られた。
また、奈屋浦や北浦での水揚のピークが一ヶ月早かったことから昨年よりも北上が早まっているものと考えられる。
一方で、いまだに北浦沖で産卵群が漁獲されていることから、今後さらに東北海域で産卵後の北上群の漁獲が続く可能性がある。
日本海側は隠岐海峡でのマイワシに加え、浜田沖や九州西沖、東シナ海中南部でマアジやマサバの漁獲があった。
マイワシは前年より来遊量が多い状況が続いており、隠岐海峡ではマアジも漁獲されるようになったので、今後が期待される。
一方、東シナ海のマサバは3月に続き低調な漁模様で推移した。
また、銚子港では新型コロナウイルスにより、外食産業向けのハマチや輸出向けのイワシサバ等の値段が下がるといった影響が見られた。
他港に関しても魚価や流通に対する影響について注視していきたい。