トピックス

トピックス一覧
最近の水産の話題はこれ! 随時更新
vol.912

令和2年4月の海況について

1. 4月の海況概要

〇東シナ海〜黒潮域
・黒潮大蛇行は今月も継続しており、2017年秋に大蛇行に移行して以来継続期間は2年半を超え、 1975年から約5年間続いた大蛇行に次ぐ長期の大蛇行となっている。
・大蛇行の最南下緯度は30°N以南に達し(図1中のA)、遠州灘南沖を北上して、 遠州灘沖〜熊野灘沖に張り出して(図1中のB)三宅島から八丈島間を通過する経路が主であった。
・海面水温は黒潮域では、大蛇行の影響で、蛇行の内側や伊豆諸島東沖で平年より数℃低かった。 沖縄東沖は、季節風や寒気の影響で平年より低めであった。
〇親潮域・混合水域
・福島県東沖から釧路南沖の144〜146°Eでは10℃以上の北上暖水や暖水塊が分布し(図1のC、図2のG)、 平年より2〜4℃高い海域もあった。
・親潮の面積は気象庁資料によると、平年よりかなり小さく、親潮沿岸分枝はおり、明確には確認できず、 42°N以北に後退した( 図1中のD、図2中のH)。 一方、親潮の沖合分枝は北海道南東沖の146〜147°Eで39〜40°Nまで南下していた(図1中のE、図2中のI)。
〇日本海
・海面水温は中部や南部ではおおむね平年より高めであった。特に東朝鮮暖流域の北部(図1中のF)や大和堆北部では、 平年より2〜4℃高い海域もあった。一方、沿海州周辺では平年より低めで推移した。

2. 4月上旬の海面水温の前年との比較

〇東シナ海〜黒潮域
・前年、今年ともに黒潮の蛇行は潮岬南南東沖で30°N以南に達し、その後遠州灘〜熊野灘沖まで接岸している。 遠州灘〜熊野灘沖では、前年に比べて今年の方が黒潮流路の張り出しが接岸していた(図3-1中のA)。 前年は黒潮から暖水の一部が切り離され、熊野灘沖に20℃以上の暖水塊として分布していた(図3-2中のA)。
・沖縄東沖では日射や寒気等の気象の影響で、前年より低めであった。
〇親潮域・混合水域
・常磐沖の黒潮続流は今年、前年共に37°N付近まで北上していたが、前年の方が鹿島灘〜常磐南部沿岸に接岸していた。
・三陸沖〜釧路南沖では、前年は5℃以下の冷水が南下していたが(図3-2中のB)、 今年は冷水の勢力が弱く、明確な親潮沿岸分枝が確認できなかった。 144°E付近において、黒潮続流から、福島県沖〜三陸北部沖まで10℃以上の暖水が北上した(図3-1中のB)。 このため、前年冷水が分布していた海域に暖水が北上し、前年と比べて最大で約8℃前後高い海域も出現した。
・145°E以東では、釧路南東沖に暖水塊(図3-1中のC)があるが、その他の海域は前年に比べて暖水の北上が弱く、 前年より2℃前後低めであった。また147°E付近では、前年はこの付近に暖水塊(図3-2中のD)があったが、 今年は親潮沖合分枝が40°N付近まで南下しているため、前年と比べて6℃以上低めであった。
〇日本海
・沿岸は、おおむね前年並みであった。東朝鮮暖流の勢力が強く、朝鮮半島北部まで10℃以上の暖水が北上し、 朝鮮半島沿岸〜沖合まで広がっていた。この海域を中心に朝鮮半島北部では前年より4℃以上高い海域があった。

3. 4月中旬の海面水温の前年との比較

〇東シナ海〜黒潮域
・遠州灘〜熊野灘沖では黒潮流軸の張り出しが弱まり上旬に比べ離岸し、遠州灘〜熊野灘には19℃以上の反流が発生した(図4-1中のA)。 前年は熊野灘には、上旬に黒潮流軸から切り離された19℃以上の暖水塊が接岸していた(図4-2中のA)。
・沖縄周辺〜沖縄東沖は、上旬に引き続き日射や寒気等の気象の影響があり、前年より2℃以上低めであった。
・伊豆諸島〜房総半島沖では、黒潮流軸が前年より北偏し、19℃以上の暖水が房総半島に接岸していたため、沿岸において1〜2℃高めであった。
〇親潮域・混合水域
・黒潮続流は、前年は蛇行して福島県沖の38°N付近まで北上していたが、今年は北上位置が36°N付近に留まった。 このため、福島県沖の37〜38°Nにおいて、2〜4℃低めであった。
・三陸沖〜釧路南沖では、上旬と同様に5℃以下の冷水の南下は弱く、明確な親潮沿岸分枝は存在しなかった。 北上暖水は上旬よりやや東進し144〜146°Eで10℃以上が釧路南沖まで北上し、上旬の暖水塊(図3中のC)と一体の暖水塊となった(図4-1中のB)。 このため、この海域は前年より4℃以上高めであった。
・145°E以東は12℃以上の暖水の北上が弱く、前年より2〜4℃低めであった。釧路南東沖は、親潮沖合分枝が39〜40°Nまで南下していた(図4-1C)。 前年はこの海域に北上暖水や暖水塊が分布していたため(図4-2C)、最大で6℃以上低めであった。
〇日本海
・本州沿岸は、おおむね前年並みであったが、北海道沿岸は10℃以上の暖水の北上が進み、前年より1〜2℃高めであった。 東朝鮮暖流の勢力は上旬に引き続き強く、朝鮮半島沿岸では、前年より3℃以上高い海域が広がった。

4. 4月下旬の海面水温の前年との比較

〇東シナ海〜黒潮域
・室戸岬〜潮岬沖では中旬に比べ黒潮が離岸した。また沖縄付近は、中旬に引き続き気象の影響等で前年より暖水の北上が弱かった。 このため沖縄〜潮岬沖では沿岸を中心に最大で前年より4℃前後低めであった。
・遠州灘〜熊野灘では前年より黒潮流軸が張り出し、接岸していた(図5-1中のA)。 前年は熊野灘には19〜20℃の暖水塊が接岸していた(図5-2中のA)。
・伊豆諸島〜房総半島沖では、前年と比べ黒潮流軸がやや南偏していた。房総半島南東沖には、前年同様、 西進してきた18℃以下の低温水域があり、周辺に19〜20℃の渦状の暖水(図5-1中のD、5-2中のD)がみられた。
〇親潮域・混合水域
・黒潮続流は、今年は36°N付近を東進し145°E以東で緩やかに南下した。一方、前年は鹿島灘で離岸し38°N付近まで北上・蛇行していた。 この影響で、常磐沿岸は前年より高めであるが、福島県沖は2〜4℃低めであった。
・三陸沖〜釧路南沖では、5℃以下の冷水の南下は弱く、親潮沿岸分枝は明確ではなかった。 144〜146°Eでは黒潮続流から張り出した10℃以上の暖水が三陸南部まで北上し、 釧路南沖では中旬に引き続き暖水塊がみられた(図5-1中のB)。 この海域親潮沿岸分枝が南下していた前年より4〜6℃高めであった。
・145°E以東は、12℃以上の暖水の北上が前年より弱く、2℃前後低めであった。 釧路南東沖では親潮沖合分枝が39〜40°Nまで南下していた(図5-1中のC)。 このため北上暖水や暖水塊(図5-2中のC)があった前年より最大で6℃以上低めであった。
〇日本海
・本州沿岸は12℃以上の暖水の北上が前年より弱く、約1℃低めであった。 一方、北海道は南部まで10〜11℃の暖水が北上し、1〜2℃高めであった。
・山陰西部の浜田北沖〜鬱陵島や隠岐堆周辺では、相対的に低温な13℃以下の水域の南下が前年より強く、1〜2℃低めであった。

   (海洋事業部)
  • ◇トピックス 全文◇
  • このページのトップへ