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vol.904

スルメイカ・その他のイカ・さば類に関する水産関係者との意見交換会

  概要 (八戸)

1. はじめに


 水産関係者とのスルメイカ他に関する意見交換会「スルメイカ冬季発生系群とその他イカ及びさば類の資源状態と漁況予報をめぐって」(表1)が、12月6日に八戸で開催されました。その概要を紹介します。まず冒頭で、スルメイカの資源低下と不漁によってスルメイカの国内価格が高騰し、更に海外の主要イカの資源悪化でイカの国際価格も高騰しているとの説明がありました。日本のイカ関連水産業を健全に保つためにも、産業横断的な対策を考える必要があることが強調されました。

2. 2019年度スルメイカ冬季発生系群の資源状況


 稚仔調査(2019年2月)、トロールによる加入量調査(5〜6月および7月)、およびイカ釣による一斉調査(6月および8〜9月)によると、@稚仔密度は前年をやや上回る(平年下回る)、A加入量は前年を下回り、今期の加入状況は依然と低い水準でした。2019年の資源量は14.4万トンと推定され、資源尾数は前年をさらに下回り、ABC(生物学的許容漁獲量)は0.7〜1.1万トンが推奨されました。資源は低水準で動向は減少傾向にあると判断されました。

3. 2019年漁期青森県スルメイカ漁海況

 本年漁期は、青森県日本海沖や北海道日本海側の水温が低めに推移して、同県では日本海沿岸で漁場形成が続きました。また、太平洋側では7〜8月に青森県沿岸の水温が低めに推移して漁場が形成されました。しかし、9月以降は沖合域の暖水域の影響でスルメイカは沖合域を回遊したと思われました。秋季および冬季発生系群ともに資源量が少ないことから、漁群密度は低く漁獲は低調でした。

4. 2019年漁期岩手県スルメイカ漁海況

 今期は過去60年のうちで最低の漁獲量となりました。岩手県の漁獲量は、冬季発生系群の資源量との間に高い相関が見られ、資源量に強く影響を受けていることが示されました。5トン以上のイカ釣船61隻が7〜8月及び10〜11月に操業し424トンを水揚げしました(11/10までの集計。以下同様)。漁場は昼釣では久慈沖の水深180〜200m、夜釣では山田沖から大船渡沖の湾内〜250mに形成されました。定置網は県中南部を中心に盛期となる11〜12月に119ヶ統が操業し(144トン)、トロールは宮古を基地として盛期となる10〜11月に6ヶ統が操業しました(407トン)。

5. 太平洋における2019年のスルメイカ漁海況

 今期の水揚げ状況は全国合計では昨年を下回り、水揚げ量が前年を上回ったのはオホーツクのみでした。資源が少なく、漁場での漁獲は局所的になる傾向が顕著でした。冷凍の水揚げ量は大幅に減少し、価格が上昇しました。小型イカ釣では、太平洋側の根室海峡からオホーツクにかけての水揚げが前年よりも高かったものの、北上暖水の差し込み方v峡を抜けて入ってくる資源も少なく、前年よりも水揚げのピークが遅くなる傾向が見られました。

6. その他イカの漁況と海況

 アカイカの漁況については、夏漁では近年(2016〜2018)は小型化傾向にありましたが、2019年は大型化して水揚げの増加傾向が見られました。一方、冬漁では漁獲が不安定で、中国船の漁獲も近年は減少傾向にありました。

7. 道東海域から三陸海域における本年のさば類の漁況と海況漁海況

 さば類の資源量は中位水準で増加傾向にありました。調査船調査ではCPUEは前年を上回り、1〜2歳魚が主体の漁獲となりました。北部まき網のさば類の水揚げは5〜7月にはほとんどなく、7〜9月に八戸で、10月下旬に道東沖でわずかに漁獲がありました。11月中下旬には八戸沖、気仙沼沖で1日2〜6千トンの水揚げがあり、今後、常磐から犬吠埼沖の水温の影響によっては三陸南部が主漁場になると思われます。

8. 参加者からの意見と回答(主たる質疑応答)

Q:スルメイカの資源評価の基準となる資源量指標値の算出には7月のトロール調査結果は使っていないのか?
A:今年度はじめて調査を導入したため使っていない。今後、評価の高度化として導入を検討したい。

Q:11月に八戸に水揚げされたスポット的なスルメイカの群れは太平洋を南下するのかそれとも津軽海峡を抜けて日本海経由で南下するのか?
A:岩手県の漁獲情報も加味すると太平洋を南下して行くものと考えられる。

Q:12月になって岩手県でも底曳によるスルメイカの水揚げが回復したが、トロールでは獲れてもイカ釣では獲れなかったという現象は昨年と同様か?
A:この現象は昨年はもっと早い時期で、今年は急に岩手県水域に入ってきたことから、昨年とは異なるようだ。トロール業者に聴き取りをする必要がある。

Q:今期は台風が東海岸から太平洋に抜けることが多かったが、黒潮や親潮の勢力に影響したか?
A:台風通過は沿岸域を冷やすほどではなかったが、沖合では海水混合で海水は冷えた。

Q:三陸常磐でのさば類の脂の乗りはどうか?
A:道東では良いものと悪いものとに分かれた。三陸では脂は乗っているようだ。

Q:スルメイカ回復に向けての行動をすべきではないか?
A:外国を含めた資源管理が必要であるが、外国の正確な情報入手が難しい。IUU漁業(違法・無報告・無規制)対策も含めた国際的な管理に向けた努力を水産庁に求める必要があろう。

(酒井光夫)
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