水産関係者とのマイワシ・さば類に関する意見交換会「最新の資源状態と漁況予報」(表1)が、8月3日〜8月22日にかけて、道東3ヶ所(根室、厚岸、釧路)で開催されました。その概要を紹介します。なお、同時にサンマに関する報告も行われましたが、それについてはトピックスVol.888をご覧下さい。
■マサバ太平洋系群:漁獲量は近年増加傾向にあり、2018年漁期(7月〜翌年6月)の日本の漁獲量は30万トンでした。年齢別の漁獲尾数は2013年生まれのマサバが主体となっています。2013年以降資源量は急増し(2017年509万トン)、親魚量も2011年以降増加しています(2017年91万トン)。資源量に対する漁獲の割合は、1990年代には高かったが(50%を越える)、近年は低く推移しています(10%前後)。
■マイワシ太平洋系群:漁獲量は近年増加傾向にあり(特に三重以東)、2018年は45万トンでした。年齢別の漁獲尾数は2014年以降0歳魚が多く、1歳魚以上も増加傾向にあります。資源量は2010年以降増加し(2017年320万トン)、親魚量も2011年以降増加しました(2017年215万トン)。資源量に対する漁獲の割合は、2000年代後半に減少し、低く推移しています(15%前後)。
親潮第1分枝に沿った調査流し網(10種目合)による漁期前調査(6月中〜下旬)から最新の来遊情報が報告されました。
■マイワシ:6調査点で合計25,342尾漁獲されました。襟裳岬沖の調査点(表面水温11.8℃)で過去最多の漁獲尾数を記録し、調査1回あたりの漁獲尾数(CPUE)も過去最高値となりました。被鱗体長のモードは10cm、17cm、20cm台に見られ、中型個体のモードは前年(16cm台)よりも大きかったです。
■さば類:6調査点で合計1,236尾のさば類が漁獲されました。調査海域の南西の調査点(表面水温15.4℃)で漁獲が多く、CPUEは前年よりも高くなりました。魚体は,尾叉長のモードが14cm、21cm、23cm、28cm、31cm、38cm台に見られ,前年よりも11〜15cm台の小型個体の割合が高くなりました。
表面水温から見た今期のまき網漁場の特徴、道東沖のマイワシ棒受網の漁況、まき網のさば漁況に加えて、今後の予測について解説がありました。
■表面水温とまき網と漁場:親潮の勢力が昨年に比べて強く、暖水は沖合を北上しました。7月中旬に金華山沖に漁場が形成されましたが、昨年に比べ魚体は大きいものの魚群の北上は遅れました。沿岸を北上する0歳魚はいませんでした。
■道東のマイワシ棒受網:6月中旬にマイワシが中心で一日一隻当たり20〜30トン漁獲されました。前年同期(7月下旬)と比較すると同じ体長でも20〜30g小さく痩せています。
■さば類:三陸から常磐沖にかけて6〜7月にかけて散発的にマサバ主体に漁獲されるのみでした。
■今後の予測:マイワシは体長18〜19cmの2歳魚が継続して漁獲され、道東沖の水温が下がると20cm以上の3歳魚が来遊すると見られます。マサバの来遊資源量は少ないと見られ、8〜9月頃に水温によっては沖合から沿岸へ来遊して26〜35cm(3〜6歳魚)主体に漁獲されると予想されます。
Q:マイワシの適水温は? 何℃からならばマイワシはいると考えられるのか、6〜7℃とかにはいないのか?
A:ぎりぎり9℃以上、暖かい水が繋がった10℃台と考えている。
Q:数年前に棒受サバ・イワシの試験操業(棒受網)をした。10℃の前線付近にイワシの反応はあったが、結局、その水温ではうまく獲れず、5〜6℃台の水温でマイワシを獲った。このため、低い水温にいないわけではないと思う。棒受網ではなるべく低い水を狙わないと逃げてしまい獲れない。群れで塊をなしているマイワシは、サンマが灯りに集まるのとは異なり、灯りを付けると塊がバラバラになってしまう。恐らく、水温が高いと動きがより速いが水温が低いと動きが鈍く、逃げ遅れた魚を獲っているのだと思う。低い水にもマイワシはいるはずと思うがどうか?
A:新しい情報である。マイワシの適水温はぎりぎり9℃以上、暖かい水が繋がった10℃台と考えている。低い水温帯でマイワシが獲れたのは、試験操業をやっていた頃のマイワシのサイズは大羽で、より低い水温耐性があったことから低い水温に分布していたのではないだろうか。つまり、今年のように体長17-18cmの小型の魚よりも低水温耐性があったのではないかと思われる。
Q:増えてきたマイワシ資源であればもっと獲りたい。今後の資源状況、および中長期の対応法は?
A:マイワシに関しては増えているので今後は獲れる量自体には問題はない。ただし、水産試験場の加工利用部では、棒受網やタモすくいで漁獲されるマイワシを高鮮度で水揚げして高く売れるような研究開発をしている。
Q:1970年代後半でのマイワシの増加期でも現在のような痩せる現象があったか?
A:当時のマイワシは今と比べてもかなり痩せていた。ただし、現在の状況が過去の高水準時と同じかどうかはわからない。加入は多かったが加入時での環境が良くなかった結果、痩せていただけの可能性もある。今後精査が必要。