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vol.864

今年8月までの主要魚種水揚量と単価の動向

1.はじめに



 水産庁と水産研究・教育機構では毎年資源評価を更新しています。カツオやサンマといった複数国が漁獲する資源を除く、我が国周辺資源については、7月から平成30年度資源評価会議が各地で開催され、評価が順次確定しつつあります。今回は、JAFICの「おさかなひろば」で公表している産地市況に基づき、今年8月までと2015年以降の水揚量(月別の累積値)と月別単価の推移を、資源の動向とともに紹介します。なお、8月の値は暫定値であり、スルメイカは漁期に合わせて4月を起点とし、翌年3月までのグラフとしています。ここで紹介した魚種の資源動向は平成29年度の資源評価結果 に基づいています。なお、資源の動向は、過去5年間の資源量や漁獲量の推移から判断したものであり、今後の予測ではありません。

2.イワシ・サバ・アジ類



 生鮮(生)マイワシは年々増加してきましたが、本年はほぼ昨年並みで推移しています。これは、主に太平洋系群の近年の加入量が多く、資源管理により漁獲の圧力も低めに推移しているためと思われますが、今年は昨年より魚体が小型のため、単価も安く、あまり漁獲対象になっていないと考えられます。昨年多く漁獲された太平洋系群の大羽イワシは、現在のところ道東よりも北方に分布していると考えられるため、今後は南下するため来遊が期待されます。なお、資源の動向は、太平洋系群は増加、対馬暖流系群は横ばいです。
 生鮮カタクチワシは2014年から2015年にかけて漁獲量が半減し、その後はほぼ安定して漁獲されてきましたが、今年は、過去3年間よりも漁獲量が大きく低下しました。これは主にカタクチイワシ太平洋系群の加入量が減り,資源の動向が減少のためと思われます。なお、資源評価によると瀬戸内海系群と対馬暖流系群の資源の動向は横ばいとなっています。そのため、マイワシとカタクチイワシの資源量や水揚量が逆相関するという魚種交替現象が更に著しくなりました。
 生鮮サバ類とマアジの水揚量は近年安定してきましたが、本年のサバ類は昨年よりもやや漁獲量が多く、マアジは逆に昨年よりやや漁獲量が少なめに推移しています。この漁獲量に対応し、サバ類はやや単価が下がり、マアジでは上がりました。なお、資源評価ではマサバは太平洋系群・対馬暖流系群とも増加傾向、ゴマサバは対馬暖流系群が横ばい、太平洋系群は減少傾向とされています。そのため、サバ類のなかでもマサバの割合が増加しています。


3.スルメイカ



 スルメイカは近年減少が続き、2016年から特に低調な状態が続いています。本年漁期はまだ始まったばかりですが、昨年を下回る水揚量で推移しています。イカ類は外国産を含めて近年漁獲量が少ない傾向にあることもあり、特に2016年の秋〜冬に価格が急騰し、価格は生鮮と冷凍でやや傾向が異なりますが、高どまりしています。資源評価では冬季発生系群・秋季発生系群ともに減少傾向で、特に冬季系群の減少が顕著です。今後とも、スルメイカの資源変動に大きく影響する東シナ海から日本海南部に分布する産卵場や産卵のための南下経路である日本海の水温や外国船の動向に注視が必要です。


4.カツオ



 生鮮カツオ(釣り)の水揚量は6月までは昨年並みで推移してきましたが、7月に昨年より増加しました。この好漁の一因として、今夏季はカツオ釣り漁場が東北沖の比較的沿岸寄りに形成されたことが考えられます。6月29日に水産庁が公表した、おもに近海カツオ一本釣り漁業の対象となる「平成30年度常磐・三陸沖カツオ長期来遊動向予測(6月〜11月)」 では、6月以降の来遊量は「昨年を上回り、過去10年平均並み」と予測されました。現在までの漁獲量は、この予報どおりに推移していますが、予測の信頼区間は広いため、注視が必要です。価格については昨年よりも低下しました。これは、アニサキスの寄生が過度に話題とされたことを発端とした風評被害と言われています。当然のことながら、カツオには有史以前からアニサキスが寄生しており、これまで長年にわたって厚生労働省や各地の保健所で注意喚起や適切な調理方法を広報してきたように、消費者も販売者も飲食店でも冷静に対応してきました。従来どおりの冷静沈着な態度で、旬のカツオの刺身を味わってほしいと願う水産関係者は多いと思います。
 生鮮カツオ(旋網)は2016年に著しく水揚量が減少しましたが、この原因はキハダを狙う操業が多かったためといわれています。実際、全国の生鮮キハダの2016年の水揚量は1万トンを超え、前年の6600トンから大幅に増加しました。2016年の生鮮カツオ(旋網)の漁獲量は2015年並みに回復しましたが、今年は再度大きく減少しました。本年8月までの生鮮キハダの漁獲量は2016年比で75%、2017年比で134%でしたので、キハダあるいは他のマグロ類を旋網が狙った可能性があります。


             (谷津明彦)

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