宮古から銚子における主要港(10か所)のマイワシの4月の水揚量は30,726トンで前年(30,944トン)並であった(表1)。(出典:おさかなひろば)
(1)漁場
北部太平洋大中型一艘まき網におけるマイワシ漁場は鹿島灘南から犬吠埼東部であった。昨年同月は上旬から中旬は犬吠埼北部から南部であり、下旬が鹿島灘から塩屋崎灯台北部であった。まき網の漁場水温は今年も昨年も15〜17℃であった。JAFICの海況図によると、昨年は、15〜18℃の暖水が犬吠埼沖にあったが、今年は黒潮の影響を受け、3月上旬に発生した16〜21℃の暖水が4月も犬吠埼沖に残存しており、昨年よりもやや水温が高い。今後もこの暖水は犬吠崎沖に残ると考えられる。
(2)魚体
銚子港におけるまき網水揚物の体長は19〜22cm台(2015年級及び2014年級以前:体重90〜120g台)が多かった。昨年同月は体長19〜20cm台(2014年級:体重80〜100g台)が多く、20cm以上(2013年級以前)は少なかった(図1)。このように今年は昨年よりも20cm以上の大型のものが多く漁獲された。今年は昨年4月の水揚物の中心であった2014年級が多く漁獲されており、さらに資源量が多い2015年級も多く漁獲されているため、このような体長組成になったと考えられる。
また、体重は同じ体長で昨年よりも10g前後重く、昨年よりも太り具合がよいものが多かった。
三陸の宮古から石巻(5か所)のマイワシ水揚量は953トンであり、昨年同月は1,150トンであった。また、三陸海域においては昨年、今年ともに定置網の水揚のみであった。水揚物の体長は17cm〜20cm台(2016年級と2015年級主体:体重70〜110g台)が中心であった。一方、昨年同月は上旬、中旬は13〜16cm(2016年級)、下旬は17〜19.5cm(2015年級)が中心であった。このように、今年は昨年に比べ1歳魚(14〜17cm)が漁獲されず、2歳魚(17〜20cm:昨年漁獲の中心であった2016年級)が多く漁獲された。
(1)海況要因から今後の漁況予測
5月7日の表面水温分布図によると、常磐海域では昨年よりも水温は高いが、4月の漁場水温であった15〜17℃が犬吠埼沖から鹿島灘に残っていることから、5月も犬吠埼沖から鹿島灘沖に漁場が残ると考えられる。
三陸海域では、昨年(5月4日の表面水温分布図)は15℃以上の暖水が小名浜付近まで達していたのに対し今年は4月上旬から塩釜沖付近まで達しており、15℃以上の暖水が昨年より北へ張り出していた。このことからマイワシの北上が昨年よりも早いことが予想される。
道東海域では、10℃以上の北限が昨年は根室の落石岬南150海里付近だったのに比べ、今年は落石岬南60海里付近まで北に位置していた。このように昨年よりも暖水が北に位置していることから5月後半には一部のマイワシが道東沖まで北上すると考えられる。
(2)魚体予測
4月24日の田代島(宮城県石巻市)の定置網における魚体情報(図4)から、4月下旬には19cm以上(2015年級以前)は北上を始めていると考えられる。このことから今後の三陸海域の漁獲は4月に三陸海域で漁獲された17〜19cm(2016年級)も残るが、常磐海域から北上してくる19〜22cm台(2015年級及び2014年級以前)が中心になると考えられる。2015年級と2014年級以前は、暖水が昨年より北偏していることから、5月後半には道東沖まで北上すると考えられる。また、常磐海域では、犬吠埼沖の水温情報から、産卵を終えた19〜20cm(2015年級)が犬吠埼沖に留まり、今後も漁獲の中心になるであろう。また、19.5cm以上の個体は体重が重く、昨年よりも脂の乗ったおいしいマイワシが楽しめるであろう。
(漁海況部 藤井椋子)