2017年(5〜8月)の近海竿釣りによるビンナガ漁の特徴は ・北寄りの漁場形成 例年黒潮続流域の内側(南側)に形成されるが、本年は外側(北側)に形成された。 ・漁期早い 本年は漁獲のピークが例年より早く5月下旬に迎え、終漁も7月中旬と早かった。 ・魚体大きい 本年は10〜12sの大中型(5歳)が大部分を占め、例年漁獲される7〜9sの中小型(4歳)が昨年同様少なかった。
2017年の近海竿釣りによるビンナガ漁場は、小笠原諸島沖や伊豆諸島沖でほとんど漁獲されることなく、5月中旬から常磐沖の黒潮続流域内の146°〜149°E、19〜20℃の昨年より北寄りに漁場が形成された(前年同期は小笠原東沖・南西沖に漁場形成)。漁獲は、中、大主体に平均24.1トンの好漁となり、2016年同期の平均9.4トン(2015年同期平均6.5トン、2014年同期平均12.7トン)を大きく上回った。5月下旬は常磐沖143°〜145°Eの北上暖水の21℃海域および黒潮続流域の沖合の148〜150°E、20°〜21℃に漁場が形成され、漁獲は平均20.9トンにやや減少したものの好漁が続き、2016年(10.3トン)、2015年(16.0トン)、2014年(16.6トン)を上回った。
6月上旬は、やや沿岸寄りに漁場が移動、黒潮続流域の143°〜146°E、21°〜22℃で平均11.0トンに減少し、2016年(10.5トン)をやや上回ったものの、2015年(20.1トン)、2014年(15.4トン)を下回った。中旬は再び沖合に漁場が移動、黒潮続流南の149°〜153°E、20°〜21℃で、平均10.5トンにやや減少、2016年(10.6トン)並みだが、2015年(16.4トン)、2014年(16.1トン)を下回った。下旬は、黒潮続流南の146°〜148°Eの20°〜21℃、東沖合の黒潮続流域および北上暖水の153°〜156°E、20〜22℃で平均12.6トンの漁獲にやや増加した(2016年(11.7トン)、2015年(12.7トン)、2014年(14.7トン))。
7月上旬は、沖合の北上暖水の153°〜155°E、20〜22℃で9.6トンに減少、2016年(11.2トン)、2015年(11.4トン)をやや下回り、2014年(16.8トン)を下回った。中旬は、153°〜154°E、20°〜23℃で平均10.7トンにやや増加、2016年(4.9トン)を上回り、2015年(10.7トン)、2014年(10.1トン)並みとなり、下旬はビンナガの漁獲はなくなり7月20日に終漁を迎えた(2016年漁獲なし、2015年(7.5トン)、2014年漁獲なし)。
通期での平均漁獲量は、2017年は15.4トンで、2016年(10.2トン)、2015年(13.3トン)を上回り、2014年(14.6トン)をやや上回った。(図1参照)
今年は、体長79〜84cm台の物が多く漁獲された。昨年は、77〜81cm台が多く昨年よりも2〜3cmほど魚体が大きかった。また一昨年のような体長48〜53cm台の小型の個体は、昨年に引き続きほとんど漁獲されなかった。
今年の房州勝浦と気仙沼における近海竿釣りの生鮮ビンナガの累計水揚量は、12,634トンで2016年の8,007トンの1.6倍、2014年の16,981トン、2015年の15,344トンと比べ、それぞれ74%、82%となった。今年は過去4年では中水準の漁獲であった。(図2参照)
近海竿釣りの生鮮ビンナガの水揚価格は、2012年は245円/kgだが、2013年は在庫が多かったため、180円/kgに下落し、2014年は270円/kgに戻った。2015年以降300円/kgを超える高値が続いている。
近海竿釣りの生鮮ビンナガは、主にタイ等に缶詰用として年間1万2千〜1万9千トン輸出されており、産地価格と輸出価格はパラレルに変動し、産地価格を支えている(図3参照)。
(JAFIC総研)