2017年5月の宮古〜銚子における主要港(*1)のマイワシ水揚量は28,009トンで、前年(32,725トン)の86%であった。銚子、波崎、大津、小名浜における合計水揚量は26,045トンで前年(30,631トン)の85%、三陸の石巻〜宮古における合計水揚量は、1,964トンで前年(2,094トン)の94%であった。このように、5月は常磐海域、三陸海域ともに、前年をやや下回った。 (*1:今回の集計で使用した港:宮古、釜石、大船渡、気仙沼、女川、石巻、小名浜、大津、波崎、銚子。出典:JAFICおさかなひろば)
北部太平洋まき網による常磐海域における5月のまき網によるマイワシ漁場は、犬吠東沖から小名浜南沖であった。漁場水温は、5月上旬および中旬は15〜17℃台、下旬は17〜18℃台が主体であった。
まき網1隻平均漁獲量は、5月上旬〜中旬は100トンを越えていたが、5月下旬になり急激に減少し、5月26日〜6月1日では30トン程度となった。
3〜4月の近海竿釣り漁獲量とCPUEは前年比微増で(JAFIC集計)、伊豆諸島への北上も例年よりやや早く、4月中旬から見られています。この北上群は1.3〜2.1kgの小型魚で、今後東北海域へ北上する群です。千葉県の予報でも5〜6月には黒潮流路がB型(千葉県沿岸では接岸傾向)と予想されていることを加味し、2kg(尾叉長45〜48p台)を主体に漁獲量が増加する可能性が指摘されました。
銚子港におけるまき網水揚物は、体長19cm〜22cm台(3歳以上主体:体重は80〜130g台)が多く、上旬には14〜15cn台(1歳魚:体重30〜40g台)が、下旬には17〜18cm台(2歳魚:体重60〜70g台)が主体となる時もあった(図1,図2)。
北部太平洋まき網では、5月23日以降、三陸海域で操業を開始した。三陸海域におけるまき網漁場は、金華山南沖から気仙沼東南東沖であった。漁場水温は、10〜14℃台であった。まき網1隻平均漁獲量は、5月23日〜25日では74トン程度であったが、5月26日〜6月1日では44トンとなり、常磐海域よりは多いものの、少なくなった。
岩手県における定置網の入網状況は、釜石では5月11日に約2.6トン、29日に約0.8トン入網したが、他は若干程度であった。大船渡では、5月8日に約1.7トン、10日に約1.1トン入網したが、その後は若干〜0.6トン程度と少ない。このように、岩手県の定置網では5月10日前後に一時的に多く入網した以外は、少ない状況であった。
石巻港における水揚物は、上旬の定置網に入網した物は体長17.5〜22.5cm台で、モードは20〜21.5cm台(3歳以上主体)であった。下旬にまき網で漁獲した物は体長14〜23.5cm台で、モードは14〜16cm台(1歳魚)、18.5〜19.5cm台(2〜3歳魚)、21〜22cm台(4歳以上)であった(図3)。
さけ・ます流し網代替漁業(棒受網)は、5月13日から水揚を開始した(13日は厚岸港で1.3トン)。花咲、厚岸、釧路の合計水揚量は、17日8.7トン、22日16.7トン、26日70.8トン、31日105.7トンと徐々に増えてきた。漁場は、花咲南90〜100海里付近と港から10〜12時間程度かかる場所であるため、入港は昼前後となる事が多い。17日に厚岸港に水揚した魚体は、体重80g以上の3歳以上が主体であった。
(1)漁況から判断した現在のマイワシ魚群
漁獲状況から、マイワシは、常磐海域では5月中旬までは魚群が多かったが、5月下旬から少なくなった。岩手県定置網では5月10日前後に一時的に多く入網したこと、5月下旬に金華山〜気仙沼沖にまき網の漁場となっていることから、三陸海域では、マイワシが来遊しているものの、沿岸では少ない。道東海域では、棒受網の漁場である花咲南90〜100海里付近までは魚群が来遊している。
(2)海況要因からの今後の漁況予測
6月8日の表面水温分布を見ると、外房以西は主に20℃以上の水帯であり、犬吠〜那珂湊沖にかけては18〜20℃台である。これらのことと5月下旬の漁獲状況から、現在多くの群が常磐海域より北に移動しており、常磐海域では今後さらに魚群が少なくなるであろう。
三陸海域では、沿岸では水温が低く14℃以下の水帯が金華山南40海里付近まで南下しており、14℃以上の北上暖水は金華山〜宮古沖の30〜50海里沖を北上している。このため、沖合を北上するマイワシが沿岸の定置網に入網しにくい状況となっている。今後、三陸沿岸に暖水が流入すると、マイワシが多く来遊する。
道東海域では、今年は道東沖暖水塊が無く、親潮の勢力が強く、10℃以下の水帯が襟裳岬南沖では45〜70海里付近まで、釧路〜花咲南沖では110〜130海里付近まで広がっている。この影響で5月下旬の棒受網漁場は港から遠かった。道東海域では、暖水塊が無くても今後南から北上暖水の勢力が強くなるため、漁場は徐々に道東沿岸に近づき、魚群も多くなるであろう。
(3)魚体予測
常磐海域での漁獲状況から、三陸海域および道東海域では、体長19cm〜22cm台が主体となり、17〜18 cm台(2歳魚)も徐々に増えるであろう。この2歳魚は加入量が著しく多いと言われているが、昨年も含めこれまでの所、多くは漁獲されていない。今後の動向に注目したい。
5月23日に金華山南沖で漁獲した魚体を見ると、体長19cm台で100g程度、22cm台で130g程度である。5月8日の定置網水揚物と比較すると、体重が重くなっている(図4)。マイワシは、急激に太ってくる時期であり、北の餌が沢山ある海域へと移動している。さらにおいしいマイワシを楽しめる時期となる。
(渡邉一功)