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vol.835

犬吠以北におけるマイワシの状況(2017年4月)

1.水揚動向

 2017年4月の宮古〜銚子における主要港(*1)のマイワシ水揚量は30,392トンで、前年(28,600トン)の1.1倍であった。 銚子、波崎、小名浜における合計水揚量は29,750トンで前年(27,570トン)の1.1倍であったが、三陸の石巻〜宮古における合計水揚量は、642トンで前年(1,030トン)の62%であった。 このように、常磐海域では前年をやや上回っているが、三陸海域では少ない。
 (*1:今回の集計で使用した港:宮古、釜石、大船渡、気仙沼、女川、石巻、小名浜、波崎、銚子。出典:JAFICおさかなひろば)

2.常磐海域における状況

 北部太平洋まき網では、3月20日頃からマイワシ主体に操業するようになった。4月のまき網によるマイワシ漁場は、房総から日立沖であった。銚子港におけるまき網水揚物の体長組成は、19cmモード(2〜3歳)と20.5〜22.5cmモード(4歳以上)で、4月28日は14〜15cmモード(1歳)であった(図1)。体重は、上旬は60〜80g台と90〜110g台主体であったが、徐々に70〜80g台と100〜110g台主体となってきた。なお、4月28日の体長14〜15cmモードの物は、体重30〜40g台であった(図2)。

3.三陸海域における状況

 大船渡における定置網では、4月17日以降断続的にマイワシの水揚があり、4月26日には1トン弱、4月28日には27.7トンと徐々に増えている(出典:岩手県水産情報配信システム いわて大漁ナビ)。今年は前年と比べると親潮の勢力が強く水温が低いため、三陸海域へのマイワシの来遊が遅れているものの、マイワシの北上は進んでいる。 石巻における定置網水揚物の体長組成は、18〜19cmモードと21cmモードであり、大型の個体が来遊している(図3)。

4.今後の予測

(1)漁況予測
  漁獲状況から、マイワシは、4月は主に常磐海域以南に分布しており、4月の後半から一部の群が三陸南部に達している。犬吠から日立沖におけるまき網の漁場水温は主に12〜17℃台であり、16℃台が多かった。 5月1日の表面水温分布図を見ると、12℃台は小名浜周辺から金華山東30海里〜気仙沼東南東50海里付近に達しており、そろそろ金華山沖にまき網の漁場が出来そうな水温となってきた。一方、5℃以下の水帯は、釜石東50海里付近まで南下しており、道東海域は昨年よりも水温が低い。よって、三陸北部〜道東海域への魚群の本格的な来遊は、前年よりも遅くなり、もうしばらくかかるだろう(前年は道東海域におけるさけ・ます流し網代替漁業(棒受網)が5月19日から水揚開始)。

(2)魚体予測
  銚子港および石巻港における体長組成から、4月の漁獲の主体は、18〜19cmモード(2〜3歳魚)と、20.5〜22.5cmモード(4歳魚)であった(年齢は体長から推定)。大型の3〜4歳魚以上の魚については、北上することから、常磐海域では徐々に割合が減って来るだろう。

(3)資源評価結果と海況要因からの予測
  平成28年度の資源評価結果では、2015年級(2歳魚)が著しい卓越であり、現存資源量も多いものの、4月はあまり目立っていない。平成28年度太平洋いわし類長期漁海況予報(平成29年3月24日国立研究開発法人水産研究・教育機構発表)によると、本海域におけるマイワシ2歳魚の体長は17〜18cm前後である。また2歳魚の大部分が成熟し、産卵期は11〜6月(盛期2〜4月)である。 黒潮の蛇行に伴い、伊豆諸島東側では16〜17℃台の水温が広がっていることから、まだ2歳魚主体のマイワシが産卵場に残っている可能性が高く、今後も常磐海域への来遊が期待できる。

(渡邉一功)

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