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vol.771

岩手県宮古市の現状(前編)

 10月に入ってすぐの岩手県宮古市は気温16度前後。時として砂埃を舞い上げる海風はすっかり秋でも、真夏並みにギラギラしていて皮膚を焼くような日射しの天気でした。

 盛岡駅から宮古市へ向かう道中、川に沿って緩やかに蛇行するバスからの景色は、霞のかかった緑は濃く川は澄んでおり、すれ違う車の中にも工事用車両等はありません。
 むき出しになった山肌や崩れてそのままになった民家なども見当たりません。台風15号が残したであろう倒木が僅かに確認出来るくらいで、半年前の震災の痕跡はありませんでした。「この半年でここは復旧したんだな」と安心していました。

 宮古駅についてもその印象は変わりません。駅周辺は小規模ながら整然としており、各種交通機関にダイヤの乱れはなさそうです。しかし目的地である宮古漁港まで徒歩で向かう途中、徐々に実態が明らかになってきました。

 目抜き通りに沿って左右を見ながら進んでいると、建物の多くが白っぽく清潔に塗られているのが目につきます。古い感じはあまりなく、比較的最近手入れされているように見えました。

 港のある方向へ角を曲がり商店街にさしかかると、所々で信号が止まっていました。それなりに車も人も通っているのですが、皆ゆっくりしていて特に混乱はありません。しかし横断歩道を渡るお年寄りと車が鉢合わせしているなど、一度ならずひやっとする場面もありました。

 そのときは「こんなに明るい昼間だから、節電で停止しているんだろう」と考えていました。後になってそれが大きな間違いであったことを知ります。それらの信号は夜になっても点くことはないそうです。信号機の灯器部分は15万程度ですが、制御盤は200万もするそうです。見た目は壊れていなくても、海水に浸かった制御盤を交換しなければ信号が点くことはありません。部品も予算も全く足りず、もうずっとこんな状態だというのです。

 確かに灯火だけでサイレンを鳴らしていないパトカーが目につきました。県外からも手信号のために警察官が応援に駆けつけてくれているそうです。

 商店街も一見無傷に見えますが、それは掃除や修理や建て替えが終わったから。数件並んで営業している店の隣に空き地があると、そこにかつて家や店があったと思われるコンクリートの基礎だけが残っているという具合。閉じたシャッターには赤いペンキで「解体OK」。半壊しながらも残っている建物には、みな洪水の入り口と出口がぽっかりと空いていました。

 歩き進んで国道に出ると、防波壁の向こうに海が見えます。震災直後にニュースで見た宮古市役所は、未だ吹き抜けの2階まで板が打ち付けられている状態。昼間なので明かりが見えず、上の階が機能しているかはわかりませんでした。

 国道沿いの防波壁から一番近いガソリンスタンドは営業中。しかしその先の道を隔てたスタンドは、津波の恐ろしさを伝えるモニュメントのように、破壊されたままの姿でその場にありました。

 目指す宮古漁港、宮古市魚市場はそこから数百メートル。宮古市の漁業・水産業の現状は、次回お伝えいたします。

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