銚子で8月21日(土)に東京水産振興会と漁業情報サービスセンターの共催で、第5回「食」と「漁」を考える地域シンポ「サンマの生産流通情勢」と漁況動向を開催した。後援は銚子市・銚子市漁協・はさき漁協・海匝漁協。地域シンポは第1回を昨年12月に銚子で開催して以降、愛南町と黒潮町と東京でも開催し、銚子では2回目の開催となる。業界関係者を中心に今回の参加者は107人と、第1〜3回に続き100人を超えた。
北海道新聞編集委員の本田良一氏が、「サンマの生産流通をとりまく内外情勢」について特別講演を行った。同氏は昨年3月に中公新書から「イワシはどこへ消えたのか」を刊行する等、北海道の水産の諸問題の実情について精通。サンマをめぐる対立と競争の構図を、生産者VS流通・加工業者、北海道VS本州、小型船VS大型船と指摘。2006年は道内・本州の水揚げ割合が半々だったが、2008〜2009年には本州の水揚げが道内の2倍近くに広がった。価格は道内の方が本州より5割高く、道内の流通・加工業者にしてみると高いサンマを買わされているという不公平感がある。
また、近年、サンマの輸出が好調で、03〜06年は1〜2万トン台であったが、07年3万2900トン(30億円)、08年5万7千トン(46億円)、09年7万5400トン(50億円)と過去最高を記録し、今年4月までで4万2千トン(33億円)と好調。09年の輸出第1位はロシアの2万6400トン(19億円)、以下、第2位が韓国の1万6千トン(9億円)、第3位がタイの1万2300トン(6億円)。
今年のロシア側のサンマ輸出の提案・要望は、10〜12月に日本の漁船から仲積船を経由して、加工母船2隻に1日400トンを計1万3000トンを洋上転載するというもの。今年8月末に輸出価格を提示するとしているものの、今年のサンマ漁は不漁なので、8月末に提示するのは無理ではないか。しかし、ロシア側の担当者は鮭鱒の担当者と同じ人物なので無下に断れず、難しい対応を迫られそうだとみている。
JAFIC道東出張所長で元釧路水試・漁業資源部長の小林喬氏が、「2010年のサンマ漁況をどう見るか」と題し、話題提供を行った。小林氏は最近のマスコミはサンマの不漁を水温のせいにしているが、不漁の原因は今年に特大魚・大型魚になる中型魚・小型魚を昨年獲り過ぎたためと明言。昨年のサンマの漁獲尾数は、外国船も含め特大魚・大型魚が18億尾で、中・小型魚は19億尾。過去の傾向から、中小型魚の漁獲尾数が18億尾を越すと、翌年は特大魚・大型魚が3分の1に減る。
サンマ資源は東経165度を挟んで親潮の勢力により遮られ、西側と東側では独自に再生産を行っていることから系群が異なり、交流がない。これはアカイカも同様。水研センターの資源評価では、サンマ資源は400万トンあるとか200数十万トンあるとしているが、東経165度以東からは日本船の操業している海域には来遊しないのではないか。
現に台湾船が東経160度付近で6月に11トン/日漁獲していたが、7月に北上しても7月に2〜3トン/日しか獲れておらず、水研の漁況予報通りに東経165度以東から群れが加入するならば獲れても良いはず。今期の東経165度以西のサンマ資源は8万6千トンしかなく、既に台湾船が3万トン獲っており、残りは5万6千トンしかない。過去にサンマの年間漁獲量が10万トンを割ったのは、昭和40年代に2回と昭和51年の3回のみで、以上のようなことから、今年の漁獲量は10〜15万トンと予測した。