現在開催中のシーフードショーの近畿大学のシンポジウムの中で、トライ産業の林弘二海外事業部長が、地中海本マグロ蓄養事業について講演を行なった。同氏は長年地中海の本マグロ蓄養事業に係わってきたエキスパート。
地中海の蓄養マグロ事業は、1994年にクロアチアで95年にスペインで本格的な事業としてスタート。短期蓄養ではクロアチアは小型魚主体で成果が出なかったが、スペインは200kgを超える大型魚が漁獲の8割を占め、短期蓄養で結果が出たため蓄養事業への機運が高まった。
1970〜80年代の地中海本マグロは5〜7万トンの漁獲で、大半は塩漬・オイル漬・缶詰原料としてヨーロッパ内で消化。蓄養の原魚は当初1ユーロ/kg(160〜170円)だったが5年後には5ユーロ/kg(800〜900円)に高騰。資金力の乏しい蓄養業者は撤退し、残った業者が施設を買い、規模を拡大。
地中海の活け込み数量は、2005〜2007年は2万3千トンあったが、08年1万9千トン、09年1万1千トン、10年9100トンと減った。地中海の蓄養業者数はICCATに登録されているのが31で、09年23、10年19と漁獲量の減少により休業・統廃合が進んでいる。フランスは漁獲オーバーにより来年・再来年は操業しない。イタリアは漁船の採算割れもあり、枠自体を政府が買い取り今年の出漁を辞めた。来年はEU自体が禁漁することもあり得る。
日本に対するこの影響として、国内の蓄養(2〜3年物)は8千トンあって小型サイズは補える、値段が上がると消費が減るので出荷調整が自動的に行なわれる、代替品として蓄養ミマミマグロの在庫が豊富などの理由で直ぐに大きな影響は出ないとみる。将来、地中海本マグロの蓄養は、大型サイズに絞り込まれ、小さな蓄養業者は淘汰され、今以上に統廃合が進むとみる。良い話として地中海の資源回復の話も聞かれ、近い将来漁獲枠の復活も期待される。