千葉県の勝浦港では、例年、4〜5月に竿釣り船による生鮮カツオの水揚げの最盛期を迎える。しかし、ここ2〜3年、小笠原〜伊豆諸島を北上するカツオの群れが薄いようで、黒潮沿いに北上する群れを漁獲の対象とすることが多い。ゴールデンウイーク前までの近海鰹竿釣り船の主漁場は、伊豆諸島西側水域、紀伊半島〜大東島〜南西諸島で、勝浦港は漁場から遠いことから、ここ2〜3年、この時期の勝浦港の入港隻数・水揚数量とも少なくなっている。
ゴールデンウイーク明け後になると、ようやく、竿釣り漁・旋網漁とも八丈島近海でカツオの漁獲がまとまり出した。早くも5月12日には銚子に旋網船がカツオを計300トン水揚げした。この日は勝浦港に竿釣り船1隻のみでカツオ40トンの水揚げしかなかったことから、高値がつくはずだったが、銚子の旋網物に引きずられ、それまで勝浦の相場の1/5〜1/3のキロあたり100円以下に急落した。
宮崎県の調査船が11日に八丈島南沖の青ヶ島近海でビンナガの群れを見つけると、不安定なカツオ漁から大半の竿釣り船が安定し獲れるビンナガ漁に切り換えた。最初の魚体は10kg級主体に4kgのものが釣れていたが、現在は7〜8kg級の魚が中心。氷を積むと魚倉に魚が入る量が減ることから、氷を積まずに海水冷却装置だけで冷やしており、1隻1航海あたりビンナガ60〜100トンと、カツオの倍以上積んでくる船もあり、現在、勝浦港はビンナガの水揚げに活況を呈している。
三陸沖の脂のあるトロ系のビンナガはビントロ・トロビンチョウとしてすっかり回転寿司の市民権を得ているが、今の時期のビンナガは脂がない魚で刺身用にはほとんどならずに缶詰用(ホワイトミート、ちなみにキハダはライトミート・カツオはシーチキン)となっているようだ。一昨年は勝浦の5〜6月のビンナガの水揚げは1万9千トン、昨年は時期が遅れたことから気仙沼主体の水揚げとなったものの、この時期にビンナガを釣るのがすっかり定着した。ビンナガの価格は中旬はキロ220〜230円だったが、最近は1割ダウンのキロ200円弱となっており、カツオの缶詰向けの相場の80円の3倍と魚価も良い。このため、ビンナガ主体の船は1航海1千万円前後と、安定した水揚金額を出している。
しかし、首都圏のスーパー対応を行っている出荷業者にしてみると、この時期にカツオがないと商売にならないことから、気仙沼同様に以前は入港しなかった鰹旋網船を積極的に誘致して不足分を補っている。都内スーパーや鮮魚店での刺身用カツオの四つ割の売価は、400〜800円で概ね500円前後と例年よりも高めのようで、価格帯を安く設定できる未だに解凍物のタタキやトロガツオを販売している店舗も見受けられる。