トピックス

トピックス一覧
最近の水産の話題はこれ! 随時更新
vol.657

水産学会が勉強会開催

日本水産学会主催の勉強会「水産業のこれからを考える」が、11月30日(日)に東京大学農学部で開催され、約120人が参加した。この日のテーマは「定置網漁業、養殖業への新規参入と漁業権」で、政策研究大学院大学の小松正之教授、東京大学大学院の本間正義教授、東京大学社会科学研究所の加瀬和俊教授が講演を行った。小泉−竹中の構造改革路線は農業に続いて水産業にも及んでおり、日本経済調査協議会の水産業改革高木委員会提言を発端に、それを受けた内閣府規制改革会議の「第2次答申」「中間とりまとめ」が公表され、水産業改革の議論が業界関係者を中心に活発化していることから、この勉強会が開催された。なお、小松教授と本間教授は高木委員会委員で、内閣府規制改革会議委員も務める。

小松教授の講演は「沿岸漁業の構造改革」と題し、資源減少、漁業者減少、魚価安が問題だとした。漁業権免許は現行の優先順位によるものではなく、資源管理・乱獲防止を県がやれば適格者には同一優先順位で許可すべき。漁協の4分の3は赤字で事業外収入の比率が高いので漁協経営の透明化が必要、組合員資格の審査内容も厳正化が必要だとした。

本間教授の講演は「いま、なぜ漁業権なのか」と題し、漁協経営は収支全体が黒字でも経済事業は多くの漁協で赤字、海砂利の採取や諸処の開発の見返りとしての補償金など「事業外収入」で補っているのが実情。養殖業や定置網漁業の参入障壁を撤廃してオープン化すべき、漁業権も売買できるようにすべきだとした。

一方、加瀬教授は「沿岸漁業参入自由化論批判−−誤った診断と迷惑な処方箋−−」と題する講演を行ない、規制改革派の問題点や矛盾点を指摘。規制改革派は遠洋漁業・沖合漁業の衰退で、沿岸漁業への参入を正当化している。また、漁業の産業的特性を無視。沿岸漁場の面的管理は不可欠で、漁場計画や漁協による実質的な調整が行われており、効率性だけでは比較できない。規制改革派は参入したい企業の代弁者。大手水産会社は遠洋漁業から撤退して輸入商社になったが買い負けて商売にならず、日本の沿岸域でクロマグロ養殖やブリ養殖をやるためには規制を取っ払って、プライベートビーチ化したいのが本音。そこで商売に失敗すれば開発や転用することも考えられ、漁村の荒廃を招く。組合員資格にしても現存漁業者の実績審査を厳しくして排除し、加入希望者は実績・経験無視で皆認可するというのはダブルスタンダードで、高齢な漁業者を排除することになる。

総合討議の中では、小松・本間教授の講演の中で漁協の赤字額・事業外収入が多いことを問題にしたが、加瀬教授によると漁協の赤字は組合員に対する貸付の赤字が一番多く、事業外収入が多いのは海砂利の採取や補償金は一部であり誤解している。信用事業を県漁連に譲渡したため、漁協が代行して業務を行っているのでその手数料が県漁連から支払われると説明。次回は12月6日(土)に同会場で資源管理と持続的利用をテーマに行われる。

このページのトップへ