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vol.647

クラゲの話 <祝・ノーベル化学賞!>

沖縄県の那覇空港近くにある泊ボストン大学名誉教授の下村脩さんがノーベル化学賞に選ばれました。下村さんは1960年代にアメリカ東岸に大量に生息するオワンクラゲの体内から刺激を受けると青白く光るタンパク質(緑色蛍光タンパク質、Green Fluorescent Protein)を発見し、精製することに成功しました。スウェーデン王立科学アカデミーは化学賞の発表資料で「光るたんぱく質―生物科学を導く星」とタイトルを付けてGFPの重要性を説いたそうですが、なかなかロマンチックです。緑色蛍光タンパク質を『光る目印』として遺伝子内に組み込み、ターゲットの遺伝子が生体内でどう動くかが解ることで、病気の仕組みの解明や治療法の開発に利用されるなど、生命科学やバイオテクノロジー研究を飛躍的に進めることを可能にしたことが受賞理由のようです。新聞報道によると、下村さんは実験に使うためのオワンクラゲは家族総出で1日3千個も捕まえ、年間5万個、数十年かけて合計で85〜100万個(100トン)に及ぶといいますから、気の遠くなるような話です。<画像:ミズクラゲ(於:のと水族館)>

さて、8月のお盆過ぎに海水浴をしていると刺されたりするアンドンクラゲ、一番よく見かけてそこら中にいて大量発生して発電所の取水口を詰まらせたりするミズクラゲ、ここ数年大発生して漁業被害をもたらした巨大なエチゼンクラゲなど、クラゲというと有害生物のイメージが強いかもしれません。しかし、下村さんの研究のようにクラゲが医療分野で貢献していることなどを知ると、クラゲにも良いイメージが沸いてきます。クラゲはコラーゲンの含有量(2%)が多いことから、医療・美容の分野での利用が進められているようです。クラゲは英語では〈Jellyfish〉と言いますが、暗いところで光を当てると幻想的で見栄えがよく綺麗なことから、新江ノ島水族館などクラゲの展示に力を入れるいる水族館も増えていますし、通りを歩いていると六本木あたりのお洒落なバーでも展示されています。ヒール役のエチゼンクラゲはというと、山形水族館ではレストランのフルコースにして食べることで逆に名物にしているところもあります。中華料理でお馴染みの中華クラゲは、ビゼン(備前)クラゲやヒゼン(肥前)クラゲ等をミョウバンに付け脱水・加工して塩蔵・乾燥させたものです。クラゲは9割が水分なので加工処理に手間がかかることから、日本で使用される大半はタイ・中国・インドネシア・マレーシア等から輸入したものを使用しています。エチゼン(越前)クラゲは中華クラゲの原料としては味が落ちるため、ビゼン・ヒゼンより格下のようです。ちなみのこの三種を総称して『三前クラゲ』というようです。<画像:エチゼンクラゲ(於:のと水族館)>

傘径2m・体重150kgにもなるエチゼンクラゲの故郷は、経済発展著しい中国沿岸の黄海〜渤海と言われています。対馬暖流にのって成長しながら日本海各地の沿岸に来遊して、定置網・まき網・底曳網等の網を破る被害や刺胞によって魚類を弱らせ商品の価値の低下させたりしました。エチゼンクラゲの大発生がここ数年続いたのも、人間が自然に与えた影響が原因の一つかもしれません。ここ数年、日本海を中心に漁業被害をもたらしたエチゼンクラゲは、今年は日本沿岸には来ていないようですが、来年以降も目が離せません。なお、エチゼンクラゲの発生状況は(社)漁業情報サービスセンターホームページ内、大型クラゲ出現情報で公開しています。

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