5月の中型竿釣り船の漁場は南西諸島から東北南部海域まで広い範囲に形成された(図1)。漁船からの聞き取りによれば、カツオのサイズは、海域別に下記のとおりだった。
南西諸島・宮崎~高知沿岸:カツオ極小主体
和歌山県南部~伊豆諸島周辺:カツオ大主体
房総南東~東北南部海域:カツオ小主体
小笠原西方~南方海域:カツオ極小主体
前年同期と比較すると、四国以西は前年より小型が多く、和歌山県南部~伊豆諸島周辺では前年より大型が多かった。カツオ主体漁場の5月の1日1隻あたり漁獲量は海域全体の平均で6.7トン/隻・日で前月(4.7トン/隻・日)より上向いた。
5月の全国の釣りによる生鮮カツオ水揚量は3,689トンで(図2)、前月と過去5年平均を上回り、3~4月の不調から一変した。5月は中型竿釣り船の漁場が北上したことで、宮城県気仙沼港に5月21日に初水揚げがあった。カツオの主要な水揚港の5月の水揚量は下記のとおり。
千葉県勝浦港: 1,767トン(前月比4.5倍)
鹿児島県鹿児島港: 688トン(同0.9倍)
愛媛県深浦港 : 554トン(同1.3倍)
宮城県気仙沼港 : 431トン
漁場が勝浦港に近かったことから、同港への水揚げが増加した。
5月の全国平均価格は346円/kgで、前月・過去5年平均を下回る安値となった(図2)。水揚港別では、勝浦港は379円/kg、鹿児島港は293円/kgで、愛南(深浦港)は325円/kgとなり、各地で価格が下がった。気仙沼港は336円/kgだった。
例年5月には近海竿釣り船によるビンナガ漁の盛漁期が始まり、主に勝浦港や気仙沼港への生鮮ビンナガの水揚量が増加する時期だが、本年は6月中旬現在で中型竿釣り船によるビンナガの水揚量は少ない。5月の全国の生鮮ビンナガの水揚量は743トンで、前年・過去5年平均を大幅に下回った(図3)。水揚港別の水揚量と価格は下記のとおり。
宮城県気仙沼港 :50トン 365円/kg
千葉県勝浦港 :138トン 324円/kg
和歌山県勝浦港 :422トン 484円/kg
和歌山県勝浦港の冬季の水揚状況によれば、本年は大型 のビンナガ(5歳魚主体)が多く、竿釣りで漁獲の主体となる4歳魚が少なかった。このような年は初夏の竿釣りによるビンナガが不漁になる傾向があり、本年はその傾向に合致した。中型竿釣り船のビンナガ不漁の要因としては、日本近海の冬季海水温がビンナガの適水温より高い状態が続いたことで近海への来遊が少なかった可能性が考えられる。また、現在も海面水温が高い海域が広がっており、ビンナガが竿釣りで漁獲できる海面近くまで浮上してこない可能性も考えられる。
勝浦港に水揚げされたカツオのうち、今後東北海域に北上して戻り鰹となるであろう群れ(勝浦港における小と小々銘柄)は5月の勝浦港全体の水揚量の32%程度であった(図4)。この群れの水揚げ開始時期は前年より遅かったが、5月に小笠原周辺海域で極小の群れが見えていることから、この群れが引き続き北上してくることが期待される。
ビンナガについては、冬季からの近海での出現状況や、6月中旬現在の漁獲が少ない状況から考えると、本年のビンナガ漁は低調のまま終漁するとみられる。まき網の漁獲状況も同様であり、6~7月もカツオ主体の水揚げとなる見込みだ。
速報:6月中旬に入り、東北北部沖でビンナガのまとまった漁獲があり、6月20日の気仙沼港の水揚げはビンナガ主体となった。
(水産情報部)