JAFIC主要港における生鮮スルメイカ(全国)の5月の水揚量は134トンで、前月の94%、前年同期の46%で、2020年以降で最低であった(図1)。1~5月の累計水揚量は711トンで、前年累計水揚量の54%、平年(2020~2023年平均)累計水揚量の30%であった。
生鮮スルメイカ(全国)の5月の価格は838円/kgで、前月(662円/kg)、前年(645円/kg)および平年(2020~2023年平均、605円/kg)を上回った(図2)。4月は、底曳網や定置網に加えまき網による漁獲が増えたこともあり、前年同月並みに値を下げたが、5月はこれら網物が減り水揚量もさらに減少したことから、価格が上昇に転じた。
5月の海域別水揚量の前年比は、三陸76%、日本海42%、九州11%と各海域で減少した(図3)。5月の小型いか釣りの漁場は金沢・新潟・佐渡・山形沖などに形成された。一方、三陸の底曳網の水揚量は3月中旬~5月上旬に減少したが、5月中旬から1~9トン/日に増加した。底曳網で漁獲されたスルメイカは、4~5月は外套長18~19cmの小型主体となり、2月頃に漁獲された20~26cm以上は見られなくなった。
JAFIC主要港における生鮮ヤリイカ(全国)の5月の水揚量は42トンで前月(118トン)、前年(155トン)および平年(183トン)の1/4~1/3にとどまった。1~3月は比較的好調であったが、4~5月は三陸~常磐の漁期終盤による減少に加え、盛漁期に入った山陰~九州北部の不漁も重なり大幅に落ち込んだ(図4)。
1~5月の累計水揚量は1,600トンで、2020~2023年同期(1,100~1,500トン)をやや上回った。生鮮ヤリイカ(全国)の5月の平均価格は1,190円/kgで、前月の102%、前年の121%、平年の128%と堅調であった(図5)。
5月の海域別水揚量の前年比は、三陸19%、九州18%と減少したが、福島~愛媛が15トンと少量ながら136%と前年を上回った(図6)。
代表的な消費地市場である東京都中央卸売市場豊洲市場の生鮮スルメイカの5月の入荷量は86トンで、前月の70%、前年の71%であった(図7)。1~5月の累計入荷量は482トンで、2020年・2021年(1,500トン)の1/3、2022年(1,000トン)の1/2、 2023年(800トン)の6割であった。なお、豊洲市場の3~4月の入荷先は富山の定置物が6割を占め、5月上旬も富山の定置物が主体であったが、5月中旬以降は例年どおり日本海の釣り物が主体となった。
豊洲市場の生鮮スルメイカの5月の価格は1,491円/kgで、前月の107%、前年の123%、平年(2020~2023年平均)の152%であった(図8)。
豊洲市場の冷凍スルメイカの5月の入荷量は51トンで、前月の154%と増加したが、前年の87%。平年の95%と引き続き少なかった(図9)。1~5月の累計入荷量は169トンで、2023年の69%、2022年の56%と低調だった。豊洲市場の冷凍スルメイカの5月の価格は1,574円/kgで前月の88%、前年の141%、平年の156%であった(図10)。
上記のおさかなひろばの豊洲市場の冷凍スルメイカには、東京都中央卸売市場の定義に基づき、スルメイカのほか、アルゼンチンマツイカも含めて集計した。冷凍アルゼンチンマツイカは2021年以降、毎月、1~2トン程度の入荷であったが、5月は13トンに急増し、冷凍スルメイカの価格を下げた。
6月には道南の小型いか釣りによるスルメイカ漁が解禁になり、6月5日に初水揚げがあったが、函館港では6月18日までに延105隻が4.5トンを水揚げし、1日1隻あたり水揚量は43kgと低水準であった。一方、金沢港では5月15日に初水揚げがあり、6月19日までに延295隻が72.4トンを水揚げし、1日1隻あたり水揚量は250kgであった。6月の金沢港における1日あたりの入港隻数は例年の2割の20隻前後で、1日あたり水揚箱数は6月上旬の1千箱前後から中旬には2千箱前後に増加したが、例年の1割にとどまった。小木の中型いか釣り船(冷凍)も6月中旬に4隻がスルメイカ漁に出漁した。
5月24日に国立研究開発法人水産研究・教育機構が公表した「4月までの日本海におけるスルメイカの調査結果と漁況」によると、4月の漁期前分布調査ではスルメイカのCPUE(いか釣り機1台1時間あたりの漁獲尾数)は0.05で、前年の0.63、過去5年平均の2.28を大きく下回った。また、2023年10~11月のスルメイカ稚仔調査では、幼生の平均採集尾数は0.07と2022年並みで、過去5年平均を下回った。さらに、1~3月の小型いか釣り漁業などによるスルメイカ漁獲量は、日本海沿岸域全体で前年および過去5年平均を下回った。これらを踏まえると、今期も厳しい状況が続くと思われる。更に、中国や韓国やロシアなどのスルメイカの漁獲状況も低調なようで、これらの国からの輸入も期待薄である。
近年、加工原料として重要度が増してきたのがアメリカオオアカイカとアルゼンチンマツイカで、前者は年間100万トン、後者は年間30万~40万トンの漁獲量があり、塩辛原料・ボイル品もこの2種を使用した製品が増えている。アメリカオオアカイカを使った刺身製品もあり、アカイカ(ムラサキイカ)の生食向けも含め、原料不足に対処している。
(水産情報部)