JAFIC主要港におけるマイワシ(全国)の2024年5月の水揚量は15,071トンで、前月の72,247トンを大きく下回り、前年同月も下回った。価格は100円/kgで、前月・前年同月を上回り、5 月としては2020年以降で最も高値であった(図1、2)。
5月の水揚げの主体は三陸南部~犬吠と日本海であった。三陸南部~犬吠では前年同月を下回り、日本海では前年同月を上回った(図3)。三陸南部~犬吠の漁場は常磐~犬吠埼沖、日本海の漁場は隠岐海峡~山口県見島沖に形成された。
石巻港:5月のマイワシ(定置網主体)の水揚量は3,371トンで、前月・前年同月を下回った(図4)。価格は92円/kgで全国平均を下回った。三陸南部の定置網の漁獲物は、体長15~16.5cm、体重30~45gの1~2歳魚主体であった(図5、6)。
銚子港:5月のマイワシ(まき網)の水揚量は4,366トンで、前月・前年同月を大きく下回った(図7)。価格は123円/kgで全国平均を上回った。価格が全国平均を上回った理由として、漁獲物の体長組成が石巻・境港のものと比較して大きく、生鮮向けに出回ったためと考えられる。鹿島灘の漁獲物は、体長16.5~19cm、体重50~85gの2~3歳魚が主体であった(図8、9)。
境港:5月のマイワシの水揚量は4,687トンで、前月を大きく下回ったが、前年同月を上回った(図10)。価格は88円/kgで全国平均を下回った。漁獲物は石巻のものと比較して大きかったものの価格は下回っており、その原因として境港ではマサバの水揚量が増加したこと、マイワシのまとまった漁獲が続いたことなどが考えられる。隠岐海峡の漁獲物は、体長16~17cm、体重50~60gの1~2歳魚が主体であった(図11、12)。
JAFIC主要港におけるさば類(全国)の2024年5月の水揚量は17,030トンで、前月の12,818トンを上回り、前年同月を下回った。価格は119円/kgで、前月・前年同月を上回った(図13、14)。
5月の水揚げの主体は三陸と日本海~九州であり、三陸では前年同月を上回り、日本海~九州では前年同月を下回った(図15)。日本海の漁場は隠岐海峡であり、九州の漁場は対馬周辺と東シナ海中南部海域であった。また、三陸の水揚げの主体は底曳網であった。
石巻港:5月の水揚量は3,392トンで、前月を上回り、前年同月並みであった。水揚げの主体は底曳網であった。
境港:5月の水揚量は5,971トンで、前月を大きく上回り、前年同月を上回った(図16)。
松浦港:5月の水揚量は2,456トンで、前月並みで、前年同月を上回った(図17)。対馬沖の漁獲物は、体長(尾叉長)27~29cm、体重260~360g主体の1歳魚に2歳魚以上が混じった。(図18、19)。
JAFIC主要港におけるマアジ(全国)の2024年5月の水揚量は6,924トンで、前月の7,606トンを下回り、前年同月を下回った。価格は197円/kgで、前月・前年同月を下回った(図20、21)。
5月の水揚げの主体は九州であり、前年同月を下回った(図22)。九州の漁場は対馬沖と東シナ海中・南部海域であった。
松浦港:5月の水揚量は2,720トンで、前月・前年同月を上回った。東シナ海中・南部海域の漁獲物は、体長(尾叉長)18~20cm、体重80~120gの1歳魚が中心であった(図23、24)。
マイワシは三陸南部~犬吠と日本海を中心に漁獲されたが、太平洋側では前年同月を大きく下回った。CPUEと投網回数が前月に比べて減少したことに加え、例年になく5月に北方四島周辺でマイワシが見られたとの情報から、魚群の北上が早期化したことが考えられる。三陸南部(仙台湾)では、前月に続いて前者の鹿島灘~犬吠埼に比べてより小型のものが漁獲されており、未成魚の滞留が続いていると思われる。また、道東海域でのマイワシ漁は、6月10日から棒受網漁が始まり、大型魚が漁獲されている。6月下旬にはまき網操業も始まることから、漁獲物の魚体組成や来遊量に注目したい。
5月の全国のさば類の水揚量はマサバを中心に低調であった。水揚げの中心は三陸と日本海~九州地域域であり、三陸では底曳網による漁獲物が大半を占めた。まき網での漁獲の中心は隠岐海峡、対馬沖、東シナ海中・南部海域であった。山陰西部では例年4月に盛漁期を迎えていたが、本年は4月は低調で、5月に漁獲量が急増した。また、6月17日現在も隠岐海峡を中心にまとまった漁獲が続いている。来遊時期の遅れが想定され、今後の動向に注意が必要である。
5月の全国のマアジの水揚量は前月並みで、前年を下回った。漁場は対馬沖と東シナ海中・南部海域が中心であった。東シナ海中・南部海域での漁獲量は平年並みで前年を上回っており、マアジ対馬暖流系群の長期漁海況予報(予測期間4~9月)による予測(東シナ海の沖合域・沿岸域とも前年・平年を下回る)より好調であった。この要因として、前年は漁獲が少なかった1歳魚が好調であったことが考えられる。一方、対馬~隠岐海峡の漁況は、長期漁海況予報では、日本海は前年並みで平年を下回るとされていたものの、実況は前年同月と比較して低調であった。東シナ海中・南部海域の動向とあわせ、今後の漁況に注目したい。
(水産情報部)