黒潮大蛇行は5月も継続した。黒潮続流は最北部から暖水塊が切り離されたため仙台湾沖まで南下したが、常磐~三陸沖の海面水温は近年(2011~2020年)より高めの状態が続いた。日本海の海面水温も沖合を中心に近年より高めであった。
〇黒潮域
・黒潮流路は、九州~四国沖(図1-④)では接岸し、蛇行部(図1-A)の位置は停滞したが、最南下部が南西に張り出して30°N付近まで南下した後、ほぼ直線的に北東進し、三宅島~八丈島付近を通過した。
・四国沖の海面水温は、黒潮流路が接岸した影響で、近年より高めであった(図1-④)。
・遠州灘沖の海面水温は、黒潮流軸が直線的に北東進した影響で屈曲部(図1-⑤)が消滅し、暖水波及が弱まり、近年より高めの海域は縮小した。
・関東の南東沖では、熊野灘沖と伊豆諸島付近の2か所で南下・蛇行していた黒潮流軸から4月に伊豆諸島付近の蛇行が切り離されて生じた冷水渦(図1-C)や黒潮続流南下部から切り離された冷水渦の影響で、海面水温が近年よりやや低めの海域がみられた。
・黒潮外側域の琉球列島東方沖~西日本南方沖(図1-①)の海面水温は、平年より風が弱く気温が高かった影響で、広範囲で近年より高めの海域が拡大した。
・南鳥島周辺(図1-②)は、風が強かった影響で、海面水温が近年より低めの海域が拡大した。
〇親潮域・混合水域
・黒潮続流は、5月中旬に北上の先端部が暖水塊として切り離され、流軸は仙台湾沖付近まで南下した。切り離された暖水塊は緩やかに北東進した(図1-⑦)
・三陸北部~道東沖(図1-⑦)の海面水温は、暖水塊が北東進した影響で、近年より高めの海域が拡大し、6~8℃以上高めの海域もみられた。
・常磐~三陸南部沖(図1-⑥)の海面水温は黒潮続流の影響で広範囲で引き続き近年より高めの状態が続いた。
・道東のはるか沖(図1-⑨)の海面水温は、黒潮続流の沖合側(150°E以東)から暖水が北上し、近年より2~4℃高めの状態が続いた。
・親潮面積は平年(1993~2017年)よりかなり狭い状態が続いており、5月も第1分枝(図1-⑩)は襟裳岬以東に停滞し、第2分枝(図1-⑪)も暖水に覆われて不明瞭であった。
・道東沿岸の海面水温は、親潮第1分枝(図1-⑩)の影響で近年よりやや低めの海域がみられた。
〇東シナ海
・平年に比べて風が強かった影響で、海面水温が近年より高めの海域が縮小した。
〇日本海
・対馬暖流の勢力は中旬に平年並に回復したが、再び弱まり、かなり弱めになった。主な流路はおおむね40°N付近に沿って鬱陵島北沖~大和堆付近~男鹿半島を緩やか、に蛇行しながら東進した。
・対馬暖流の勢力は弱かったが、流路が沖合であったため、海面水温は中央部(図1-⑬)を中心に近年より2~3℃高めであった。
・山陰~北陸の海面水温は、風が強く寒気の影響もあったため近年より高めの海域が縮小した。特に、山陰東部は低温水の南下の影響もあり、近年より低めの海域もみられた。
・朝鮮半島南部(図1-⑭)の海面水温は、東朝鮮暖流が接岸した影響で近年より高めであった。
(海洋事業部)