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2024年06月14日
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令和6年4月の海況について

黒潮流軸の蛇行部が伊豆諸島付近で4月中旬に切り離されて冷水渦が発生したが、黒潮大蛇行は4月も継続した。黒潮続流は暖水塊と再び結合して三陸沖まで北偏し、常磐~三陸沖の海面水温は近年(2011~2020年)より高めの状態が続いた。日本海の海面水温も沖合を中心に近年より高めであった。

1.4月の海況

〇黒潮域

・黒潮流路は、3月下旬~4月上旬(図2-(1))は冷水渦が紀伊半島沖(図1-B、図2-B)と八丈島南東沖(図1-A、図2-A)にみられ、黒潮流軸はW字型に蛇行した。

・中旬(図2-(2))は、八丈島南東沖の冷水渦は黒潮流軸から切り離され、紀伊半島沖の冷水渦も東進した。また、九州~四国沖に冷水渦(図2-C)が東進した。

・下旬(図2-(3))は、四国沖に冷水渦が東進して黒潮流軸は離岸し、紀伊半島沖では冷水渦が発達してやや東進して黒潮流軸の蛇行北上部も東進した。

・遠州灘沖では前月より屈曲部(図1-⑤)がやや発達した。

・四国沖の海面水温は、冷水渦が東進した影響で、近年よりやや低めであった(図1-④)。

・遠州灘沖の海面水温は、黒潮流軸の屈曲部(図1-⑤)がやや発達した影響で暖水の波及が強まり、近年より高めの海域は拡大した。

・八丈島南東沖はの海面水温は、黒潮流軸から切り離された冷水渦(図1-A)の影響で、近年よりやや低めであった。

・黒潮外側域の琉球列島東沖~西日本南方沖(図1-①)の海面水温は、平年より風が弱く気温が高かった影響で、広範囲で近年より高めであった。

・南鳥島周辺(図1-②)は、風が弱く気温が高かった影響で、海面水温が近年より低めの海域は縮小した。

・関東の東沖(図1-③)には房総半島沖と150°E付近に冷水渦が分布し、海面水温は近年より低めであった。

〇親潮域・混合水域

・黒潮続流は、3月下旬に北上部が切り離され(図2-D)、巨大な暖水塊となったが、黒潮続流から分岐流が北上して暖水塊に暖水が供給され続けた。黒潮続流は4月下旬に暖水塊と再結合し、三陸沖の40°N付近まで北上した。

・常磐~三陸(図1-⑥)の海面水温は、暖水塊や黒潮続流の北偏のため、沿岸から沖合まで近年より6~8℃以上高めの状態が続いた。

・下北半島沖(図1-⑦)や道東沖(図1-⑧)も、暖水塊からの暖水波及や黒潮続流北偏のため、海面水温が近年より高めの海域が拡大して6~8℃高めの海域もみられた。

・道東のはるか沖(図1-⑨)は、黒潮続流の沖合側(150°E以東)から暖水が北東進したため、近年より2~4℃高めであった。

・親潮面積は平年(1993~2017年)よりかなり狭い状態が続き、第1分枝(図1-⑩)は襟裳岬以東に停滞し、第2分枝(図1-⑪)も暖水に覆われて不明瞭であった。

〇東シナ海

・平年に比べて風が弱く、気温も高かった影響で、海面水温が近年より高めの海域が拡大した。

〇日本海

・対馬暖流の勢力は、上旬は平年(1993~2017年)よりかなり強めであったが、徐々に弱まり下旬は平年より弱めになった。主な流路は、鬱陵島北沖を北上して大和堆付近で緩やかな蛇行を繰り返し、北陸~東北沖で離岸した。

・平年より風が弱く、気温も高かった影響で、表層が低塩分水に薄く覆われている対馬暖流以北(図1-⑬)は昇温が著しく、広範囲で近年より2~4℃高めであった。

・対馬暖流以南も、海面水温が近年よりやや高めで(2℃未満)であった。山陰東部(図1-⑮)は低温水が南下した影響で、海面水温が周囲より低めの海域がみられた。

・朝鮮半島南部(図1-⑭)は、海面水温が近年より高めの海域が拡大した。

2.今後1か月の見通し

・3月に九州南東沖で小蛇行の発達とともに発生した冷水渦(図2-C)は、5月上旬に紀伊半島南沖まで東進し、紀伊半島沖の冷水渦(図2-B)と接して5月中旬現在は一体化したと思われる(図3)。冷水渦(図2-C)が紀伊半島沖まで東進したため、九州~四国沖では黒潮流軸は接岸傾向になった。

・九州南東沖で発生した冷水渦(図1-C)とともに紀伊半島沖の冷水渦(図2-B)も緩やかに東進しており、黒潮流軸は八丈島のすぐ西を北東進して三宅島~八丈島を通過している。今後もこの東進が続いた場合、黒潮流軸が八丈島の南を通過して非典型的な大蛇行に移行する可能性も考えられる。

・5月中旬現在、蛇行南下部(図3-B)は細長くなった。2022年2月にもこのように蛇行部が細長く南下した後、切り離されて冷水渦になったことから、今後冷水渦として切り離されることが考えられる。

・今後1か月の黒潮域の海面水温は、九州~四国沖は黒潮流軸が接岸傾向を示していることから、近年より高めで推移すると見込まれる。熊野灘沖は冷水渦(図2-B)の東進の影響で近年より低めの海域が縮小すると見込まれる。

・伊豆諸島付近の海面水温は、上記のように黒潮流軸が八丈島の南を通過した場合は近年より低めになると見込まれる。

・親潮域・混合水域では、4月下旬に黒潮続流が暖水塊と結合して40°N付近まで北偏したが、5月中旬現在は再び北上部から暖水塊(図3-C)が切り離されて、黒潮続流の北端は常磐沖の37~38°Nに後退した。

・切り離された暖水塊と黒潮続流の間はくびれが進み、今後は暖水塊が完全に切り離されると見込まれる。

・今後1か月の海面水温は、常磐海域では巨大な暖水塊や黒潮続流の影響により、近年より高め状態が続くと見込まれる。三陸海域は、暖水渦(図3-C)が完全に切り離され暖水の供給が途絶えた場合、三陸北部や道東への暖水波及が弱まり、近年より高めの海域は縮小すると見込まれる。

・気象庁によれば、対馬暖流は平年より弱い状態が続くが気温は平年より高い状態が続くとされているため、日本海の今後1か月の海面水温は気象の影響を受けやすい沖合域を中心に近年より高めになると見込まれる。一方、沿岸域は対馬暖流の勢力が弱いことから、気象の影響で昇温は進むものの近年より高め海域は縮小する見込みである。

(海洋事業部)

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