黒潮流路が九州~四国沖で大きく変動したが、大蛇行は3月も継続した。黒潮続流北上部が3月下旬に巨大な暖水塊として切り離されたが、常磐~三陸沖の海面水温は依然として近年(2011~2020年)より高めのであった。日本海の海面水温も沖合を中心に近年より高めのであった。
〇黒潮域
・黒潮流軸は、前月は九州東沖にあった冷水渦が四国沖(図1-B)に東進すると共に四国沖では小蛇行が発達して離岸が進んだ。
・御前崎~石廊崎沖(図1-⑤)で黒潮流軸の屈曲部が縮小し、伊豆諸島付近では前月同様に三宅島~御蔵島付近を通過した。
・四国沖の海面水温は、黒潮流軸が四国沖で離岸したが屈曲部(図1-C)が切り離されて暖水塊として四国沖に停滞したため、近年よりやや高めであった。
・熊野灘~遠州灘(図1-⑤)の海面水温は、黒潮流軸の屈曲部が縮小した影響で暖水の波及も弱まったため、近年より高めの海域は縮小した。
・黒潮外側の関東南東沖(図1-③)や小笠原・南鳥島周辺(図1-②)の海面水温は、平年に比べて風が強く日射量が少なかった影響で、近年より低めの海域が拡大した。
・南西諸島東沖(図1-①)の海面水温も、平年より風が強く日射量が少なかった影響で、近年より高めの海域は縮小した。
〇親潮域・混合水域
・黒潮続流は、常磐では流路の北上部が前月同様に接岸し、三陸では最北部が東進して北東に張出し(図1-⑦)、40°N付近まで北偏が続いた。
・流路の南下部は、上中旬は常磐沖で流路の北上部と接近し(図1-D)、下旬には黒潮続流北上部が切り離されて巨大な暖水塊になった。
・常磐~三陸沖(図1-⑥)の海面水温は、黒潮続流の北偏のため引き続き広範囲で近年より6℃以上高めの状態が続き、10℃以上高めの海域もみられた。一方、常磐沖の一部(図1-D)は冷水が差込み海面水温は近年より低めであった。
・道東の南東沖(図1-⑦)は、黒潮続流最北部から暖水が波及し、海面水温が近年より2~6℃高めの海域が広がった。
・三陸北部~襟裳岬南沖(図1-⑧)の海面水温は、黒潮続流最北部と暖水波及域が東進した影響で、その西側をやや低温の親潮系混合水が南下し、近年より低めの海域もみられた。
・道東のはるか沖(図1-⑨)の海面水温は、北海道海膨付近に沿って、近年より2~4℃高めの海域がみられた。
・親潮面積は平年(1993~2017年)よりかなり小さい状態が続き、第1分枝(図1-⑩)は襟裳岬以東に後退し、第2分枝(図1-⑪)も暖水に覆われて不明瞭であった。
〇東シナ海
・平年に比べて風が強く、日射量が少ない時期が多かったため、海面水温が近年より高めの海域は縮小した。
〇日本海
・対馬暖流の勢力は平年(1993~2017年)よりかなり強めの状態が続いた。主な流路は、鬱陵島北沖を北上して大和堆付近を通過し、北陸~東北沖では離岸した。
・対馬暖流の勢力は強かったが、平年より風が強く気温も低い期間があった影響で、中央部(図1-⑬)や北海道沖(図1-⑭)では、海面水温が近年より高めの海域が縮小した。また、山陰東部(図1-⑯)では冷水が南下したこともあり、海面水温が近年よりやや低めの海域がみられた。
・朝鮮半島北部沿岸~ロシア南部沖(図1-⑮)では、海面水温が近年より低めの海域が縮小した。
〇オホーツク海
・流氷は知床半島付近に散在するのみになった。
・本年4月11日現在、黒潮流路は紀伊半島沖~房総半島沖でW字型となっている(図2右下段)。2021年2~5月にも九州東沖の小蛇行が発達しながら東進して、2021年5月上旬には本年同様に潮岬沖と八丈島南東沖で蛇行するW字型になったが、長期間継続せずに2021年5月中旬には八丈島南東沖の蛇行が切り離されて冷水渦になった(図2左下段)。八丈島南東沖の蛇行は2021年5月同様に長続きせず、本年4月中旬に切り離されて冷水渦になった。
・屋久島南沖では新たな小蛇行が発達しつつあるため、今後は小蛇行の発達とともに九州東沖では冷水渦が発達し、黒潮流軸は2024年2月同様に九州東沖では離岸して四国沖に張出すことも考えられる。
・今後1か月の黒潮域の海面水温は、九州沖では冷水渦の影響で近年よりやや低めとなると見込まれるが、四国沖では黒潮流軸の張出し影響で近年より高めとなる見込みである。また、伊豆諸島周辺の海面水温は、蛇行から切り離された冷水渦の影響で八丈島付近では低めとなるが、伊豆諸島西沖はおおむね高めとなる見込みである。
・親潮域・混合水域では3月下旬に常磐沖で黒潮続流の南下部が北上部と接し、くびれが発達した後に、黒潮続流北上部が切り離されて巨大な暖水塊になったが、黒潮続流から暖水が分岐して流入している。一方、くびれ部分に貫入した冷水は西進し、4月上旬は不明瞭であるが冷水塊として常磐沖に存在している。
・2019年4月に黒潮続流北側で発生した暖水塊が2019年12月まで約9カ月継続したこと、現在の巨大な暖水塊は過去に例を見ない規模であること、黒潮続流から暖水が供給されていることから、この暖水塊は半年以上継続し、三陸海域の海面水温は今後1か月4~5℃高めの状態が続くと考えられる。
・常磐海域では、今後1か月は上記の暖水塊の影響により海面水温はおおむね近年より高めとなる見込みであるが、冷水塊がみられることから部分的に低めとなる海域もあると見込まれる。
・気象庁によれば、対馬暖流が平年よりかなり強く、気温も平年より高い状態が続き、その流路は離岸が続くと予測されている。このため、日本海の今後1か月の海面水温も3月と同様に沖合域では近年より2~4℃高めとなり、沿岸域も近年より低めの海域が縮小し、日本海全体として近年より1~2℃ほど高めとなる見込みである。
(海洋事業部)