黒潮大蛇行は2月も継続し、黒潮続流の北偏も続いて、三陸沖では海面水温が近年(2011~2020年)より10℃以上高めの海域もみられた。日本海の海面水温も沖合を中心に近年より高めの状態であった。
・黒潮流軸は、九州東沖では冷水渦(図1-C)が停滞したため、前月に引き続き小蛇行を形成して離岸した。四国沖では北に張出すような形になったが、離岸距離はおおむね前月並であった。遠州灘~御前崎沖(図1-⑤)では流軸の屈曲部がやや縮小し、伊豆諸島付近では前月よりやや南の三宅島~御蔵島を流れて房総半島に接岸した。
・四国沖の海面水温は、黒潮流軸の張出し部から暖水が波及したため、近年より約1℃高めであった。
・熊野灘~遠州灘(図1-⑤)の海面水温は、屈曲部が縮小した影響で暖水の波及も弱まったため、近年より高めの海域は縮小した。
・黒潮外側の関東南東沖や小笠原周辺(図1-④)の海面水温は、平年に比べて風が弱く日射量が多かった影響で、近年より低めの海域が縮小した。一方、南鳥島付近(図1-③)では、平年より風が強かった影響で近年より低めの海域が拡大した。
・小笠原東沖(図1-②)の海面水温は、暖水が北に張出した影響で、近年より高めの状態が続き、四国南沖(図1-①)でも近年より高めの状態が続いた。
・黒潮続流は、常磐では前月同様に接岸し、三陸ではやや離岸し、最北上部は40°N付近に達した(図1-⑥)。
・常磐~三陸沖(図1-⑥)の海面水温は、黒潮続流の北偏のため、沿岸から沖合にかけての広範囲で近年より高めの状態が続き、引き続き10℃以上高めの海域もみられたが、黒潮続流最北部から波及した暖水は離岸して東進した。
・三陸北部~襟裳岬南沖(図1-⑩)の海面水温は、黒潮続流から暖水波及が東にずれた影響で親潮系冷水が拡大し、近年より低めの海域が現れた。
・根室南東沖や道東のはるか沖(図1-⑦)の海面水温は、黒潮続流からの暖水波及や150°E以東での暖水の北上により、近年より2~4℃高めであった。
・親潮面積は平年(1993~2017年)よりかなり小さい状態が続き、第1分枝(図1-⑧)は襟裳岬付近に停滞し、第2分枝(図1-⑨)は暖水に覆われて不明瞭であった。
・常磐のはるか沖の海面水温は、黒潮続流の蛇行南下部(図1-B)では冷水が南下したため、近年より1~2℃低めであった。
・平年に比べて風が弱く、気温が高かった影響で、海面水温が近年より高めの海域が拡大した。
・対馬暖流の勢力は平年(1993~2017年)よりかなり強めの状態が続いた。主な流路は、隠岐諸島沖を北上して大和堆付近を通過し、北陸~東北沖では離岸した。前月にみられた、佐渡付近の蛇行部は解消した。
・対馬暖流が離岸し、勢力も強かった影響で、朝鮮半島北部沖~大和堆北沖~東北沖(図1-⑮)や北海道沖(図1-⑯)の海面水温は近年より2~4℃高めの状態が続いた。
・山陰東部沖(図1-⑫)の海面水温は、隠岐堆~若狭湾北沖に冷水が南下した影響で、近年よりやや低めであった。
・北陸~東北沿岸沖(図1-⑬)の海面水温は、佐渡付近の蛇行部が解消した影響で、近年より低めの海域は消え、約1℃高めであった。
・朝鮮半島北部沿岸~ロシア沖(図1-⑭)では、海面水温が近年より低めの海域が縮小した。
・流氷が知床半島に接岸しており、オホーツク海の氷域面積は平年(1991~2020年の平均)より広めで推移した。
・本年3月15日現在、九州~四国沖では黒潮流路が著しく離岸し、冷水渦(図1-C)が発達しながら東進している。この冷水渦の反時計回りの流れに沿って黒潮系暖水が室戸岬沖に張り出して接岸していたが、この黒潮系暖水は3月上旬に黒潮流軸からは切り離され暖水渦になった。遠州灘沖の蛇行北上部はやや東進して石廊崎沖を北上し、三宅島~八丈島間を通過している。
・上記のような現象は2021年にも発生しており、2~3月の黒潮流路の変動は本年と類似していた(図2)。また、2021年は3~4月に冷水渦が発達しながら徐々に東進し、黒潮流軸は九州~四国沖で変動して著しく離岸した。その後、この変動は下流側に移動し、4~5月は一時的に伊豆諸島付近で小蛇行を形成し、八丈島南沖を通るW字型の流路をとることもあった。
・本年3月15日現在、黒潮続流の最北部は三陸沖を東進して徐々に沖合に移動しているが、黒潮続流の南下部は西進して、常磐沖で黒潮続流北上部がくびれた状態となっている(図2)。
・本年4~5月の黒潮域の海面水温は、本年2~3月の黒潮流路およびその変動が2021年と類似していることから、3月以降も2021年同様の変化をたどると思われる。このことから、海面水温は、九州~四国沖では冷水渦の影響で近年より低めとなるが、四国沖の一部海域では黒潮流軸から切り離された暖水渦の影響で近年より高めとなる見込みである。また、伊豆諸島周辺の海面水温は、小蛇行の影響で一時的に低めとなる見込みである。
・親潮域・混合水域の海面水温は、常磐沖の黒潮続流のくびれが発達して黒潮続流北上部が切り離された場合、常磐海域では暖水が離岸し、沿岸では近年より高めの海域は縮小する見込みである。その場合でも、三陸海域では黒潮続流北上部が巨大な暖水渦として停滞するため、近年より5℃以上高めの状態が続く見込みである。
・日本海は、気象庁によれば対馬暖流が平年よりかなり強い状態が続き、その流路は離岸が続くと予測されている。このため、海面水温も2月と同様に沖合域では近年より2~4℃高め、沿岸域はおおむね近年より1~2℃高めとなるが、山陰東部では冷水が残るため近年並みにとどまる見込みである。
(海洋事業部)