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2024年2月28日
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2023年10~12月の主要魚種の水揚量・市況動向

1.JAFIC調査港における主要魚種の動向

JAFICが調査している全国主要117港における2023年10~12月の調査対象全魚種の合計水揚量は42万6千トンで、前年同期(44万8千トン)の95%(表1)であった。月別にみると、10月は前年同月をやや上回り、11~12月は前年同月を下回った。なお、水揚量・価格ともに「前年同期並み」とあるのは増減率 5%以下の場合を示す。年間の累計水揚量は177万7千トンで、前年同期(181万5千トン)の98%と、現在と同じ規模で調査を開始した 2010 年以降で最低となった。10~12月の平均価格は307円/kgで、前年同期(323円/kg)の95%であった。月別にみると、10月は前年同月をやや下回り、11月は前年同月をやや上回り、12月は前年同月並みであった。年間の平均価格は253円/kgで、前年同期(246円/kg)の103%と、2010年以降で最高価格であった。

水揚げがなかったギンザケ(養殖)を除く主要48魚種の10~12月の魚種別の合計水揚量と平均価格を前年同期と比較した(表2、図1)。

今期の水揚量は、ウルメイワシやサンマ、ヤリイカなど17魚種が前年同期を上回り、さば類や生鮮スルメイカなど6魚種が前年同期並み、スケトウダラやマアジ、アキサケなど25魚種が前年同期を下回った。平均価格は、マイワシやマダラ、冷凍スルメイカなど21魚種が前年同期を上回り、生鮮カツオやアキサケなど7魚種が前年同期並み、ブリや冷凍キハダ、生鮮メバチなど20魚種が前年同期を下回った。

同様に主要48魚種について2023年10~12月とコロナ禍前の2019年10~12月を比較した(図2)。水揚量は、マアジや生鮮カツオ、冷凍ミナミマグロなど16魚種が2019年同期を上回り、冷凍カツオとたこ類が2019年同期並み、ホッケやブリ、サンマなど30魚種が2019年同期を下回った。平均価格は、マイワシやさば類、マダイ(養殖)など35魚種が2019年同期を上回り、マアジや冷凍メバチなど8魚種が2019年同期並み、ビンナガや冷凍ミナミナミマグロなど5魚種が2019年同期を下回った。2019年同期との比較では2022年同期との比較よりも水揚量が低調な魚種と価格が上昇した魚種が多かった。

2.産地市場における代表魚種の動向

産地市場において冬に水揚量の多いマダラと養殖魚の代表としてのマダイおよび福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の海洋放出に伴う中国の日本産水産物の禁輸の影響が懸念されるほたてがい(殻付)について10~12月の動向を検討した。

1)マダラ

水揚量は、10~11月は前年同月を下回ったものの、12月は前年同月を上回った(図3)。10~12月の合計水揚量は8千900トンで前年同期の80%であった。価格は、10月が446円/kg(前年比133%)、11月が354円/kg(同190%)、12月が237円/kg(同79%)と、水揚量の多寡に応じて変動した。

2)マダイ(養殖)

水揚量は、10~12月を通じて前年同月を下回り、10~12月の合計水揚量は47トンで前年同期の41%であった(図4)。価格は、10月が1,132円/kg(前年比121%)、11月が1,141円/kg(同119%)、12月が1,143円/kg(同110%)と前年同月および過去5年平均を上回る高値・横ばいで推移したものの、徐々に前年との価格差が縮小しつつある。

3)ほたてがい

ほたてがい(殻付)の水揚量は、10~11月は前年同月を上回ったものの、12月は前年同月を大きく下回った(図5)。12月が低調だったことから、10~12月の合計水揚量は1万7千トンで前年同期の52%であったが、年間の累計水揚量は6万3千トンで前年の105%であった。価格は、10月が185円/kg(前年同月比89%)、11月が168円/kg(同84%)、12月が262円/kg(同114%)と、水揚量の多寡に応じて変動した。貿易統計(財務省)によると、10~12月の冷凍ほたてがいの輸出は、ALPS処理水の放出を理由に中国が日本産水産物の輸入を停止したことを受け、殻付・殻なしともに中国向けはゼロであった。中国向けが中心であった殻付は、10~12月の合計輸出量が1千892トン(前年同期比10%)、金額が4億5,362万円(前年同期比6%)と前年同期を大きく下回った。一方、殻なしの10~12月の合計輸出量は4千919トン(前年同期比105%)、金額は124億3,690万円(前年同期比78%)であった。中国向けの輸出がゼロとなった一方で、殻付はベトナムやタイ等、殻なしはアメリカやタイ等への輸出量が前年から増加した。

3.東京都中央卸売市場における動向

東京都中央卸売市場の水産物の取扱数量と平均価格を表3に示した。10~12月の合計数量は8万4千トンで前年同期並みであった(表3)。年間の累計数量は30万9千トンで、前年同期(32万4千トン)の95%と、「東京都中央卸売市場 市場統計情報」において比較可能な2002年以降で最低であった。10~12月の平均価格は1,601円/kgで、前年同期(1,610円/kg)の99%であった。年間の平均価格は1,491円/kgで、前年同期(1,363円/kg)の109%と、2002年以降で最高価格であった。

次に、前項で産地市場における動向を検討した生鮮マダラ、生鮮マダイ(養殖)、ほたてがいについて、東京都中央卸売市場における10~12月の動向を検討した。

1)生鮮マダラ

数量は、産地の水揚量が低調だった10~11月は前年同月を下回り、12月は前年同月並みであった(図6)。10~12月の合計数量は1千トンで前年同期の84%であった。価格は、10月が1,358円/kg(前年比121%)、11月が1,058円/kg(同125%)と前年同月を上回り、12月が912円/kg(同89%)と前年同月を下回った。

2)生鮮マダイ(養殖)

数量は、10~12月を通じて前年同月並みで推移し、10~12月の合計数量は2千800トンで前年同期並みであった(図7)。価格は10月が1,226円/kg(前年比105%)、11月が1,226/kg(同103%)、12月が1,283円/kg(同103%)であった。産地市場と同様に、過去5年平均を上回る高値で推移したが、前年との価格差は縮小した。

3)ほたてがい(殻付)

数量は、10~11月は前年同月並み、12月は前年同月を下回って推移し、10~12月の合計数量は252トンで前年同期の99%であった(図8)。価格は、10月が795円/kg(前年比95%)、11月が830円/kg(同94%)、12月が954円/kg(同101%)と前年同月並み~やや下回った。

4)ほたてがい(むき身)

数量は、10~12月を通じて前年同月を上回り、10~12月の合計数量は275トンで前年同期の125%であった(図9)。価格は、10月が4,365円/kg(前年比91%)、11月が4,784円/kg(同91%)、12月が5,241円/kg(同94%)であった。8月以降、数量は前年同月を上回り、価格は前年同月を下回って推移した。

4.まとめ

2023年10~12月は、産地市場では前年同期と比較すると水揚量が減少した魚種が多かった。価格は前年が高値だったこともあり、前年同期から下落した魚種数と上昇した魚種数に大きな差はみられなかった。一方で、2019年同期との比較では、価格が上昇した魚種が多く、コロナ禍前と比べて産地価格は全般的に高値基調であった。

また、東京都中央卸売市場の10~12月の合計数量は低調だった前年同期並み、価格は著しく高値だった前年同期並みであった。前年並みに落ち着きつつあるものの、産地価格の上昇や燃油価格の高騰、円安の影響により、消費地価格も高値の状態が続いている。魚種別にみると、マダラは、産地市場の水揚量の多寡に応じて価格が変動した。マダイは、産地価格が高値であったことから、消費地価格も高値で推移したものの、前年との価格差が縮小した。また、ほたてがいのうちむき身は、10~12月を通じて数量が前年を上回り、価格が下回って推移した。ALPS 処理水の放出を理由に中国が日本産水産物の輸入を停止したことを受け、生産者支援の動き等から国内消費地での引き合いが強くなったことが示唆される。

一方、家計調査結果(総務省統計局)によると、全国の2人以上世帯の1世帯当たりの生鮮魚介類の購入数量は、10~12月の合計で前年同期比104%、購入金額を購入数量で割った平均価格は前年同期並みであった。月別にみると、10月が前年同月比96%、11月が同99%、12月が同113%であった。平均価格は、10月が前年同月比110%、11月が同104%、12月が同92%であった。12月のみ価格が前年同月を下回ったこともあり、購入数量が伸びた。一方で、2019年と比較すると、10~12月の合計購入数量は2019年同期比83%、購入価格は同121%であった。魚価高を反映し、コロナ禍前よりも購入数量が減少したものと考えられる。

以上のように、産地市場と消費地市場において水揚量と取扱数量が少ない一方で、前年との価格差は徐々に縮小しつつあるものの、魚価高の状況が継続している。依然として消費者の「魚離れ」の増大が懸念されるものの、12月には末端の相場が弱含みとなり、生鮮魚介類の購入数量が前年から増加したことから、今後の動向に注目したい。

(水産情報部)

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