黒潮大蛇行は11月も継続し、三陸沖でも黒潮続流の北偏が継続したため海面水温は近年(2011~2020年)よりかなり高めであった。日本海は、対馬暖流が蛇行した影響で海面水温が近年より低めの海域が拡大した。
・黒潮流軸は、九州~四国沖は前月並の離岸距離であったが、蛇行北上部は東進して屈曲部も石廊崎沖(図1-③)に東進し、大島~三宅島を通過して房総半島に接岸した。
・熊野灘~遠州灘(図1-③)は屈曲部が東進した影響で、暖水波及が弱まり、海面水温は近年より1℃前後高めだが、高めの海域は縮小した。
・小笠原周辺~関東東沖(図1-①)は、平年より風が強く、日射量が少なかった影響で、海面水温は近年より低めであった。
・沖縄東沖~西日本沖(図1-②)も平年より風が強く、日射量が少なかった影響で、海面水温は近年より高めの海域が縮小した。
・黒潮続流は、沖合の冷水渦(図1-B)が発達してΩ型の流路になり、常磐海域では前月よりやや離岸した(図1-④)。一方、三陸沖ではやや北上した(図1-⑤)。
・常磐沖(図1-④)は黒潮続流がやや離岸したが、暖水波及が続き、三陸沖(図1-⑤)は黒潮続流の北偏の影響で近年より3~6℃高めで海洋熱波が続いた。
・道東沖(図1-⑥)および道東のはるか沖(図1-⑦)の海面水温は、暖水波及が続いて、近年より高めの海域が拡大した。
・根室半島沖の暖水渦C(図1-C)は東進して不明瞭になり、津軽暖流系水の暖水渦E(図1-E)は縮小した。このため、親潮第1分枝(図1-⑧)は道東沖を南下し、道東~三陸北部沖海域(図1-⑩)の海面水温は近年より低めの海域が拡大した。しかし、親潮面積は平年(1993~2017年)より小さい状態が続き、第2分枝(図1-⑨)も暖水に阻まれて41°30′N・151°30 ′E付近に停滞した。
・平年より風が強く、日射量も少なかった影響で、海面水温は近年より高めの海域が縮小し、九州沖は近年よりやや低めであった。
・対馬暖流の勢力は平年(1993~2017年)よりかなり強めの状態が続いた。主な流路は、隠岐諸島沖を大和堆付近まで北上し、山陰西部沖で蛇行した後、能登半島沖~佐渡沖でも蛇行して東北沖を離岸して北上した。
・対馬暖流の北上や勢力が強かった影響で、海面水温は沖合(図1-⑫、⑬)を中心に近年より2~3℃高めであった。
・対馬暖流の勢力が強かった影響で、東朝鮮暖流の勢力も強く、朝鮮半島沿岸の海面水温は近年より1~2 ℃高めであった(図1-⑭)。
・山陰東部沖や能登半島沖~佐渡周辺の海面水温(図1-⑪)は対馬暖流の蛇行部の冷水の影響で、近年よりやや低めの海域が拡大した。
・平年より風が弱かった影響で、海面水温は沖合を中心に近年より1~2℃高めの状態が続いた(図1-⑮)。
・12月中旬現在、黒潮は大蛇行北上部が東進し、大島~三宅島を北東に流れている。過去5回(1975~1980年、1981~1984年、1986~1988年、1989~1990年、2004~2005年)の大蛇行では、大蛇行部が東進して伊豆海嶺をまたぎ、流路が八丈島の南を通るようになってから数カ月後に大蛇行が解消した。過去5回の黒潮大蛇行の終了前4カ月間の流路分布(図2-①)と2023年11月の流路分布(図2-②)を比較すると、2023年11月は潮岬では離岸したままで、蛇行部は東進したものの、過去の5回の大蛇行に比べて西に位置しており、過去の5回の大蛇行でみられたような大蛇行解消の兆候はみられなかった。このため、今回の大蛇行は年を超えて今後少なくとも4カ月以上は継続すると考えられる。
・黒潮域の今後1カ月の海面水温は、大蛇行が続き、黒潮流軸の屈曲部が遠州灘~石廊崎沖に停滞するため、同海域は11月同様に1℃前後高めで経過する見込みである。気象庁の季節予報では西日本の気温が平年より低い確率が高いことから、黒潮以南の海域の海面水温はやや低め~近年並で推移する見込みである。
・親潮域・混合域の今後1カ月の海面水温は、気象庁の予測によると黒潮続流は11月並みに北偏する見込みであるため、常磐~三陸沖は今期同様に3~5℃高めで推移する見込みである。
・道東~三陸北部沖は、根室半島沖の暖水渦Cが今後も東進しながら縮小する見込みで、親潮系水の南下が進むが黒潮続流の北偏も続くため、海面水温が近年より低めの海域は現在の状態を維持する見込みである。
・日本海の11月の海面水温は、対馬暖流が平年(1993~2007年)より強い状態が続くと見込まれる一方、気温が平年より低めと予測されるため、近年より高めの海域は縮小する見込である。
(海洋事業部)