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2023年11月24日
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vol.1259 記事一覧

2023年10月のスルメイカ漁況について

1.全国の生鮮スルメイカの水揚動向

JAFIC主要港における生鮮スルメイカ(全国)の10月の水揚量は2,515トンで、前月の4,056トンから4割減少し、前年並みであった(図1、表1)。生鮮スルメイカ(全国)の本年1~10月の累計水揚量(以下同様)は約1万トンと、前年の3割減で、過去最低であった(図2)。

2.各地の生鮮スルメイカの水揚動向

三陸の主要港(八戸・宮古・石巻)の沖合底曳網による10月のスルメイカ水揚量は1,400トンで、前月から半減し、前年並みであった(図3)。累計水揚量は5.3千トンで、前年の3.9千トンを上回った(図4)。

青森県太平洋側(白糠・三沢)の昼いか釣りによる生鮮スルメイカの10月の水揚量は3トンで、前月の54トン、前年の28トンを下回った(図5)。累計水揚量は352トンで、前年(838トン)を下回った(図6)。

道東主要港(花咲、厚岸、釧路)の生鮮スルメイカの10月の水揚量は597トンで、前月の21トン、前年の176トンを大きく上回った(図7)。累計水揚量は618トンと、2019~2022年の累計水揚量(284~554トン)を上回った(図8)。羅臼でも8月以降小型いか釣りと定置網によるスルメイカの漁獲がみられたが、累計水揚量は50トンと前年の1/6であった。

3.生鮮スルメイカの月別平均価格の推移

10月の生鮮スルメイカの平均価格は1,070円/kgで、前月(884円/kg)の121%、前年(992円/kg)の108%であった(図9)。国産の加工原料不足を反映し、唯一まとまって漁獲された三陸の底曳物のさらなる価格高騰が顕著であったためと考えられる。

4.各地の漁場形成の特徴

①小型いか釣り

小型いか釣り船によるスルメイカ漁場は、日本海各地で不漁となる中で、隠岐諸島東に9月中旬~10月中旬に漁場が形成された。このため、10月の境港のスルメイカの水揚量は242トンと、前月・前年の9トンを大幅に上回り、2021年の130トンの約2倍となった(図10)。8月下旬~9月下旬は、1日当たり発泡1千箱が水揚げされたが、10月上旬は1.5千箱/日、10月中旬は3千箱/日に増加した。その後10月下旬は1.2千箱/日、11月上旬は360箱/日と急減した。

②日本海中型いか釣り

10月の中型いか釣り船(船凍)の日本海スルメイカ漁場は大和堆東に形成された。10月は約30隻が操業し、1日1隻当たり0.6トンの低調な漁獲であった。1航海(約40日操業)で約2.5千箱の水揚で、例年の約3割に留まった。冷凍スルメイカの10月の水揚量は450トンで、前月の8割増だが、過去4年平均の4割減であった(図11)。累計水揚量は1,260トンで、前年の6割、過去4年平均の3割であった(図12)。

平均価格は1,674円/kgで過去最高価格を更新した(図13)。この原因として、国内の冷凍スルメイカの不漁に加え、海外の冷凍スルメイカ類の水揚量の減少に伴う輸入量の減少が考えられる。

5.まとめと今後の動向等について

今年も日本各地でスルメイカの不漁が続く中で、9月の三陸に続いて、10月は道東と境港で好漁が見られた。道東の好漁は前報(vol.1252)で報告したように、6~7月に三陸~道東~北方四島沖合で行われた表層トロール調査結果(第2回太平洋スルメイカ長期漁況予報参照)を反映したものと考えらえる。また、境港(隠岐諸島東)の好漁は、夏季の日本海の高水温の影響で、大和堆からロシア水域の沖合に溜まった群が9月下旬以降の大和堆~隠岐堆の海面水温の低下に伴って南下したためと考えられる。また、隠岐諸島東での小型いか釣り(生鮮)漁獲物と大和堆南部の中型いか釣り(冷凍)漁獲物には産卵後の皮イカが混じった。

今年の生鮮スルメイカの水揚量は過去最低で推移してきたが、11月に下北半島や道東で好漁が見られた年もあるため、今後のこれら海域の動向を注視したい。

冷凍スルメイカ類の2019~2022年の年間輸入量は8万~10万トンで、中国が4万~5万トンと第1位であった。第2位以下は、ペルーが2万トン、アメリカが2千~7千トン、ロシアが5千~7千トン、チリが2千~1万トン、アルゼンチンが2千~7千トン、韓国が数百トンであった。魚種はペルー・チリがアメリカオオアカイカ、ロシア・韓国がスルメイカ、アメリカ・アルゼンチンがマツイカ類と思われる。今年1~9月の累計輸入量は6.8万トンで前年を6%下回り、輸入平均価格は574円/kgで前年を16%上回った。このうち、中国からの冷凍スルメイカ類(スルメイカ・アメリカオオアカイカ・マツイカ類を含む)の累計輸入量は3.3万トンで前年並みであったが、価格は793円/kgで前年を16%上回った。

最後に、石巻港の9~10月のヤリイカの水揚量は560トンで、2019年以降では最多であった(図14、15)。例年、11月~1月に盛漁期を迎え、スルメイカに次ぐ漁獲量がある。このため、今後のヤリイカの漁獲状況も注視したい。

(水産情報部)

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