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2023年11月24日
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vol.1256 記事一覧

令和5年10月の海況について

黒潮大蛇行は10月も継続し、三陸沖の黒潮続流の北偏も継続した。日本海では引き続き、対馬暖流がかなり強めであった。両海域とも海面水温は近年(2011~2020年)より高めが続いた。

黒潮域

・大蛇行は10月も継続した。9月に九州南東沖(図1-④)にみられた小蛇行は東進して大蛇行部(図1-A)と一体化し、最南下部は遠州灘沖、屈曲部(図1-③)は御前崎沖付近に東進した。

・10月上旬に発生した台風15号の影響で、南鳥島付近~関東東沖(図1-①)の海面水温は近年よりやや低めであった。

・沖縄東沖~小笠原周辺(図1-①)では風が弱かった影響もあり、海面水温は近年よりやや高めであった。

・熊野灘~遠州灘(図1-③)の海面水温は黒潮が接岸した影響で近年より1~2℃前後高めであった。

・紀伊水道沖~紀伊半島沖の海面水温は、黒潮流軸の離岸と冷水渦の影響で近年よりやや低めであった。

親潮域・混合水域

・黒潮続流は引き続き北偏し、40°N付近に達したが、北端部や暖水の張出部(図1-⑥)は離岸し、常磐~三陸南部では北上部が接岸した。

・黒潮続流北偏の影響で、常磐沖~三陸沖海域(図1-⑤、⑥)の海面水温は引き続き、近年より3~5℃高めになり、海洋熱波の状態が続いた。

・根室半島沖の暖水渦C(図1-C)は北東進しながら縮小したが、津軽暖流系水の暖水渦E(図1-E)は停滞した。

・三陸北部沖(図1-⑩)の海面水温は、黒潮続流北端の離岸や暖水渦Cの縮小の影響で親潮系冷水が流入しやすくなり、近年より低めの海域が拡大した。

・道東のはるか沖(図1-⑦)の海面水温は、暖水波及が縮小し、近年より高めの海域は縮小した。

・親潮面積は9月より縮小して、平年(1993~2017年)よりかなり小さい状態となり、親潮第1分枝(図1-⑧)は根室半島沖に停滞し、第2分枝(図1-⑨)も42°30′N・151°E付近に後退した。

・犬吠埼東沖では黒潮続流蛇行部(図1-B)の南下の影響で冷水が南下し、海面水温が引き続き近年より低めの海域がみられた。

東シナ海

・風が弱かった影響で、海面水温はほぼ全域で近年よりやや高めであった。

日本海

・対馬暖流の勢力は平年(1993~2017年)よりかなり強めの状態が続いた。主な流路は、隠岐諸島沖に蛇行して南下後、大和堆付近に北上し、佐渡北沖で再び蛇行して東北沖では離岸した。

・対馬暖流の勢力が強かった影響に加え、中~下旬は風が弱く大気が暖かった影響で、海面水温は対馬暖流が北上した大和堆付近(図1-⑫)や北海道沖(図1-⑬)を中心に近年より2~3℃高めであった。

・東朝鮮暖流の勢力も強く、朝鮮半島沿岸の海面水温は近年より2~3 ℃高めであった(図1-⑭)。

・山陰西部沖や佐渡周辺の海面水温(図1-⑪)は対馬暖流の蛇行部の冷水の影響で、近年よりやや低めであった。

オホーツク海

・風が弱く大気が暖かった影響で、海面水温は沖合を中心に近年より約2℃高めの状態が続いた(図1-⑮)。

今後の見通し

・黒潮域では、蛇行最南下部が10月は一時的に東進したが、11月上旬現在は再び大王埼沖に戻り、黒潮大蛇行の消滅過程で生じる蛇行部の東進はみられていない。また、四国沖も一時的に黒潮が接岸したが、現在は離岸傾向であるため、大蛇行は11月も継続する見込みである。

・黒潮域の11月の海面水温は、大蛇行が安定していることから、今期同様に熊野灘~遠州灘は1~2℃高め、その他の海域は近年並~やや高めで推移する見込みである。

・南鳥島~関東東沖海域の海面水温は、台風15号の影響は消え、近年並~やや高めで推移する見込みである。

・11月の親潮域・混合域では、気象庁の予測によると黒潮続流から暖水渦が切り離される可能性があるが、暖水自体は今期同様に40°N付近に停滞する見込みである。また、根室東沖の暖水渦は縮小するとされ、約40°N以北の三陸北部沖は親潮系冷水が入り込みやすくなるが、親潮系冷水の勢力も弱いため三陸北部沖では海面水温が近年より低めの海域は現在の位置に停滞し、1~2℃低めで推移する見込みである。

・常磐~三陸南部の11月の海面水温は、黒潮続流の北偏の影響で今期同様に3~5℃高めで推移する見込みである。

・日本海の11月の海面水温は、対馬暖流が平年(1993~2007年)より強い状態が続くと見込まれる一方、気温が平年並みと予測されるため、近年より高めの海域が縮小する見込である。

(海洋事業部)

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