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2023年09月28日
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8月におけるサンマの漁況経過

1. 2023年8月の漁況の経過

今年8月のサンマ棒受網における生鮮サンマ水揚量は621.5トンと前年(386.8トン)の1.6倍であった(表1)。1971年以降で8月の水揚量が最低であったのは2020年(173.6トン)であるが、今年は過去3番目に少なかった。生鮮サンマの平均価格は467円/kgで前年の1.4倍であった(表1)。

例年8月1日に10トン未満船が解禁となるが、今年8月はロシア主張EEZ内での操業を行えない状況にあることもあり、サンマ狙いの出漁は無かった。

8月11日に10トン以上20トン未満船が解禁となり、4隻が出漁した。花咲港東沖の公海で操業し、19日花咲港と厚岸港に合計349ケースを水揚した。

8月15日に20トン以上100トン未満船が解禁となったが時化で出港が遅れ、18日頃に一部の船が公海に向けて出漁した。20~21日夜に花咲港東南東沖の公海で操業し、25~26日に花咲港と厚岸港に水揚した。

100トン以上の大型船は、8月20日に出漁した。花咲港東南東~東沖の公海で操業を開始し、25日に1隻、26日に7隻、ともに花咲港に水揚した。

今年8月の主漁場は、花咲港東440海里、花咲港東490海里、花咲港東600~東南東770海里の3カ所で、漁場水温は19~22℃と高かった。(図1)。一方、前年8月の主漁場は、花咲港東南沖東460~850海里で、漁場水温は19~22℃と高かった(図2)。このように、今年の漁場は前年よりもやや西側であったが遠方であり、小型船の多くは出漁できなかった。漁場水温も前年同様高かった。

2. 2023年8月の漁獲物

今期の大型船の漁場となった花咲港東南沖東600~720海里の漁獲物は、体長25~28cm、体重60~80g台が主体であった(図3)。また花咲港東南沖東420~520海里の漁獲物は体長26~27cmと29~30 cm、体重70~120g台が主体であり、花咲港東南沖東600~720海里の漁獲物よりも大型の割合が高かった(図4)。前年同期の漁獲物は体長25~27cm、体重50~80g台が主体であった(図5)。前年と比べると、大型が多く混じった。体長と体重の関係を比較すると、今期は前年同期に比して全般的に同じ体長でも体重が重かった(図6)。

3. 現状分析と今後の見通し

国立研究開発法人水産研究・教育機構が今年6~7月に公海域で行ったトロール調査から推定した180度以西における分布量は、前年をやや下回る低水準であった。今年8月の水揚量は、この調査結果を反映し、極めて低い水準となった。

今年の漁場は前年に比べてやや西側であるが、漁場水温は前年に引き続き高かった。この影響で上記トロール調査時に水温が低い場所に分布したサンマは、解禁時点では、より北のロシアEEZに移動したため、今年は前年に引き続き漁期当初から水温が高い公海に分布するサンマを狙うしかなかったものと思われる。外国船も日本船とほぼ同じ漁場で操業しており、この場所でしか漁場となるようなサンマの群を発見できなかった模様である。一般に、この時期に水温が高い場所にいるサンマは痩せているため、今期の漁獲物も痩せている個体が多かった。このような条件下であるが、今年の8月の水揚量は少ないながらも前年よりもやや多く、また漁獲物は前年よりもやや太っていることは明るい材料である。

9月中旬現在、漁場に分布しているサンマは南下を開始している魚群ではない。そのため、漁場での分布量が少なく個々の群れも極めて小さい。前年は、9月下旬になって南下を開始したと考えられる魚群が出現したが、痩せている魚体が多く、10月になっても水揚量が伸びなかった。今年は水温が高く、南下が遅れる可能性がある。一方で前年よりもやや魚体が太っていることから、南下群が出現すると、前年よりは水揚量が伸びることが期待される。

(水産情報部)

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