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2023年09月28日
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vol.1238 記事一覧

2023年8月のスルメイカ漁況について

1.全国の生鮮スルメイカの水揚げ動向

JAFIC主要港における生鮮スルメイカ(全国)の2023年8月の水揚量は576トンで、概ね前月並みだったが前年同月の1/3に減少した(図1、表1)。また、2019~2022年8月の平均水揚量2,493トンの1/4であった。例年6~8月は、日本周辺の海面水温の上昇に伴いスルメイカの北上が本格化する時期であり、これまでは各月2千~5千トン前後のまとまった水揚げがあった(図1)。しかし、本年は過去最低の資源量水準にあると見込まれており、明瞭な水揚量の増加は見られなかった。

2023年1~8月の生鮮スルメイカの累計水揚量は3,105トンで、前年同期の累計水揚量8,527トンの1/3にとどまった(図2、表1)。

道東主要港(花咲、厚岸、釧路)では0トン、道央(稚内~小樽管内)では前年の1/4、道南(函館・桧山)では前年の1/2、山形・北陸では前年の約1割であった。また、青森県太平洋では昼いか釣り漁主体に前年の42%、岩手県では85%であった(表1)。

一方、宮城県では底曳網による漁獲が好調で、主体である沖合底曳網が7~8月が禁漁期間であるにもかかわらず、1~8月累計で前年の2.3倍に達した。

八戸沖では7月下旬にスルメイカのまき網が解禁された。今年は2.2千トンの漁獲枠が設定されているが、三陸沖の高水温も影響し、7~8月で7トンの漁獲にとどまった。

2.生鮮スルメイカの月別平均価格の推移

2023年8月の生鮮スルメイカの平均価格は970円/kgで、前月920円/kgの5%高、前年同月683円/kgの42%高で、近年の最高価格である2022年9~12月の891~1,014円/kgに迫っている(図3)。この価格高騰は、加工原料不足を反映したものであり、特に国産の底曳物で著しい。

3.各地の漁場形成の特徴

①小型いか釣り

小型いか釣り船による8月の漁況は以下のとおりである。壱岐諸島・対馬沖周辺(図4-A)では、ケンサキイカはまとまった漁獲があったものの、スルメイカは7月に引き続き低調な漁況であった。8月には、日本海では、隠岐諸島周辺、能登半島周辺、佐渡~新潟、道南~渡島半島沿岸に漁場が形成されたが、能登半島以北の漁場形成が極めて低調であった。太平洋側では、下北半島周辺(泊・白糠・三沢・八戸)で例年どおり6月から昼イカ釣り漁が始まったが、6~8月の漁獲量は例年の1/2~1/3にとどまった。

②日本海中型いか釣り

今期の中型いか釣り船(船凍)の日本海のスルメイカ漁には、12~13隻が6月中旬に出漁した。初期漁場の大和堆~能登周辺ではまとまった群が見られず、8月前半まで1日1隻あたり0.1~0.2トンと、極めて低調な漁況であった。今年は2年ぶりにロシア水域内で操業できることになったことから、8月後半には大和堆での漁獲が上向き(1日1隻あたり0.8~1.6トン)、ロシア水域内で操業する船が増加した(図4-C)。なお。気象庁の「海洋の健康診断表」のホームページによると、中型いか釣りの主漁場となっている大和堆~ロシア水域周辺海域(図4-C)では8月の海面水温が平年より2~3℃高かった。

アカイカ(ムラサキイカ)漁は25隻(大型1隻含む)が5月から出漁し、1次航海は前年並みの2千トンの水揚げあった。8月中旬から2次航海に12隻が出漁し、他船は日本海のスルメイカ漁に切り替えた。アカイカの水揚げが連日続いたことから、アカイカの魚価が8月上旬の1,065円/kgから、8月中旬には919円/kgと14%下落したことや日本海のスルメイカの漁獲状況が好調であったことが、日本海での操業隻数が増えた要因である。主要港の冷凍スルメイカの8月の水揚量は200トンで、前年・前々年8月の約1/2であった(図5)。平均価格は1,200~1,500円/kgと、過去最高価格帯まで高騰した(図6)。

4.まとめと今後の動向等について

今年の小型いか釣り船と中型いか釣り船のスルメイカ漁況は、漁期を半分以上経過したところであるが、引き続き低調に推移している。この状況が続けば、わが国の今年のスルメイカ漁獲量は、過去最低であった前年を下回る可能性が高い。魚価は原料不足を反映し、冷凍は前々年の2倍、生鮮は底曳物を中心に前々年の1.5倍に高騰している。

一方、2023年度第1回太平洋スルメイカ中短期漁況予報で公表されたように、三陸沖で6~7月に水産資源研究所が行った表層トロール調査では、144°E以西の三陸~常磐海域である程度まとまった漁獲があったことから、9月から再開した沖合底曳網での漁獲が期待できる。

いか加工品の原料については、大量に輸入されている中国産等の外国産原料を使用する会社と、高価格の国産原料を積極的に使う加工会社の二極化が進んでいる。今後の需給関係と国産いか類の価格を注視したい。

(水産情報部)

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